第9話:乙女は強くなくっちゃね!!!!『色々増えた!!』
「ミミ!」
碑矩はミミが振り落とされそうになるのを見て、すぐさま受け止めようと下へ走った。だがミミは落ちてこなかった。
「なっ……めるなぁっ!」
落下する寸前、ミミは別のトゲに掴まり体勢を立て直していた。
「いつまでも……!足手まといじゃないぞ!ウチは!」
『ん?!腕増えてね?!』『腕って言うか手って言うか……』『またウチだ』
そんな彼女を囲むように、大量の手が浮かび上がっていた。それはいま彼女が付けている物とクリソツで、自由自在に操る事ができるようだった。距離は彼女から五メートルと離れられないようだが……
「ぬあっ!」
それは逆に、空中にとどまる事ができるということ。すなわち地蔵本体を掴んでおけばもう空中に放り出されてしまう事は無いということだ。
「おぉ!少しは面白そうになったな!」
「なんか違う気がするが……まぁいいか」
「ウチだって!強くなってやるんだーッ!!!!」
トゲアリとげぬき地蔵の最後の一本が引き抜かれたところで、地蔵の顔が怒りに歪む。先ほどとは打って変わって超スピードでミミに殴りかかろうとするが。
「それはダメじゃろ。表我流其の五、『
ギミックが無くなったボスほど弱いものはない。内側に響く強力な打撃は、内部から地蔵の石体を破壊しそのうちバキバキと音を立てて……
「タイム!バリア!」
「ちょ、そういうレベルかよ?!」
勢いよく砕け散った。
「……んだこれ。クラスターボムか?」
「いやぁ失敬失敬!人間の肉体なら内蔵に衝撃がしみ込んで破裂しないんじゃがのぉ!」
「し……シオウ、もう少し遅れてたらミミさんが死んでましたよ」
「ホントすまんかったって……。デカ物にはキクんじゃよアレが」
「一瞬顔に石がカスめた……」
◇
「ん-っ!!!」
「アレは何をしておるんじゃ碑矩?」
「さっきの手がたくさん出たやつを再現したいらしいんです。……出てませんが」
「なんでー!?」
地蔵から手に入れたアイテム『
「まーワシ知らんけど、たぶん気のせいだったんじゃないかの?」
「絶対気のせいじゃないー!出ろ!出ろ!もう一回出ろー!」
子猫が何度気を貯めてもそれは現れない。そのうち疲れたのか碑矩の体にもたれかかる。
「出ねぇよ今はな。さてと。あの地蔵が隠してたこの魔導書『実録、金色地蔵の作り方』も手に入れたし俺は帰るが……」
「……レイン登録もしましたし、今度遊びに行ってもいいですか?」
「俺の実家、ヨーロッパにあるけどな!けどよ、楽しかった!」
そしてダンジョンの外に出た一行。
「じゃあな!」
そういうと、
「……また会いたいですね」
「そうじゃなぁ。まぁワシらは旅をする、いずれまた出会えるじゃろ!」
「……?今外で魔法使った?」
「おい何をしておる子猫!次の目的地、銀座に行くぞー!」
「え、銀座!?行く行くすぐに行く!」
◇
「ふー……。まさか師匠さんが有名な店の常連だったなんてね……」
「店の人驚いてましたね。……というか、わかるんですね師匠の事」
「あ奴とは若い頃からの知り合いじゃからな、奴の孫のおしめを変えたこともあるわい」
銀座。東京都の中でもとくに有名であろう場所。ザギンでシースーとか言う言葉もあったが、今や聞く言葉すら存在しない。
「最近登録者数も一気に20万人にまで増えたんだよ!?二倍だよ二倍!」
「へー」「そうかー」
「もうちょっと反応して!」
動画関係の事に関しては全く分からないので完全スルーを決め込む二人。そんなわけで今日もまたホテルに泊まるわけだが……。子猫はまたもや奇妙な夢を見た。
「……」
『ようやく我の声が聞こえるようになったか』
「……え?」
