第11話すれ違い

「じゃあ、行ってくるね。モネ」「うん。いってらしゃい。モネ」

 いつものように、モネを送る。私と、いつものように私に

 送られるモネ。何も変わらない。私たちの日常。その日常が

 少しずつ歪んでいく感じがするのは、私の気のせいなのか。

 モネが働いている間は、私は家の事と元の私の世界線に戻る方法を

 探すのが日課になっていた。でも、どうすれば元の私がいた世界に

 戻れるのかは。正直、諦めている。ネットで情報収集をしても、

 図書館で、本で調べても。何も方法がわからないままだった。

 その事をモネに報告すると「いいじゃん。ずっと、ここで一緒に

 住めば」と言ってくれた。私もそうしたいと思っていた。

 でも、今は違うかもしれない。だって、最近のモネの様子が

 違うから。最近のモネは何だか楽しそうに見える。同じだから

 よくわかる。どこか、楽し気にご飯を食べているし。鼻歌を

 歌いながら。洗濯ものを畳んでいるし。それに、最近スマホを

 見る回数が多くなっている。しかも、何だかニヤニヤしながら。

 スマホの画面を眺めている。何か面白い動画でも見ているかと

 思い「何、ニヤニヤしているの?」と聞くと。慌ててスマホから

 目を離し「ううん。何でもないよ。職場のグループLINEがウザくて」と

 明らかに誤魔化していた。何だろう。はっきりとしない答えだけど。

 モネに新しい恋人ができたかもしれない。多分、相手は会社の後輩の子

 かも。私にはわかる。だって、同じ人格どうしだもん。「君が思っているものは

 私にもわかるよ。モネ」私は、ベランダで洗濯を干しながら。

 モネの事を考えていた。

 

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