第2話 使徒地に降り立つ⓶

草木も眠る丑三刻。サーシャは明日追い出される屋敷を回っていた。

「あゝ、もうこの屋敷を追い出されるのね、、、」

「お嬢様」

「マール・ハーゲ、、、」

マール・ハーゲ、と呼ばれた者−執事−はまだ若い。そしてイケメンだった。

「明日、御屋敷をでます。お嬢様はお一人インドに行かねばなりません。もう私と会う事もないでしょう」

「あゝマール、これで最後とは言わないで、、、」

そう言って、サーシャはマール・ハーゲに抱きついた。

「お嬢様、いけません、、、」

「あゝお父様とお母様さえ、交通事故に遭わなければ、、、」

「たえとえ、お亡くなりにならなくても、私とお嬢様とでは神が許しても、世間の目が許しません」

「人の目なんか気にしないわ! マール、私を連れて逃げて!」

「私とでは荊棘いばらの道。お相手はインドの富豪。優しいとゆうお方。第一妃として迎えてくださるとの事。喜ばしい事ではありませんか」

「あゝ何故マールを連れていってはいけないの? 神はいないの?」

「神はいます」

「あゝどうか、私達の願いを叶えてください、、、神よ❗️」

サーシャは泣きながら自室に戻りベッドに伏せた。

「こんばんは〜」

窓を叩く者がいる。

「誰?」

「地上お悩み解決派遣員の者ですぅ」

サーシャはお悩み解決、とだけ聞き取れた。

「何の用?」

「悩みがあるなら聞きますよぉ〜」

「お金が必要?」

窓から入ってきた者は、ふりふりの服を着た、若い女性だった。

「お金要りませんよ〜。とにかくお話聞きますよぉ〜」

「なんかあなた頭悪そうね? 悩み聞くだけ聞いてお仕舞いって嫌よ」

「あれ? 声おかしい? じゃ回線を、、、何しろ英語って発音難しくね?」

「あら、あなた外国の方?」

「外国と言うか、何と言うか、、、つい最近日本に行った人いたから、、、それより、悩み悩み、悩みを訊いて解決します」

「あなたに解決できるかしら、、、」

「話を聞くわ。どうぞ」

「私はこの屋敷の主、サーシャ・カミー・テンコモーリー。あなたは?」

「パウロよ。よろしく」

「パウロ? まるで男みたいな名前じゃない?」

「偽名じゃないわ」

「まぁ、いいわ。それで悩みはね、私の父、母が亡くなり、私はインドに嫁ぐ事になったの。インドの富豪のところにね」

「うん、それで?」

「インドのその人は優しいて聞いているわ。ナイス・ガイ。それはそれで良いけど、、、お付きの人、私の国から、インドに行く人に、私の愛するマールを加えて行きたいの」

「『あっそう』」

サーシャは怒気をはらめて言った。

「ass hole(けつの穴)? あなた私を馬鹿にしているの?」

「ごめんなさい。日本に行っていた人のせいよ。悪気はないわ。続けて」

「そう、それであなたがそれをできるかどうかだわ。私の願いよ。できる?」

「待って。あなたは彼氏を連れて外国に行って結婚するの?」

「もちろん。だって愛する人だもん」

「結婚する相手に失礼じゃない?」

「だって、マールは私にとって、友人であり、主従関係であり、頼れる『お兄ちゃん』なのよ」

「私、さっきマールて人見たけど、あんな体して強いの? っそいよ?」

「マールは空手にマーシャル・アーツに柔道知っているの。一度、銃を持った暴漢相手に素手で戦った事あるのよ?」

「うわー、漫画に出てくるヒーローみたいな人『です』ね?」

「death(死)?」

サーシャは続け様のパウロの言い間違え、『ぶひひ教特製なんでも翻訳機』の機械の事がわからない。その機械は人の目には映らないからだ。

サーシャは半分くらいこのパウロの事を信用しなくなった。

「とにかく、男の中の男とゆう事はわかりました。普通、男の中の男なら、女の人かっさらうんじゃないかな〜」

「でしょでしょ、ん〜マールはストイックなのよ。でもね、女の子の気持ちもわかる、ジェントルマンなのよ」

「それではモノは相談ですが、、、」

「何何?」

「自白剤を使いましょう。男の心うちを知るには自白剤ですよ。マールさん秘密あると見ました」

