第7話 命拾い
雷の剣によって俺の首は跳ね飛ばされた。
「ふぅ、あっけなかったね。まぁ、人間程度ならそんなもんか。」
十束は全てが終わったように立ち去ろうとする。
「油断禁物だぜ。」
俺は、油断した十束の背後から切りかかる。
「っ!」
「どうした、首を跳ね飛ばした相手が生きててびっくりしたか?」
斬撃は受け止められるが、体を硬くした十束に蹴りを放つ。魔力で強化した蹴りは障壁に遮られることは無く、十束の鳩尾に入る。十束がふらついた瞬間飛んで距離を取る。
「なんで君は生きているのかな?とてもあれは幻覚に見えなかったけど。」
十束がそう聞いてくる。確かに俺の種族が『真祖のヴァンパイア』であることを知れなければ不思議に思って当然だろう。しかし、十束がわかってないならこちらの手の内を明かす必要はない。
「さぁ、なんでだろうなっ!」
「へぇ、僕相手に白を切るつもりかい?異能力 氷焉の悲劇」
「効かねぇよ、そんな
障壁を再び展開し、氷柱を無効化する。俺のスペックなら制約のあるこいつになら引き分けられる。そう確信していた。だが、逃げるタイミングというのが見つけられない。何故ならば俺は元が人間で『真祖のヴァンパイア』の体にまだ魂が馴染んでない。故に不死というメリットはあっても今の俺には魔力循環が悪いというデメリットも抱えている。だが、冷静さを欠いてはいけない。突破口は見つかるはずだ。
「ふぅん、君は冷静すぎて面白味に欠けるね。」
「それは、失礼しましたね。」
無駄話の中にも
「これはあまり使いたくないんだがな。」
はい、これで奥の手三個目だよ。こいつやばすぎるから仕方がないって言い訳もできるけどやっぱり悔しいな。俺ではこいつを倒せない。俺ではな。
「異能顕現
瞬間、辺りがきしむほどの魔力の圧が掛かる。俺の体から漆黒と純白がごちゃ混ぜになった二対の翼をもった天使が現れる。それは、かつて堕天したもの。大罪を司るその名は
「これが正真正銘の切り札ってやつだ。共に戦おう、
異能顕現
異能の完全操作が可能になったものが限定的に使える、異能そのものを出す切り札。失敗すれば使用者は呪いに侵され最悪死ぬ。俺がこれを成功させられるかは微妙だった。それは
「我、音より早く。この斬撃を防ぐものなし。かのもの我が見えず。」
三つ同時のルール付与に加えて、
「これは...。」
「はは、どうだ、俺らの味は?」
「うん、久しぶりに楽しんでるよ。」
そう言いながらも少し冷や汗を流す十束であった。
(いや、ここまでの化け物だったとは想定外だねぇ。実験は成功したけど制約があるせいですぐには逃げられないから、こんなことになったんだけどね。ここは要改善だね。それと僕もギアを上げるとするか。)
「でも、剣なら近づけないようにすればいいのかな?」
するとまるで氷の女王のように氷を操り、半径5メートル以内を死の大地、氷針の山にする。氷柱の一つ一つに障壁が展開されておりすべてを壊すのは手間だろう。それに
「無影」
俺の影から
「魔弾発射用意 属性付与・火属性」
ただの弾丸にルールで属性を付与し発射する。そうすると魔弾になる。
「異能力 水焉の悲劇」
「クソっ」
水の盾を作り出し魔弾を防ぐ。衝撃で辺りの岩にひびが入っているのに十束の周りだけ荒れていない。奴の氷の領域も馬鹿げた耐久性あるようだ。それに領域に入った瞬間スピードも落ちた。火属性を付与していたからよかったもののただの弾丸だったら止まってただろう。なら火力を上げるのみだっ!
「ギアツー・蒼炎龍っ!」
弾丸が発射された直後、蒼く輝く龍に変わり、荒れ狂いながら十束に突撃していく。蒼の軌跡を残しながら水の盾と激突する。一瞬で盾を蒸発させ、氷の領域を溶かしながら突き進んでいく。
「へぇ、ここまでとはね!」
「
無影を解除し、魔弾の後ろから二体で追撃を仕掛ける。しかし、十束は微笑んだまま拳を振りかぶった。
「異能力 雷帝の狂劇」
腕にありえないほどの雷を収束させ俺の
「まだまだ未熟だね、そもそも君の中にある異能の力はこんなのよりも大きいはずだ。」
そう言って十束は
「っち、厄介な。」
「俺を忘れるなよ。
特別性の厄介な弾丸が放たれる。それは水の盾すらも貫き、十束の体に命中する。
「?僕に魔力を付与してない攻撃は効かなっ!」
弾丸が当たった場所から十束の体が崩れだす。それを見て信じられないという顔をする十束。
「はは、魔力を拒絶する弾丸だとでもいうのかい?いくら世界のルールを捻じ曲げるものだとしてもねありえないだよ、それは。」
「ただの金属性の弾丸じゃないからな。」
そう、これはただの金属じゃなく
崩壊
主を通したゲートで報酬を受け取ると始まるゲートの消滅のことだ。三十分以内に脱出しなければ崩壊に巻き込まれ別の位相に行ってしまい二度と戻ってこれない。
「帰ったらインベントリをみてみな、僕からのプレゼントが入ってるから。」
「そうか、じゃあな。」
「ふふ、君とはいつか本気で戦ってみたいものだよ。」
その言葉を背中で聞きながら俺は洞窟を出るために歩き出した。
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