熱笑 ぶひひ教

石神井川弟子南

第1話 使徒地に降り立つ。

真夜中、住宅地より程なく離れた雑木林。そこにサージはいた。

サージは苦悶に満ちていた。

「死ぬか、、、」

サージはつぶやく。

サージは高校3年の男子学生。木々の隙間より夜空を仰ぎ、自分のこれまであった苦難を思い出していた。

「あ、神よ仏よ世の善人よ、私を見捨てた事を後悔するが良い、、、あゝ愚痴を言っても仕方ない」

サージは木の枝にロープをかけ、首をくくろうとしていた。


その時! 天空に一筋の光が現れ、ものすごいスピードで雑木林の上空に迫っていた。

「む、あそこか?」

光、、、光る物体は生命体なのか、言葉を放った。


「父さん、今行きます。母さん、長い事お世話様でした、、、」

サージはそう言った。首に縄がしっかりかかり、、後は足を台から離せば首吊りは完成する。そしてサージは足元にある台を蹴り、首をくくった。


「早まってはいか〜ん‼️」

あたかもウル⭕️マンが、ハ⭕️タ隊員から変身して来るかのように手を伸ばす。光は空よりやって来て、サージの身体をすくい上げ、地上に降りた。光は消え、そこには人の姿があった。

サージは自分が助けられたのは理解したが、相手がまさか相手が空より来たとは思わなかった。だから空を飛んでいたのをみていない。

「死なせてくれ」

サージは泣きながら言う。

その助けた相手は言う。

「汝の苦しみ聞き届けた。我が汝をこの先手助けせよとぶひひ様よりの御言葉みことば。この二つの理由より汝を助けに来た。安心なされよ。まずは話から、、、」

そう相手は言った。

「オッサンに何がわかるんだよ‼️」

「何?わしゃオッサンなのか?」

「暗がかりでもな、声ききゃわかんだよ」

「ならば、周波数を変えて、っと」

「?」

「これでどうじゃ?」

相手の声は女性の滑舌の良い響きになった。言ってみればアニメのキャラみたいな声になった。

「…あんたふざけてんだろ?」

「何でじゃ?」

「人を助ける時、男みたいな声出したり、今女みたいな声になったり、、、大体、その言葉遣ことばつかい、おかしいだろ‼️」

「う〜ん、わしゃ言葉使い荒いのか?」

「荒いとか荒くないじゃなくて、、、」

「ならば良いではないか。それよりつまびらかに悩みを吐き出せ」

「…なんだよ、かねくれんのか?」

「金? あゝ、通貨か? 汝はそのような物が欲しいのか?」

「そうだよ、さもしい奴て思われたって、世の中、金だ。金さえあれば、、、俺は大学を諦めなくてもいいし、父さんも死ななかった」

「さようか。汝の父は通貨が原因で死んだのか、、、」

「そんなわけあるか!」

「? 汝がそう言ったではないか」

「いいか、俺んの父さんはな、病気で死んだんだ! その時、莫大な費用を請求されて、うちは泣く泣く治療を断念せざる得なかったんだ」

「ほう、それで?」

「借金を追う代わりに、死を選んだ父さんは、母さんに俺の事を託した。しかし、、、日々追われて生活する俺たち家族に大学へ行く金はない。大学に行かない時代と違って、今は大学ぐらい出ておけて言う時代だ。金だよ、金。俺は頭は良い、でもな、四年間金を出すより、四年間金を稼いだ方がなんぼかましなんだ」

「それで、汝は金金言っているのか?」

「奨学金だって考えた。でも奨学金じゃ勉強する金は貰えても、生活する金は貰えない、、、」

「汝は大学で何を勉強する?」

「医療関係だ」

「その理由は?」

「人を助けたい。ある程度金が貯まったら、外国なり、僻地なり、無料で人を助けたい」

「絶対か?」

「ああ、そのぐらいの意志と頭の良さはある」

「気にいった! 汝の願い聞きいれよう!」

「金をくれるのか?」

「私に金銀財宝きんぎんざいほうはない。代わりにあるじぶひひの名によって、叶えてやろう」

「?」

「ちょっとLINEする。待っておれ」

サージを傍に置いて、相手は服から携帯を取り出し、何やら話しかけた。

「もしもし、ミカエル様はご在宅でありましょうか? 私、地上お悩み解決派遣員の者でございますが、、、ふむふむ、いない? ではウリエル様は? いない? 誰かいらっしゃらないか?」

サージは期待の眼差しで見ていた。相手をよく見ると、服装はヒラヒラとした服で良い香りをする。月明かりだからよく見えないが、美人の様だ。つまり、女だ、とサージは見ていた。

「え? 知恵者パウロ殿がおられる? それは正に、主ぶひひの計らい。代わられよ、、、パウロ殿か? この辺りで生活費と学費出してくれる学校ご存じか? ではLINEで詳細な資料を、、、え、ある? ふむふむ、承知仕しょうちつかまつった」

「何か、策でもあるのか?」

相手は携帯電話を切った。サージの方を向き、こう言った。

「この国には防衛医大と言うものがあり、学費どころか衣服、住むところ、食事まで出してくれると言う。それとお母上だが、生活が苦しければ、この地域で食べさせてもらえる、フードバンクなるモノがあると言う」

「防衛医大、、、何でそこに目を付けなかったんだろう」

「目が開かれていなかったからだ」

「ありがとう!」

「では我は退散する。佳きに計らえよ」

「住所と名前を教えてくれ、お礼ができるようになったら、必ず恩は返す」

「ふっ、寝ぐらはないし、礼はいらん」

「ではせめて、名前だけでも、、、」

「名乗るほどの名前ではない」

「くっ、憎いぜ、あんた。こんな俺に優しいばかりか、知恵まで授けて、、、」

サージは泣き出した。

「天は自ら助ける者を助く。これを心に刻み生きてゆけ。では、さらばじゃ」

そう言って、相手は夜の闇に消えていった。

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

「よう、1人助けてあげたって?」

「うむ。名前を教えて欲しいと言ったがな。わしゃ教えてやらんかった」

「名前がプッシーじゃあな、、、」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る