「良いの? それって、、、」

「マールさんの心知りたきゃ仕方ありません。良いじゃないですか、男なんて性欲の塊なんすよ? 小汚ねぇ、どうしようもないクズっす」

「でも肝心の自白剤が、、、それにそれを買うお金が、、、」

「ありますよ? 勿論タダです」

「Oh Jesus‼️ 貴方は女神だわ‼️」

「え‼️ なんで私の正体知ってんの‼️」

「ええ‼️ 本物‼️」

「…バレちまったらしかたない。ま、とりあえず、マールさんのところに、、、」

「…そ、そうね、、、」

「ちょっと手を握って。うん、それで。じゃ行くわよ。テレポート‼️」

サーシャと女神パウロはマールのいる、部屋の片隅に音もなくついた。

「あ、マール祈っている」

「ちょっと様子を見ましょう」


「…天の父よ、明日、サーシャお嬢様はインドへ行きます。どうかお嬢様を守ってあげてください。私の役目も終わります。長い間、私を見守ってくださりありがとうございました。思えば娼婦の娘としつて生まれた私は日々食事もままならず、、、」

「ええ? マールて女?」

パウロはびっくりしてサーシャを見る。サーシャもびっくして目をまんまるくする。

「…天の父よ、あなたは乗り越えられない試練は人に与えない、と仰せです。確かに、確かに。私の人生の半分は確かに苦痛の連続でした。それでも私は信仰を捨てなかった。バカにされ、食べれず、鞭打たれ、、、しかし、しゅイエスがいつも私を見守っていてくれていた事は確か。私がいよいよ娼婦として売られる日、あなたは私の前にテンコモーリー卿を備え、卿はまた、仕事と食事、暖かな衣服を与えてくれました。私は自分の身の安全のために、男と偽りました、、、それは決して信仰的ではありません。しかし私の信仰は間違えてはいなかった! その時そう思いました。主よ、私の命がガンに犯さた今、、、」

「え? マールさんてガンなの?」

パウロは呟き、サーシャは目をむく。



「さすがにガンのステージも進んでいれば、もう助からない、と感じ再び真剣に祈り申し上げました。すると主はインドの富豪を介し、緩和病院、充分な治療を用意してくれました」

「マールさんて余命幾許よめいいくばくもないの?」


「最後の時まで用意された、、、まさしく、主は生きておられる。後は天の御国に行くだけ。唯一、心残りなのはせめて結婚をして、男性に愛されたかった、、、でも、天の御国では、イエス様と結ばれる、、、」

そこまでマールが祈った時、サーシャはマールの前に進み出た。

「マール、、、」

「お嬢様‼️ いつからここに?」

「バカぁ、なんで私にガンのこと隠していたのよ‼️」

サーシャは泣き、マールは優しい目でサーシャをハグした。

「申し訳ありません。しかし、私は旦那様にも、主イエスにも、インドの富豪にも、そしてお嬢様にも愛されました。お嬢様にガンを隠していた事は謝ります。それと女であった事。お嬢様を傷つけるわけにはいかなかった。私はもうこの地上にいる必要はないのです。それはそれで喜ばしい人生と豊かな時間だったのです。娼婦の娘が幸せな結婚をしたいなどとは、恐れ多いのです」

サーシャは泣き崩れ、また、マールも泣いた。

「マール・ハーゲ。あなたの願い、ぶひひの名により、叶えたり。ではさらば」

「待って、パウロ‼️ マールの病を直してあげて‼️」

サーシャは叫んだが、パウロは立ち去った、、、、。

⭐️⭐️⭐️⭐️

その後、マールは奇跡的に回復して、インドの富豪の家の近くで、幸せな結婚をした。子を宿し男の子を産んだ。そしてサーシャも結婚して女の子を産んだ。2人の子は仲良く育ち、やがて、結婚をし子々孫々まで栄えた。

「パウロ殿、何をニヤついているのですか?」

「いやぁ、私、いい仕事したなぁ、と」

「そのうち、サーシャとマールはここにくるでしょう?」

「いや、ここはぶひひ神の所だし、、、」

ちなみに主イエスって誰?」

「さぁ?」



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