第7話:VS死神
「オラッ!」
吐き散らかし強い奴のスキルとアイテムだけの状態になったガラキは、碑矩を翻弄出来る程度のスピードを得ていた。だが火力がないので普通に防がれてカウンターを食らっている。
「少し早くなった程度で……僕を殺せると思わないでほしい」
圧倒的に火力が足りない。碑矩の肉体を貫きたいのならミサイルくらいの威力になってからでなければ歯が立たない。事実、ヘタに強く殴ってガラキの腕はへし折れている。
「ハッハーッ!クソ野郎が死神!?お前ごときが死神じゃと!?ナメるなクソ野郎ーッ!」
一方の師匠はと言うと、死神相手に攻撃をしてはいるのだがそのどれもが宙を切る。それもそのはず死神には本体がない。本体がないということは倒せないということ。理不尽を固めて作られたと言われているだけのことはある。
「チッ、打撃も斬撃も効果が無いか……。そのくせ奴は攻撃し放題ときた」
「そっちはッ!どうですか師匠ッ!オラッ邪魔だッ!」
「ふん、問題はないわ。……じゃが、少し戦法を変える必要があるのぉ……!」
碑矩がガラキを追い詰めているが、師匠は死神に対する決定打がない。だがふと師匠は自らの拳を服に隠すと気を集め始める。
「碑矩ェッ!よく見ておけ、
「本当ですか師匠!?オラッ退けよ邪魔なんだよお前ッ!」
「まぁ見ておれ……。表我流其の九『
一瞬。気が揺れたと思うと死神が吹っ飛んだ。その顔面には師匠の物であろう拳の痕がクッキリとついていた。それは打撃を飛ばしたのでも、衝撃波を当てたのでもない、離れた相手を殴ると言う技術。
「どうじゃ?殴られるのは久方ぶりか?まぁ……もう二度とお前はワシに触れられんがな!」
再度背後に回ろうとするが、それすら出来ずに再び打撃痕が付けられる死神。完全に一方的である。撮影しているアインもこれにはドン引き。
「……えぇ」
『えっナニコレは……』『ミミのところの二人じゃん!……なんでいるの?』『待って?死神ブチのめそうって事?!ちょっとホンキ!?』
死神がボコボコにされている間に、ガラキは碑矩がその技に見とれているのを察し逃げようとする。だが合間に入ったのが運の尽き。全身に拳をブチこまれ、そのまま消し飛ぶほどの威力を叩き込まれ壁のシミへ変化した。
「やっぱり凄いなぁ……師匠は」
体中に凸凹が出来た死神だが、コイツにはそもそも体力とかそう言う物がないので何度でも立ち上がる。だがその度に大量の拳を叩き込まれ、地面にメリこまされる。
「ワシは何度でもお前を殴れるが……。お前はワシに一撃ももう二度と入れることは出来ん」
死神にとって自分が攻撃されるなどと思っていなかった。どんな武器も技もアイテムも通用しないと思っていた。だが実際問題、目の前に自身に攻撃できる相手が現れたのだ。それは死神にとって、最悪が出てきたようなもの。
「お?」
故に。
「『
─死神は
『増えた!?』『え!?死神って増えるの?!』 『しかも全員別の武器もってねぇか!?』
それは死神が追い詰められた時にだけ発動する最終形態。四体の死神に増える事で、攻撃を食らう事がない不死の肉体から相手を確実に殺すだけの存在へと変化する。
「ほぉ!中々楽しませてくれるわ!」
もはや不可視レベルの斬撃が師匠を襲うが、見えているのかいないのかそれをしゃがんで避けると、連携して突っ込んできたハンマーをはじき返し体制を整える。
「む」
整えようとしたところに鎌が後ろから吹っ飛んできた。その場から飛びのきよけようとするが、その先には銃を持った死神が。空中では身動きが取れないだろうと銃弾を放つが、師匠は慌てず騒がずその弾丸を切る事で無傷で着地した。
「ほほぉこれは中々……!」
ニヤリと笑う師匠だが、その後ろから碑矩が鎌を持っている死神を蹴り飛ばしやってくる。
