第2話 戦慄悪寒

◆戦慄悪寒


 まず、みなさんは、「戦慄悪寒」という症状をご存じでしょうか?

 発熱した時に、強烈な悪寒を感じたりしますよね?

 その悪寒が熱がない平常時に起きて、止まらなくなる症状の事です。特に高齢の人や、更年期障害の人に出る症状らしいです。就寝時に最も多く発症するらしいです。

 私も更年期障害に当たると思います。そんな症状が年に二度三度現れます。決まって就寝時です。

 真夜中に、急にゾゾッと震えが始まり、「あれ、今日はこんなに寒かったかな?」と思った瞬間には、次の波が来ます。

 ゾゾゾゾッと震えが止まらなくなり、その次に、歯がガチガチと鳴り、ビクンビクンと体中が痙攣し始めます。

 まさしく「戦慄」という名の通り、何かに怯えているような感覚、もしくは暗く冷たい海に沈められたような体感に陥ります。

 そんな時は、更に布団を被る、もしくは重ね着をしようと思っても体が動きません。動くと更に症状が増すからです。

 悪寒の発症は大抵は就寝時なのですが、その日は起きている時に起きました。


 その日は夫の「残業で帰りが遅くなる」とのメールがあり、一人で夕飯を済ませ、お風呂に入って、リビングのソファーに座り、テレビでも見ながら時間をやり過ごすことにしました。


 夜の10時くらいだった思います。

 急に、体に痙攣が走りました。その瞬間、「戦慄悪寒」が始まったと思いました。 就寝時ではありませんが、調べると何かの菌が体に入り、発熱して発症することもあるそうです。

 体がビクビクと痙攣を始めたので、もしや熱でも? と思い、体温を測りましたが平熱です。

 それで普通は安心するところですが、悪寒はどんどん酷くなっていきます。

 ビクンビクンと体が跳ね上がるように痙攣を繰り返し出しました。

 上着を着ようと思っても、思うように体が動きません。這うようにしてクローゼットに辿り着き、厚手の上着を着こみました。

 少し温まると痙攣は緩和されました。


 今は10月ですし、それほど寒くもありません。ましてや発熱もしていないのに、悪寒がするとはおかしい。これも更年期障害なのでしょうか。

 そう思いながら、再びソファーに腰かけました。すると悪寒だけではなくテレビもおかしくなったのでしょうか。買ったばかりの液晶テレビなのに、勝手にチャンネルが変わっています。映画を見ていたはずなのに、報道番組に変わっているのです。

 絶対にチャンネルを変えていませんし、リモコンにも手を触れていないです。

 ですが、テレビは臨時ニュースのように誰かの自殺を伝えています。それも有名人ではなく一般人です。どこの誰かは分かりませんが、死後、数か月経ってから発見されたとキャスターが伝えています。

 違和感は他にもありました。テレビのニュースキャスターの男の人です。

 この人は、もうとっくにこの世にはいないはずです。不祥事を理由に自殺した人です。私の記憶違いでしょうか。


 気持ちが悪いので、私はチャンネルを元の映画に戻しました。

 悪寒は続いていますが、何とか我慢の出来る状態になりました。私は気を紛らわせるように映画に見入ることにしました。

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戦慄悪寒 ~ ある主婦の死まで(短編) 小原ききょう @oharakikyo

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