第4話 八つ当たり

「じゃあ早速戦ってくれるのは誰かな!?順番は適当で良いよー!」


その教師の言葉に誰も戦う、という簡単な意思表明をしない。だから…。


「俺が戦います。」


と言葉を紡いだ。


そうして、何もない灰色の壁に囲まれたこの空間の奥にある扉から一人の男が歩いて来た。


そして、教師が言う。


「柳楽秀君!君の能力、僕達に見せてくれ!」


と…。


……やっぱ、駄目だな。悪側の人間ってだけで

こんなにも憎悪の感情が湧き出てくる。


そんな感情に支配されそうになる。けど、抑える。でも…その感情全てを抑え切れるわけがなく。俺は…。


「先生、この戦いって相手は一人だけなんですか…?」


「普段はそうじゃないんだけど、今回は君達と同じ人数の捕虜しかいないからねー、皆戦えるのは一人ずつかなー。」


「無理を承知で頼みがあります。十二人、全員と戦わせて下さい。お願いします。」


「うーん、僕的には全然良いんだけど、そしたら皆の能力が分からなくなるし、そもそも皆が同意しないと無理だよ?」


その言葉を聞き、俺は…。


「頼む、俺に戦わせてくれ…。」


と言った。


その言葉に全員が頷いた。


「ありがとう…。」


「皆が良いなら、いっか。じゃああっちの残り十一人呼ぶよー。全員出てきてー。」


そう教師が叫んだ瞬間、扉からぞろぞろと悪側の人間が出てきた。


そうして、俺の前に全員が集まり一人の男が叫んだ。


「あのガキに現実見せてやろーぜお前らァ!」


その声に呼応するように男達の雄叫びが空間全体に響く。


次の瞬間、俺は教師に言った。


「俺のこと良く見てて下さい。一瞬で終わらせるので、瞬きしないで下さいね。」


と…。


瞬間、悪側の人間十二人が襲い掛かってきた…


その刹那。俺は言葉を紡いだ。



「能力、涅槃寂静“ねはんじゃくじょう”」



自分より幾分か年下のガキに襲い掛かった瞬間、時が止まったように感じた。瞬間、声が響いた。


「悪いが、これはただの八つ当たりだ。」


と…。


瞬間、俺達の身体は形を留められない程切り刻まれた。



「…先生、ちゃんと、見えましたか…?」


「………柳楽秀君、君は一体何者なんだい?」


「ただのませたクソガキですよ。」



「…陽、あいつの動き見えたか…?」


「いや、私には全く見えませんでした。碧君は見えましたか…?」


「俺も…何も見えなかった。」


…全員、この空間にいた全員が言葉を失っていた。いや、言葉だけじゃない。自分が一番強いという自負、誰にも負けないという自信。


その全てを柳楽秀、ただ一人の圧倒的な実力を前に失ってしまった。


「ご、ごめん。柳楽秀君、一体君の能力はなんなんだい?教えてくれないか?僕には不甲斐ない事に何も見えなかったからさ…。」


「分かりました…。俺の能力は涅槃寂静。概要は……。」



そうして、全員に俺の能力を開示した。


そして俺に続き、全員が自分の能力を開示していった。


柳楽秀、涅槃寂静


葉月陽、諸法無我


涼風碧、諸行無常


一ノ瀬奏“いちのせかなで”、一切皆苦


小鳥遊夏帆“たかなしかほ”、死灰復燃


柊翔“ひいらぎかける”、日進月歩


橘一輝“たちばないつき”、光彩陸離


水樹蓮“みずきれん”、行雲流水


葉隠紅葉“はがくれもみじ”、百花繚乱


四季桜閃“しきおうせん”、虚心坦懐


夢咲馨“ゆめさきかおる”、温故知新


巫桜雅“かんなぎおうが”、付和雷同



「…これが、僕のクラス全員の能力です。この中でも柳楽秀君はかなりの実力者でした。今一番隊長に近いのは彼だと思います…学園長。」








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