第4話 外開きのドア②
この感触は何だろう?
ふと思い出しました。
これはドアと壁の間に人間がいる時の感触です。
子供の頃、誰かの家でかくれんぼをしていた時、男の子がこんなドアの間に隠れていたことがありました。私はそれを知っていて、悪戯心でワザとドアを押して男の子をからかったことがあります。
その時の感触が蘇りました。
けれど、ドアと壁の間には誰も居ません。夫が知らない間に帰ってきて、それこそ悪戯心で間に隠れているのかと思いましたが、それはあり得ません。
さっき見た通り、間には誰もいませんでした。
ですが、手を離すとドアはふわりとこっちに向かってきます。慌てて押し返すと、また途中で止まり、ぐいぐい押しても異様な感触があるだけです。
もう戦慄悪寒どころではありません。
まるで誰かと押し合いをするようにドアを押し続けました。ギイッ、ギイッと軋む音が鳴り出しました。このままだとドアが壊れてしまう。そんなことは考えませんでした。
まるで何かの不安を鎮めるように押し続けたのです。
私が強く押そうとした時です。
私の肩を誰かがトントンと叩きました。
「あなた、帰ってたの?」
夫が帰っていたのか・・そう思って振り返ると、
誰もいません。
背筋がゾクッとするのと同時に更に悪寒が酷くなってきました。
ビクビクビクッと背筋が痙攣を繰り返し、歯がガチガチと恐ろしいほどに鳴りました。
同時に、押していたはずのドアが撥ね返すように向かってきました。まるでドアと壁の間に立っている人が力強く押し返したようです。
その時、
「あああああああ」
誰の声でしょう。ある程度年のいった女の人の声が聞こえたのです。
「ふふふふ」
呻く声や笑い声が頭の中でグルグル回ります。
それに加えて悪寒が酷くなり、「戦慄悪寒」の状態のまま命が途切れるのでは、とさえ思いました。もしかして今回の悪寒の原因は、菌でもなく更年期障害でもない。このおかしな現象のせいではないでしょうか。
半開きのドアの向こうにいる得体の知れない物のせいのような気がしました。
そう思った時、プルルルルルッ、プルルルルルッ、
物凄くけたたましい音が聞こえました。鼓膜が破れるのではないかと思ったくらいです。
それは電話の着信音でした。
携帯ではなく、固定電話です。留守番電話の設定をしていないので、私が出るまで鳴り続けます。
久しぶりに聞いた固定電話の音だったので飛び上がるほど驚きました。
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