第10話:ロクでもない奴『決闘、夢の中で』


「うーんザギンのシースーはおいしぃや」


「……師匠、アレとは知り合い……ですか?」


「少しな。じゃがワシはアレが嫌いだ」


 無理やり連れてこられた二人。そして寿司屋で人のおごりだと言い始めて寿司を貪る骸。いくら何でも食いすぎだろ……と思っていると骸の両隣にいる奴らが謝罪を始める。


「すまん、このクソバカが……」


「い、いえ!別に二人が悪いわけでは……というか、関係は?」


「……俺の父がコイツの友人」「俺に名前をくれたカス」


「凄いボロクソにいいますね……」


 どうやらお互い苦労しているようで、キツネ?っぽい方が食いすぎだと頭をカチ割る。だが死なないのでそのまま寿司食うのを続行。その後なぜこんなのと配信をしているのかと気になったので質問する碑矩。


「それで……。お二人はなぜダンジョン配信をされているのですか?」


「それか?コイツの一存だそれは」


「……そうなんですか?」


「だって……。ダンジョンは定期的に破壊しないとその辺から湧いてくるし……。モチベが無いと退屈だし」


 寿司を食べ飽きたのか今度はガリを貪り始める骸。やはりこいつは何も変わっていない……と、大きなため息を吐く師匠。


「はぁ……。ワシは今から五十年前にコイツと出会い、それからズルズルと腐れ縁なんじゃよ」


「つーかよく見りゃ若返ってんじゃん!何があったん?」


「ダンジョンじゃ。最も、使った物はすでに砕けてしまったから二度は使えんじゃろうがな」


「……そっか。まぁそれはいいやそれで~?東京二十四区ダンジョン制覇する気~?」


「……まだボスが倒されていないところは?」


「ん~……。弱いの嫌いでしょ?強いのがいるところ教えてあげようか?」


「な?無駄に話が早いじゃろ?」


 それはそうと骸はメモを取り出し話を始める。


「まずね、現在二十四区のうち20区は既にボスは倒されてるんだ。ま~ちっちゃいダンジョンとか出てくるけど、デカいダンジョンに絞ったら残り4区ね」


「……逆にまだボス倒していないのが四つもあるのか」


「そうねぇ~。俺チャンとかも頑張ってんだけど、中々面倒なのが二つあんのよ二つ」


「……」


 そういうと骸は懐からタブレットを取り出し地図を見せつけてくる。そこには無駄に『危険!』とか『危ない!』とか書かれた中心に、異様な雰囲気のダンジョンが一つ。


「ここ。上野に出来た小さいながらも凶悪なダンジョン……未だにボス撃破どころか内容の全容に至れてない化け物ダンジョン」


 そこは上野は旧東京音楽学校、奏楽堂という建物の目の前にあるダンジョン。ギリ敷地外にあるらしいが一歩間違えれば普通に建物直撃。人が出来てほしくない場所に出来る性質でもあるのだろうか。

