*KRIS'S STORY

(クリス視点)


オモイビトが死んだ。

オモイビトとはなにかって?

知らない奴が知るべきではないことだ。

ココロの底からオモイビトだって思えたら、ソイツがオモイビトだ。だから答えはない。


まあでも、オモイビトを亡くしたらココロの底から傷つくことになるから、生半可にオモイビトを探すのはやめておくべきだ。

そして私も…探すべきではなかったと後悔している。


オモイビトを守れなかったからだ。

騎士なのに、目の前でオモイビトが殺される姿を目の当たりにしてしまったからだ。

ああ、馬鹿みたいだ、やはり適当な道場で育てられたからかもしれない。

それとも…私のケツイが足りなかったとでもいうのか?

そうかもしれないな。私はオモイビトばかりを愛して、自分を愛することを怠っていた。

この世で私だけが、生まれながらに手に入れた「幻のケツイの目」が枯れ果ててゆくのも無理はないな。

でも今更遅い。ケツイの目が役に立たなくなった以上、もういらない。

これがあると狙われるばかりだし…。

ケツイの目を穿ってくれる場所はあっただろうか。

3月8日 氏名 Kris


この日記を書くためだけに使ったロウソクも、今は私と同じように光を失っている。

私は嫌になって椅子から飛び降りてベッドに向かおうとした。


クリス「……そういえばこのベッドの下…こんなところに箱なんてあったか?」

ふと気になって開けてみる。

するとそこには、騎士募集中と書かれた紙が沢山積まれていた。

遥か昔、「騎士の資金を集めて研究所を作る為にご協力お願いします」と街で死ぬほど誘っていた研究員に渡された紙である。


…私は立ち上がった。

ここなら、この右目ぐらい取り除いてくれるだろう。

ついでに鍛えてくれれば…それでいい。

もう私がどうなっても構わない。


―今更自分を愛したって、どうしようもないのだから。

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