第6話 夜の電話②

 そんな心情が電話の相手に分かるはずもありません。早く切りたかった。それなのに、A子は続けてこう言いました。

「あの人・・ミムラくんよ」

 ミムラ?

 私が黙っていると、

「憶えてない? あなたが振った男の子じゃないの」

 A子はきつい口調でそう言ったのです。

 そう言われて思い出しました。けれど、それはもう10年以上も前の事です。学生時代のことです。

「ミムラくんは、あなたに振られて自殺したのよ」

「そ、そう・・」

 私はそう言った後、その言葉の違和感に気づきました。

 確かA子は「さっきのニュース」と言っていました。

 あれが最近のニュースであれば、ミムラという男は私に振られてから、十年以上経ってから死を選んだことになります。どう考えても道理に合いません。

 まさか・・

 そこで思い当たったことがあります。ニュースのキャスターです。あの人は何年も前に死んでいます。であるなら、そのニュースは昔のニュースの映像ということになります。決して記憶違いなどではありません。

 心臓の鼓動が早まりました。受話器を持つ手がビクビクと震えました。

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