第8話:トゥクトゥク言葉やめてください!!!『また変な奴が出てきた……』


 東京タワーダンジョンをぶっ潰し、ついでに死神もブチのめした二人はまだ眠そうにしている子猫の元へ戻ってきた。寝不足なのかクマが出来ていた。


「おーい起きたか子猫ー」


「うぅ……。ウチまだ頭ガンガンするぅ……」


「今日は休みますか?」


「いや行く……。ウチ止まってらんない……」


 とりあえず朝食を食べた後、一行はあるダンジョンに向かっていた。


「それで、次はどこに行くんですか?」


「巣鴨じゃよ」


 ◇


 電車に乗り浅草にやって来た一行。ぶっちゃけ巣鴨って何があんの?って感じだったが今は若者でにぎわっている。ダンジョン効果なのだろうか。まぁなんにせよ若者が増えるなら文句はないと黙認している様子。


 それはそうと今回向かうダンジョンは浅草のとげぬき地蔵の下にあると言う。向かってみると本当にとげぬき地蔵の下にあった。……とげぬき地蔵がある場所の下にがっつり出来ている。


「……突き刺さってますね、地蔵」


「じゃなぁ」


 もう一種のシンボル的にとげぬき地蔵がダンジョンの上にあった。まぁ別にそれを見に来たわけじゃないんで……と、早速二人はダンジョンに潜る。


「えーっと。よし!みんなー!今日も配信始めるよー!」


『割と朝早いね』『おっキタキタ!』『巣鴨じゃん!俺近いぜ!』


「そうなんだ!別に配信に来てもいいよー!」


 ミミも配信を始めた様子なので、早速ダンジョン内に。中にはモンスターがいつものようにいたのだが……。まぁ、言うまでもなく蹂躙劇である。


「地蔵ばっかりですねぇ師匠」


「じゃのぉ」


 何故か地蔵の見た目をしたモンスターばかり出現する。だから何だと容赦なくぶっ壊していく二人だが、ミミは流石にドン引きしている様子だった。


「あのー……お地蔵様だよ?大丈夫?」


「下らん。神など存在するものか」


「これはあくまでモンスターなので……。ホントの地蔵は壊す気はないですよ?」


『とか言いつつ片手で砕いてるのコワ』『握力だけで今砕いたよね?!よねぇ!?』『また蹂躙ですか……』


 そんなことをしていると、そのうちの一体が本を落とした。拾い上げてみると『誰でも簡単魔法使い!必勝、魔法使いマニュアル』と書かれていた。


「……。胡散臭いゲームみたいなタイトルの本が出ましたよ師匠」


「絶対ロクな事書かれておらんぞ」


『あ、レア魔導書だ』『え?コレがレアなの?』『確かクソ魔導書すぎてみんな捨ててるからレアって言うクソゲー需要みたいな奴……』『実質価値なしなのでは?』


 そんなことを言っていると、いきなり変な奴がやって来た。どうやら配信を見てやってきた奴らしいが、テレポートでも使ったのかいきなり出てきた。


「そいつを言い値で買おう!」


『何!?』『誰!?』『なんだコイツどっから現れた!?』


「え、なんですか?」


「あぁすまん。俺は……配信中だったか。俺はタイム。『リ・タイム』!魔導書を専門に集めている収集家って奴だ!」


 その男……タイムは、今時珍しい銀髪緑目と言う何とも言えない感じの奴であり、服は燕尾服の上にスーツを羽織ると言うよくわからないファッションセンスをしていた。


「いや欲しいならあげるよ。僕ら魔法使う気無いし……」


「いいのか?タダで貰うってのは流石に俺のポリシーに反するんだが……」


 そうこう言っていると、師匠がヌルリと碑矩の後ろからやってくる。


「ではこのダンジョンをクリアするまででよい、一緒に来てはくれんかのぉ?」


「……どっかで見たことあんなこのガキ。でも事実だな、よっしゃ、ついて行ってやるぜ!あっこれ俺のレインな、なんかあったら連絡しろよ~っ」


 こうしてレイン交換した碑矩とタイム。そんなこんなで一行は下の階へと降りていく。ミミは配信者らしく合間合間でタイムに関することを聞いていく。


