第16話 Echoed in the well's of silence 2

動悸が激しくなっていくのを感じる。そして心臓が振動するたびに傷口に響いた。

ずっと睨んでいた敵の、想定してなかった地下室。


嫌な予感がする。『この階段を降りては行けない』、と全身が警告している。傷口の痛みが2倍にも3倍にも感じ、それは熱を持ち始めていた。

しかし心とは裏腹に、涼介は不確かな階段を、一段、また一段と降りていた。

馬鹿に長い階段だ。踊り場がない。そして、せっかく慣れた目がまた意味をなさないほど暗く感じた。


一段づつ、一段づつ降りていく。

違和感に立ち止まる。……「ブーーン」という、ハム音がする。間違いない。確かにハム音だ。降りれば、降りるほどにそれは大きくなっていく。

大家は嘘をついていた! 廃工場などではない! 地下は機能している!


涼介の中の、形のない不安が、少しづつ確信に変わっていった。


降りていく。まだ降りていく。階段の先に、赤いランプが点滅している。

立っているだけでも自分の心音を感じる。そして心拍で上半身が軽く弾んでいた。


赤いランプの元にたどり着いた。階段は、そのまま扉に繋がっていた。そっとノブを掴んでみる。

心で、鍵がかかってあれと念じた。そうすれば諦める理由が手に入る。もう使命感などどうでもいい。ここのことを知ってしまったら必ず後悔する!

神様懺悔します! 知ってはいけない事実を認めます!

頼む、頼むから開かないでくれ……



扉は、ゆっくり開いた。



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