第3話 いる筈のない大切な存在
実習訓練から一日が経ち、次の朝を迎えた。
そうして、俺達は教師から通達された新しいクラスを知った。そこは、この学園に入学した者なら誰もが知っているクラスだった。
朝日が俺達を起こして数時間、俺達三人は新しいクラスの前まで来ていた。
スッと入って良いと思っていたがわざわざ全員の前で紹介するらしい。転校生みたいな扱いらしい。
「皆!今日からこのクラスに新しい仲間が増える事になりました!入ってきて良いよー!」
その言葉に従い、俺達はそのクラスに足を踏み入れた。
そうして、俺達は教室に入った…瞬間、俺は。
「…え?」
と、素っ頓狂な声を出した。
「秀、どうした?」
碧が俺にだけしか聞こえない程の声量でそう聞いてきた。
その言葉に俺は
「ごめん、なんでもない。」
そう言葉を返した…が、なんでもない訳がないだろ…。だって、この教室に入った瞬間見てしまった。
なにを…?
………いる筈のない、もうこの世にいない。
俺の目の前で死んだ筈の姉がそこにいたのだから…。
動揺の感情が溢れ出てくる。
ありえないのに…此処にいる訳ないのに、死んだじゃないか…。何でいるんだよ…。
姉さん…。
思考がおかしくなってしまう…瞬間、陽と碧の言葉で俺は正気に戻った。
「秀…!」
「秀君!次、秀君の番ですよ!」
「あ、あぁ。ごめん。」
そうして、息を整えて俺は言葉を紡ぐ。
「俺は柳楽秀、よろしく。」
と…。
そうして、俺達三人の自己紹介が終わり、教師に座る席を指定され、俺達は席についた。
教師が何か、言い始めたが今の俺にはそんな事どうでも良かった。
…何故死んだ筈の姉が此処にいるのか。その疑問で俺の頭は埋め尽くされていたから。
姉さん、俺がこの学園を本格的に目指す事になった出来事で死んでしまった大切な姉。
いや、美化し過ぎてる。
…姉さんは俺のせいで死んだんだろ、自分を正当化する為に言い訳するなよ…俺。
死んでしまった、なんて…俺は関係ありませんじゃねぇだろ。
そんな思考を巡らせていると教師の声が響いた。
「柳楽秀君!このクラスの事を何処まで知っているかテストをしよう!なんでも良い、このクラスについて知ってる事を言ってみなさい!」
「あー、はい。このクラスは悪を制圧する為の組織の中枢を支える隊長四名の実力に匹敵する生徒達を集めたクラスです。そして、このクラスは実習訓練などではなく本当の戦場に赴き、実戦の経験を積むクラスだと存じております。」
「柳楽秀君!君は随分博識なんだね!ここまで正確に説明されるとは思ってなかったよ。」
「いえ、学園に入学をした者なら知ってて当然の知識です。博識なんて…。」
「謙遜しなくていい!実はね、このクラス君以外このクラスの事あんまり知らなかったんだよー!まぁ、僕は知ってたけど!」
このクラスにいる人数は大体俺達含めて十二人、ほんとに俺以外知らなかったのか?
そして、近くの席の陽に小声で聞いた。
「陽、もしかしてお前も知らなかったのか?」
「う、うん。知らなかったなぁ…。」
もしかして…。
「碧、もしかしてお前も…?」
「強さ以外に興味無かったからな。」
「知らないって事か…。」
…そうして、朝のホームルームが終わりを告げ、
教師が言葉を紡ぐ。
「今日はこのクラス全員の能力を確認するから僕に着いてきてねー!」
と…。
そして、連れられた場所は昨日と同じ、実習場だった。
そうして昨日と同じ空間にまた飛ばされる。
次の瞬間、教師が驚きの言葉を紡いだ。
「今から能力を使って、悪側の捕虜と戦ってもらう、悪側には勝ったら開放するって言ってるからさ、多分あっちは本気で殺しに来るから、こっちも殺す気でいかないと、君達死んじゃうからね…。」
と…。
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