第4話 雪の中の取引①
◆雪の中の取引
目を疑う闇の取引はクリスマスの季節に行われる。
シャンシャンという鈴の音と共に町の大通りをサンタのソリが現れる。
もちろん、その荷台には何かが積まれている。
おそらくプレゼントだと思われるが、その大きさは異様だ。それにソリが一台では足りないのか、別の台車のような物が繋げられている。
この時間は子供へのプレゼントを配る時間ではない。
その時間にはジングルベルやサンタの歌が町の中に流れているはずだが、今は聞こえない。
他に大きく異なる点がある。
サンタクロースの顔にあるはずの・・サンタのトレードマークの髭がない。
髭のないサンタは、人相が悪く見えるはずだが、雪を被ったその顔は何故か優しく見えるから不思議だ。これも雪の魔力というものだろう。
サンタは優しく見えるかもしれないが、サンタが大人たちへのプレゼントとして持ってきたものはそうではない。
むしろ犯罪に近い物だ。
犯罪に近い物・・それを喜ぶ人間は大勢いる。
サンタがソリを止めると、町の男たちが数人集まって来た。
「サンタさん、待ってたよ」男たちが言った。
「こんな場所でいいのか?」
男が訊くのも無理はない。ソリを止めた場所は街灯もなく、暗く狭い通りだ。
「さすがにこのプレゼントはご自宅には運べないですからねぇ」
プレゼントを載せた荷台に手をかけたサンタはイヤらしい顔を浮かべて言った。
そう言ったサンタに大人たちは「分かっているよ」と返し、
「家に届けるのは子供の場合だ。俺たち大人はここで受け取る」と言った。
大人の男も同じようにニヤニヤ笑いを浮かべている。一刻も早くプレゼントを受け取りたいのだ。
男はサンタに指定の料金を渡した。数十枚の紙幣だ。
お金は不思議なものだ。受け取る物の魅力が大きいほど、金に糸目をつけなくなる。
特にこんな雪の日には・・
最初は「プレゼントに金を取るのか?」と言っていた男たちも、今は文句一つ言わない。
町の子孫の存続と、自分の欲望を満たすためだ。
金銭感覚が麻痺して、毎年、ぐんぐん上がり続ける対価に気づかない。
「最近、高くなったんじゃないか?」
小言を言った大人の男にサンタは必ずこう言う。
「ですが、我慢できないのではないでしょうか?」
サンタは男たちの欲望を見透かしたように言った。
すると男たちは「分かった。分かったから、早く見せてくれ」と急かした。
するとサンタは集まった男たちの前で、「どうぞ!」と言って、荷台を覆った帆布をバッと取り去った。
するとそこにあった物・・いや、人間は、
いずれも年端もいかない少女たちだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます