第6話 イレギュラー

 「すべての悪意よ、ここに集い大いなる罪となり光を汚せ Seven deadly sinsセブンデッドリィシンズ


手ごたえはあったし、パリンという甲高い音も聞こえた。これは、魔王級なら一発で葬れる。これに耐え抜いたなら最低でも大魔王級、最悪魔神級の可能性も考慮しなくてはならない。それはさすがに耐えられない。


 「はは、戦いがいのある相手とは言ったがこれは望んでねぇぞ。」


そんな愚痴をこぼしていると、奥から拍手が聞こえてきた。


 「いやいあ、素晴らしいね、君。まさかミノタウロスキングを数体一気に葬るなんて。とても学生レベルとは思えない強さだね。」


その男は胡散臭い笑みを張り付けて上機嫌な様子だった。それに反し俺は冷や汗をかいていた。


(っち、言霊ってやつか?でも言霊は当たったら何も起こらないんじゃなかったのかよ。ってことはこいつゲートに出てくることの無い等級ってことか!)


魔物の等級は下から

F E D C B A S SS SSS Ex 魔王級 大魔王級 番神級 魔神級 Unknown

となっている。 イレギュラーでもゲートに出てこないのがUnknownだ。

Unknownはどこから来たのか、目的は何か、どのような能力があるか全てが不明。国一つぐらいなら簡単に滅ぼせる奴らだ。この世界では、4体のUnknownが確認されている。こいつは一体目のUnknownにして、厄際の魔人 十束とつかだが、Unknownの出現は200年前から確認されていないのになぜだ?


 「僕が何でゲートにいられるのか、って顔だね。気になるかい?」

 「...ああ、気になるさ。」

 「ふふ、素直な子は僕大好きだよ。」


十束は上機嫌につらつらと理由を話した。


 「僕たちは自分の魔力によってゲートを開いて、魔物を作っているからね。その関係でみることはできてもそこの出現することが出来ない。だから、これはちょっとした実験なんだ。人間に魔王級のコアを埋め込み、それを起点としたゲートを開いたら僕たちは顕現できるんじゃないかってね。この洞窟はその実験室さ」

 「...。」


今のミノタウロスキングはもともとは一般人だっていうのか。異能力者が魔物に取り込まれても自我は保っていられる。しかし、魔力に耐性の無い一般人は人格ごとコアに取り込まれてしまう。それにここが実験室ってことは、


 「う、嘘だろ。ここ魔物全部人間かよ。」

 

俺は茫然とつぶやいた。ここの来るまで大量の魔物を葬ってきたはずだ。それが全部人間だっていうのか。おかしいだろ、

俺はそんな感情を顔に出す。

 

 「どうだい?絶望しただろう、悲しんだだろう。僕はそんな顔が好きでね、特に君のような大人に近づき異能力者として、何も知らない一般人を守っていると思っているガキの顔が一番心地いいんだ。」


十束はそう言って俺に近より、顔を覗き込む。


 「さぁ、絶望した顔を僕に見せてくr…」


俺は不用意に近づいてきた十束の顔に強欲マモンで作った魔力の剣を突き立てた。異能封じの障壁は異能の威力を軽減することは出来るが、魔力そのものを防ぐ能力はない。障壁で強欲は無くなっても魔力が無くなったわけではない。つまり硬く固めた魔力のダメージは入っているわけだ。

 

「クゥ..。」


十束が呻き声を上げると同時に俺は距離を取る。


 「はは、一般人を殺したからなんだよ、俺には罪悪感ってのが無いんでな。」


奥の手二つ目を開放する。今の俺ではUnkounに勝てるわけがない。最悪、本気で五

分といったところか。だったら出し惜しみはしない。


 「種族開放 真祖のヴァンパイア」


そう、二話で俺が真祖のヴァンパイアになったことは話しただろう。真祖のヴァンパイアは回復能力が高く、心臓をつぶされない限りどんな傷でも一瞬で治る。心臓も他に比べ時間が掛かるというだけで一秒以内に治る。そして物質が魔力を帯びていれば魔力に変換することができ、それは魔物も例外ではない。つまりゲートの中は俺にとって魔力の宝庫といってもいいだろう。これでどこまで通用するかだな。


 「封印開放割合を25%に変更。」


そして封印術式を緩める。いつもは10%だが今回は25%で相手しよう。





嫉妬リヴァイアサンっ!」


異能を発現し攻撃をする。出力も上がっているので、障壁も一発とはいかないが確実に削っている。対する俺も『真祖のヴァンパイア』は魔神級に匹敵するので障壁を展開している。それを異能により複製し魔力を存分に込めた五重の守りとなっている。だが、


 「異能力 雷焉の悲劇」


俺の上から降ってくる雷撃が障壁を容赦なく削る。俺の異能で喰っていたがいかせん量が多い。魔物のスキルのように奪いたいが俺が能力を奪えるのは、全ての場合で所有者を殺したときだ。つまり、今どうこうできる問題じゃないのは確かだった。

 

「発動っ!」


俺は四つの魔物のスキルを同時発動する。どれも遠距離系で相手の障壁に命中する。同時に俺は頭が痛くなる。


(能力の同時発動、さすがキツイな。)


 「へぇ、君魔物の能力まで使えるのか。ぜひ君の異能も解析させてもらえないかなっ!」


十束がそう言うと同時に雷撃が俺を襲う。しかも逃げられないように辺り一面を雷撃で埋め尽くしていた。幾らかは相殺するがやはり直撃は免れない。もう、障壁は長くは持たないだろう。


 「クソ、Seven deadly sinsセブンデッドリィシンズ!」


昏い光が十束に向かう。違うのは、収束され威力も桁違いになっていることだ。しかしそれを十束は軽くいなす。

 

 「君は実戦経験が圧倒的に足りないね。惜しむべきは君の若さだ。」


そう言い、十束は俺に雷の剣を振り下ろした。



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