「それで……なんで魔導書を?」


「ん?あぁ趣味だよ趣味。趣味と実益を兼ねたいい感じの奴さ。……ところでそっちは何なんだ?その武器」


「あ、これはワタシがクリアしたダンジョンの武器で……」


「……レベル5か。お前それ使いこなせてねぇな?」


「え、それってどういう……」


 と、話していると敵が襲来してくる。今度の奴は殺意マシの殺戮地蔵的なので、武器やらなにやらもうメチャクチャであった。


「うーん凄い量だな……」


「流石にこの量は面倒じゃな」


「おっと二人は下がってな。ここは俺の出番って訳よ」


 そんな地蔵の大群に、タイムは二冊の魔導書を取り出す。それぞれ『土の秘術』と『水の魔導書・改』と書かれていた。


 ここで魔法について説明しておこう。魔法とは魔導書を使う事で誰でも使う事が出来ると言う物だ。ただしこれを使うには魔力が必要になる。その魔力と言うのはダンジョン内で確認できる。そして魔法を使う際には、その魔法を事が必須なのである。


「二冊持つってどういう事?」


『なんだなんだ?』『いや二冊持っても無理だろ同時詠唱は……』『と言うか、コイツ魔力どんだけあるんだよ』


「まぁ見せてやるよ。同時詠唱をな!」


 そう言うと土と水の魔法詠唱を始めるタイム。


我は土に命じるメイルシュトローム・グリング


「!?」「えっ何ちょっとコワ……」


流砂獄ウェイブ・ロズ


 違う言葉が聞こえてくると言う違和感。気味が悪いと言う次元ではない。だが確実にその魔法は発動し、大量の地蔵たちは水流砂に飲み込まれあっという間に沈んでいった。


「……エグ」


「よし終わったぞ。じゃー行くか」


「おう、そうじゃな」


 同時詠唱と言う芸当を、まるで当然のようにしてのけると言う凄まじい芸当に、コメント欄は大盛り上がり。

 それはそうと師匠は今の魔法を見て血が騒いだのか、ニヤリと笑うとタイムの肩に手をかけてニッコリと笑う。


らないか?」


「んだよいきなり……。俺は人殺す気なんかねぇし、無駄に戦う気もねぇよ」


「なんじゃ、つまらんのぉ……」


 そして最下層までやって来た一向。そこにいたのはクソデカトゲトゲとげぬき地蔵だった。


「デカ」「でっか」「デカいですね」


 そんなことを言っているとデカ地蔵が一行を踏みつけようとしてくる。師匠がはじき返そうとするが何らかのルールでもあるのかそのまま踏みつぶされてしまった。


「あぁっシオウさん!」


「フンッ!ワシより脆い素材でワシを倒せると思うな!」


「うわっ無傷だコワ……」


 まぁ無傷なのだが。それはそうと碑矩が殴ってみてもタイムが魔法を使ってもこの地蔵にダメージがない。間違いなくギミックボスである。


「こりゃ面倒だ、どうする?」


「……とげぬき地蔵の割にトゲトゲですよね、アイツ」


 碑矩がそう言って、他三人はまぁ確かにそうだな……と思った。

 だがとげぬき地蔵なのにトゲトゲというのはトゲアリトゲナシトゲトゲムシみたいな感じで奇妙である。試しにミミが一本トゲを抜いてみると、デカ地蔵は悲鳴を上げる。


「よーしミミ!お主はトゲを抜け!ワシらでこいつの気を引いておくからの!」


「そういうギミックね。なら俺も手伝ってやるよ!」


 スフィア・マギアで作った腕何とか抜けるレベルなので、ミミははからずも自分が一番危険な作業を任される。だが最近ロクに活躍の機会がないということで、若干だが張り切っている様子であった。


「このくらいならワタシにも……」


 だが流石にこれを黙っている地蔵ではない。三つ目を抜いたあたりでヘドバンを開始し振り落とそうとしてくる。


「ちょっ、ヤバ……ッ!」


 引き抜こうと持っていたトゲがすっぽ抜け、ミミはそのまま落下を開始した。

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