第3話 プレゼント

◆プレゼント


 人間の心の中には悪の欲望が潜み、その小さな芽は次第に大きくなり、人間の心を蝕んでいく。

 ただ雪の季節には、人は自分たちの醜さや愚かさに気づかないものだ。雪が全てを覆い隠してしまうからだ。

 進みゆく悪の浸食もサンタのプレゼントの正体も気づかない。

 人々がサンタの所業を知った時にはもう遅かった。


 サンタのプレゼントに、ある人は思ったはずだ。

 どうして、子供にはプレゼントがあるのに、大人にはないのか?

 大人だって何か欲しいのだ。お金ではなく、自分の欲求を満たすものが。

 そんな願望は平常時には発生はしない。

 だが、状況が変われば話は別だ。


 その状況は、A町に於いて、女性の数が減っていったことに端を発した。

 そうなると結婚できない男が増え、当然ながら出生率も減っていく。


 そして、これは隣町の人から聞いた話だ。

 A町とは対象的な現象がB町では起きていた。

 隣のB町では、男性の数が減っているらしく、女性が溢れ返っているらしい。

 こちらのA町では女性が減り、隣のB町では男が減っている。A町とB町ではまるで逆だ。

 その現象には意図的なものを感じた。

 人はこう言うかもしれない。

 そうであればA町とB町で互いに交流し合えば済む問題なのではないか、と。

 けれど、それは普通の社会での話だ。このような町は閉鎖的だ。

 自分たちの住む町が全てなのだ。


 もしかすると、そんな男女の比率を調整しているのはサンタの雇用主ではないだろうか。

 企業のトップは慈善事業をしている訳ではない。

 ちゃんと利益を取っている。


 人々がおかしいと思った時には、子供の数も減っていた。

 出生率が減るのは理解できる。けれど子供の数が減るのは分からない。

 親は子供が外に遊びに出たのかと思っていると、まるでどこかに導かれるように子供は消えて行った。

 まるでハーメルンの笛吹の童話のように。


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