 なんでも一人ずつしか入れないダンジョンらしいのだが、それだけならままある事、問題はそこではないらしい。


「なんでもよ、入った内の一人がその中で小さな女の子二人を見たって証言してんだよ、しかもモンスターでもねぇのに」


「……」


「まーそいつらが関係あるかどうかは知らねぇけどな!」


 そしてもう一つのダンジョンを見せつける。そっちは場所だけでもう何を言いたいのかわかるほど有名なところ。何せ東京タワーと双璧をなす場所にあるのだから。


「東京スカイツリー。そこの地下にダンジョンがある」


「スカイツリーか」


「そう!で、そこにヤバいモンスターがいるらしくてさぁ?そいつが潜るヤツ潜るヤツ襲い掛かってヤバいんだって!どうよ?あと二つ……どっちに行きたい?」


「であればスカイツリーじゃな。……そっちの奏楽堂とやらの方は……。なんとも言えんな」


「OK!じゃー俺チャンズは他二つブチのめしてくっからよ!まぁ期待、してるからにぇ~ッ!」


 そう言うとお代を払って帰っていった骸。おごりって自分で払う事かよ……と若干困惑した碑矩。


「……嵐みたいなヤツですね」


「あぁ。……それより、こっちの方が気になるがな……」


 そう言って地図を手に取る師匠。その顔はどこか暗い。

 それはそうと子猫は精神世界の中で砂鉄の鎧守と戦っていた。とは言えとことん不利な戦いを強いられていたが。


「─〜ってかさ!ウチがこの篭手だけでそっちは手を使い放題って不公平じゃないの!?」


『何を言うか。我の墓守の力を得るなど本来であれば言語道断。その程度にも勝てんような奴が、我の力を使えるとでも……?』


「うぅっ正論かも……、うわぁっ!」


 明らかにヤバい量の拳から何とか逃げてはいるのだが、圧倒的に物量が違いすぎる。子猫が一発拳を飛ばす合間に、鎧守は三十発くらいは拳をブチこんできやがるのだ。しかも普通に一発拳を飛ばしても弾かれる。


「近寄るしか攻撃当てるチャンス無いじゃん!」


『その通り。だがしかし貴様とこ奴では基礎性能から違う。まともにやっては勝ち目などないぞ?』


「わかってるよ!」


 まともに戦っては勝ち目がない。かと言ってマトモに戦わなければ即死するような攻撃が飛んでくる。圧倒的質量の拳はせいぜい一発弾くので精一杯。


「ンギギ……!」


 その内弾くのも限界に達し、鎧守につかまってしまう子猫。地面にたたきつけられると同時に大量の拳が子猫の肉体を襲う。


『……終わったか』


 ファラオが興味をなくしたのか寝ようとしたところで、土煙が晴れると同時に子猫は全身ボロボロ状態で鎧守の眼前にまで接近した。拳のダメージは明らかに尋常ではないだろうに、意地だけで立っていた。


「ぶっ飛ばすッ!」


 棺桶の前面が砕け散るレベルの打撃を叩き込んだ子猫だが、その中からまたまた大量の手が出現する。その数、おおよそ千……。


『まぁいいだろう』


 と、見えたところで鎧守を下げさせるファラオ。そして再びメジェドっぽい見た目の奴を出すと、その布を一枚子猫に渡す。


「……。え?」


『まぁ良いだろう。我の力の一部、具体的に言えばこの『白眉の過負荷メジェド・メジェド』を使わせてやろう』


「……これは?」


『それを着れば我が眷属の一人メジェドの力を得る事が出来る。ビームが撃てるぞ?』


「え、メジェドってビーム出るの?!」


『基本装備だぞ?軽い気分で使うと良い』


 そして目が覚める子猫。横には先ほどのメジェド布が置かれてあった。


「……シンプルに怖い」


 まぁ気にはなるので被って碑矩の元に行ってみると、多少困惑した物のビームと言う単語に反応しどの程度の威力か確認してみることにした。


「出るのかビーム!出るのか!?」


「まぁウチもぶっちゃけ出し方は分かんないんだけど……。えいっ(ブッ」


 一瞬光が見えたかと思えば的として要していた空き缶が粉みじんに消し飛んだ。その上で爆発まで起きる。なんだなんだと人が集まって来たので急いで逃げる二人。


「……ヤバすぎ」


「凄い!本当にビーム出るんだ!ときにも教えてあげよう!」


「……時って誰?」


「え?あぁタイムの本名だよ。レインで最近やり取りしてるからね」


 そして二人は人目を避けながら泊っているホテルに帰ってきた。一人寂しく朝食を食す師匠は二人が帰って来たのを見て手を振って呼んでくる。


「では今日はスカイツリーに行くぞ!」


「東京スカイツリー!いいねいいね!……観光で行けたらもっと良かったけど」


「別に観光しててもよいぞ?今回はチョイと面倒じゃからな……」


 そんなスカイツリーダンジョンでは、今日も異様な量のリスポした奴らがアイテムを全ロスしてふて寝している様子だった。


「なんなんだよ、アレ!」「クソが!あの狐野郎ぶっ殺してやる!」「お、お前も全ロス組?クソダンジョンがよ……」


 そんな怨恨渦巻くスカイツリーダンジョンに、師匠と碑矩は挑むのであった……。

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