「な、なにをするか碑矩!ワシから楽しみを奪う気か!?」
「師匠。……僕だって戦ってみたいんですよコイツと!」
「ふむぅ……。まぁ良いじゃろう。ではワシは三体を殺すからのッ!」
良くは分からないが話はまとまった様子で、碑矩は鎌を持った死神と。
師匠は銃、ハンマー、剣を持った死神三種類と殺し合いをする事になった。
『いや二人ともヤバいじゃん……』『なんなの?俺だったら今ので五回は死んでる』『ってか、シレッと刀を素手で持ってるのはどういう何?』
碑矩と鎌死神だが、先手を打ったのは鎌死神の方だった。碑矩に向けて鎌を投げつけると魔力で出来た鎌で上と下から挟み撃ちにしようとする。一瞬受けるかかわすか迷った碑矩だが、受けることを選択した。
「
先ほどから使っている、肉体を鋼のように固める技術。これは誰でも出来るので詳しく言う事はないが、鎌を皮膚で受け止めれる程度の硬度がある。それで投げた方の鎌を掴み。
「お前のだろッ!返してやるよッ!」
受け止めた鎌でそのまま鎌死神の顔を切り裂く碑矩。とは言え斬撃に抵抗でもあるのかそれは全くダメージになっていない。碑矩も元からそれでどうにかなる相手だと思っていなかった。
「表我流……」
一瞬。ほんの少しだが反応が遅れた死神。鎌で防御しようとするが碑矩はその防御をものともせずに拳を叩き込む。
「─ッ『
テレフォンパンチもいいところな打撃だったが、その一撃は鎌を粉砕した上で死神の腹を砕き割る。そのまま壁にたたきつけられた死神は仮面にヒビが入った後、灰となって消えていった。
『……マジかよ』『ちょっと待ってよまだ一分も経ってないけど!?』『アレ!?ちょっと強すぎじゃないですかねぇ!?』
「……押忍!」
碑矩が鎌死神を撃破した後ろで、師匠と三死神の戦いは熾烈を極めていた。剣が前に出て牽制し、ハンマーが中くらいのところで確実に打撃を与え、銃が遠距離から銃弾を二人に当たらないような精密射撃で狙ってくる。
「ワハハ楽しいのぉ楽しいのぉ!」
……だが。師匠からすればそれくらいでちょうどいい歯ごたえを感じられる程度。剣の攻撃を程よく固めた肉体で防いだり、ハンマーの攻撃を弾いて防いだり、挙句の果てには……
『……え?今銃弾を頭で滑らせなかった?』『なにッ?!』『なんだァッ!?』『うああぁぁぁぁぁぁぁぁ(PC書き文字』
銃弾を肉体に滑らせる事で完全に回避するとかいう離れ業まで身に着けていた。そして剣が師匠めがけて横薙ぎをした瞬間師匠は一転攻勢。
「五の応用『
剣に対し放ったその打撃は、剣から死神に伝わりその肉体に円状の打撃痕を与える。もう剣が助からないと悟ったハンマーは剣ごと師匠を破壊しようとフルスイングで振りかぶるが、
「一の応用『
正拳突きを拳を回しながら放つその一撃にハンマーもろとも肉体を粉砕され。
「三の応用『
まだ遠いと思っていた銃死神は遠距離斬撃で真っ二つに切り裂かれた。この間……約0.1秒。
「では、さらばだ!」
上機嫌なのかテンション高めに応用技まで見せてのけた師匠。その後碑矩と共にダンジョンを出て行った。その後アインは静かにカメラを降ろす。その顔には確かな諦めがあった。
「……あれ、俺らの組に入れたくないですか?」
「……お前さぁ。アレを誰かが手綱取れると……思うか?」
こりゃダメだガハハと帰っていく二人。アインは一人虚空を見つめ、これからどうするかなぁ~と試行を始める。
それから三日後、東京タワーダンジョンがなくなったと言うニュースがネットに上がったが、一日足らずで誰も話題にしなくなった。……そこには白い髪をして死装束を着ている男の姿があった。
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