第17話 Echoed in the well's of silence 3
その部屋は緑色の照明が点滅しており、今までの沈黙が悪戯だったかのような騒音が響いていた。
しかし、何が起動している音なのか涼介には理解ができなかった。
工場で一度も聞いたことがない類の機械音だ。
知ってはいけない事実。それを知る、世界で一握りの人物のみがこんな機械音を聞いているのだろう。
室内は広大な面積だ。野球場、いやそれ以上あるかも知れない。間違いなく自分のアパートの下には届いているだろう。
こんな部屋の上で何も知らず暮らしていたなんて……
そして部屋中の等間隔に2mかける1m、高さ1mほどのトランクが大量に陳列されていた。
息を荒げ、そのうちの一つのトランクに手を伸ばす。
それがなんであれ、涼介の望んでいる「真実」であることは明確だった。
しかしどんな真実なら自分は納得できるというのか?
一体、自分はなんのためにこの数ヶ月、いろいろなものを犠牲にして来たのだろうか。
自分には何もないと思っていた。しかしいざ失ってみたら、それらは取り返しのつかないものだったと気づいた。
職を失い、親を失い、友人を失い、社会的信用を失った。
その全責任が、今目の前に、ある。
覚悟も何も決まらないまま、涼介はトランクを開けた。
中から飛び出した強烈な匂いに思わず顔を背けた。トランク自体は清潔に感じたが中身は真逆だ。
思わず涼介は血がまじった胃液を吐いた。そして勇気を振り絞り、トランクの中身をみる。
それはブルーシートに包まれた1m以上の何かだった。
涼介の中で「あの夜の出来事」がフラッシュバックする。
この中身が何かはまだわからない。まだわからないがこれだけは確実に言い切れる。
それは、生きてはいない。
涙と胃液と血で顔をぐちゃぐちゃにしながら、涼介はブルーシートをめくっていく。
何かを掴んだ。これは……おそらく人間の毛髪だ。
嗚咽を漏らしながら最後の一枚をめくる。そこには……
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