相変わらずメジェドが沢山いるが、その中心の山になっているようなところから声が聞こえてくる。壮言で恐ろしく、だがそこにはカリスマ性を感じるような、そんな声。
『我が名はファラオ。王だ』
あっこれは夢だ、と思った子猫はそのまま寝ようとするがメジェドにドロップキックをブチこまれる。
「痛い!……ってことは、夢じゃない……!?」
『当然だ。我はファラオ。今貴様の腕に付いているソレに魂を封じられているのだ』
「そ、そうなんだ……。で、ファラオって何?」
『ファラオに決まっているだろう』
気まずい沈黙。
『……それより、なぜ我の力を使っているのにそんなに弱い?』
そしてド直球。彼女からすれば自分が弱いと言う事などいやというほど知っているのだ。ファラオはため息を吐くと後ろに立たせている内の一体を目の前に出す。
それを説明するなら、浮いてる棺桶って感じの見た目の物。浮いている棺桶の周囲には今子猫が装着しているスフィア・マギアの物と同じ……物が、数十個以上浮いていた。
『そ奴は我のガーディアンの一人、『
「……」
『我らの力を使いたければ、我の家臣を撃破することだ。そうすれば力を貸してやろう』
「……」
『もちろん戦わずとも構わんがな……』
「……ウチ、やるよ。全員ぶっ飛ばしてやるから!」
『ククク……。そうでなくてはなぁ!さぁやってみろ!』
子猫が精神世界の中で戦っている一方その頃、碑矩と師匠の二人は銀座ダンジョンの下見をしていた。相変わらずとんでもない場所に出来ているダンジョンに困惑している様子の二人。
「……歌舞伎座のど真ん中に出来てるのとんでもないですね」
「どうせ歌舞伎っぽいモンスター共が出てくるんじゃろ」
中央区歌舞伎座にドーンと出てきたダンジョン。営業妨害どころの騒ぎではないが、入った奴がことごとくぼこぼこにされ出てくることで有名。
「……歌舞伎関係ないみたいですね」
「じゃのぉ。まぁ今日はもう遅い、寝るとするか」
「ですね」
そう考えていると、今まさにダンジョンが攻略されたらしくそいつがダンジョンから出てくる。
「なんじゃボスは倒されたようじゃの……」
「そうらしいですね。誰がやったんでしょうか?」
そいつは何とも言えないような奴だった。アルビノ色の髪の毛に死装束を着ているヤツだった。
「ハーイ!今日も俺チャンの放送見に来てくれてアリガトー!」
「また変なのが出ましたね師匠……師匠?」
「……
「え?」
「骸ォッ!」
それに誰も反応出来なかった。
師匠はその骸と言う男を見た瞬間、なんといきなり頭部を殴り飛ばし床に脳漿をブチまける。
「……師匠!?」
「やはり生きておったか骸ッ!今日こそぶっ殺してやるッ!」
「ちょ、師匠!もうぶっ殺してますって!」
「離せ碑矩!アレがあの程度で死ぬかッ!」
「そうだよやめてあげなよー」
「いやそういう訳には……ってん!?」
だが骸は頭部を砕かれたと言うのに生きていた。何なら普通に話しかけてきた。どこから声が出てくるんだとか思ったし、なんで生きてるんだと流石に碑矩も大困惑。
「え……?」
「あー、あのさー。俺チャン不老不死なの!凄いでしょ?ね?俺チャンヤバいでしょ!?」
「……?」
碑矩、人生初めて脳が理解を拒むという言葉を理解する。しばらくすると首から上が生えてきたので、まったく問題ないというように自身の首をもとに戻した骸。そして死ぬほどなれなれしく師匠へ話しかけに行く。
「ねーねー。俺チャン暇なんだよ~。かまってチョ」
「黙れ。殺すぞ」
「えっホント!?俺チャン死んだことないから早く死んでみたいなー!」
どうやら知り合いらしいと碑矩は思ったが、師匠は一人殺意をむき出しにするのであった。
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