第9話

「要さん。」


「んー?」


「…俺、言いましたよね。文美にはちょっかい出さないでくださいって。」




 要さんにそう言ってしまったのは、いつだったか。



「透は、俺の親友だって知ってますよね。」


「…ああ、うん。」



「…最近、文美の様子がおかしい。多分、合宿から帰ってから。」



「………」



 無言が、真実を述べていた。




「…文美に、何かしましたね。」




 要さんは、しばらく黙ったままだった。



「…ああ。ごめん。キス、しちゃった…」




 本気で困ってるのがわかった、反省してるのもわかってたけど、口は止まらなかった。




「…なんで、文美に。要さん、文美に興味ないでしょう。」



「かわいいとは、思ってるけど…」


「でも、他の女と同じでしょ?」


「…付き合いたいとか、特別な感情は…ないよ。」



「だったら…なんで…」



 わかってる。この人が、悪気があってとか2人の仲を壊そうとするつもりなんて、まったくなかったことは。



 多分、キスも流れで、してしまったんだろう。




 でも、あの時は…なんでよりによって文美なのか、親友の彼女なのか…それがどうしても納得できなくて正直要さんを恨んだ。

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