第3話 外開きのドア① 

◆外開きのドア


 映画が終わりかけの頃、私は時計に目をやりました。もう11時を過ぎています。 夫は未だ帰ってきません。

 そう思った時、

「カチャッ」

 ドアのカギを回すような金属音が聞こえました。

 ドアは、チェーンはかかったままです。夫であれば、ベルを鳴らすはずです。そうしないと開かないからです。

 不審に思った私は、廊下のずっと向こうの玄関口に目をやりました。

 ですが、玄関を見ることは出来ませんでした、何故なら、寝室のドアが90度に開き、玄関が見えないようになっていたからです。

「おかしいな。寝室のドアは閉めておいたはずなのに・・」

 ドアは閉めておくか、大きく開いて壁にドアをくっ付けておくかしていたはずです。そうしないと玄関が見えなくて不安になるからです。

 ですが、その不安を誘うように、ドアは中途半端に90度に開きっぱなしになっています。

 そのままにしておいてもいいのですが、気にし出すと気になって仕方なくなるのが私の性格です。

 私は寒さにブルブル震えながら、暗い廊下を進み、寝室のドアに向かいました。

 ドアに手を掛けると、更に悪寒が強まった気がします。

 このドアを開きっぱなしにしておこう。

 私はそう思いました。そしてその後、ソファー座り、毛布を被って夫の帰りを待つことにしよう。

 そんなことを考えながら、90度に開いたドアの中央を軽く押しました。軽いドアなので、それだけでドアは壁に向かって動くはずです。

 ですが、ドアはギイッと鈍い音を立て、45度くらいの所で停止してしまいました。

「あれ?」

 平素なら、壁にドンと突き当たるはずのドアが途中で止まってしまったのです。


 壁とドアの間に何か挟まっているのでしょうか。

 そう思って、間を覗き込むと何もありません。只の空間です。

 何もないことが分かると、私はぐいぐいと両手でドアを押し続けました。ですが、ドアに撥ね返さるような感触があるだけです。

 あまり強く押すとドアがたわんでしまいそうです。

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