第7話 凱旋

2人はアレクシアの故郷

ヴァレンティア王国に帰還した。




勇者アレクシアの生還と

彼女を救ったレオの功績により

小さな王国は凱旋モードで大盛り上がりとなり

彼らを祝福した。




街の人々は道の両脇に集まり

花びらを撒き

歓声を上げながら2人を迎えた。





「アレクシア様!レオ様!お帰りなさい!」


人々の温かい声援が2人に降り注ぎ

アレクシアとレオは手を振りながら笑顔を見せた。




2人の姿は

まさに英雄そのものであった。




国王のマグナス王も玉座の間で2人を迎え

笑顔で祝福の言葉を述べた。






「よくぞ無事に戻った

勇者アレクシア

そして偉大な英雄レオよ



君たちの勇気に

王国全てが感謝している」



アレクシアは頭を下げ

レオも少し照れながら礼をした。




その光景は

人々の心に勇気と希望を与え

王国はしばらくの間

2人の凱旋を祝う歓喜に包まれていた。






2人はしばらく

ヴァレンティア王国に滞在することにした。




マグナス王からそれぞれ

城内の部屋を1室ずつ貸し与えられ

先の戦闘で負った傷を癒すことができた。





静かな城内で過ごす日々は

ダンジョンでの激しい戦闘からは想像もつかないほど穏やかで

アレクシアとレオは少しずつ体力と精神を回復していった。





2人はお互いの無事を噛み締めながら

心穏やかな時間を共有することができた。






数日後、勇者パーティの方では……




アレン王子が


『追放したレオがヴァレンティア王国で讃えられている』



という知らせを聞いた。




アレン王子は不機嫌そうに眉をひそめ


「レオめ、奴隷のくせに生意気だ」



と吐き捨てた。




そして



ヴァレンティア王国のマグナス国王に対して

レオを処刑するよう命じるため




使者チョコマロを送り出すことにした。






使者が王城に到着し

その要求を城の者に伝えると




マグナス王をはじめとする

城内の者たちは動揺を隠せなかった。




アレン王子の言葉は無慈悲で

理不尽な要求であった。




そこに居合わせたレオも

その内容を聞いて呆れ返り

苦笑いを浮かべた。




「アレン王子、本当にしつこい奴だな……」





レオはため息をつきながら

小声でつぶやいた。




その姿に

アレクシアは怒りと共に

何としてもレオを守り抜こうと

強く決意したのだった。






使者チョコマロは

ちょうど城にいたレオと出くわした。




そして

執拗にレオに迫り

その場で切腹するよう強く要求してきた。



「レオよ

奴隷の身でありながら

人々から称賛を受けるとは


身分をわきまえぬ愚行だ

その場で腹を切れ」



チョコマロの言葉には一切の情けはなく

冷酷な命令だった。




レオはその理不尽さに呆れながらも

強い口調で断固として拒否した。






「俺が切腹だって?そんな馬鹿げたこと

誰がするんだ」



レオの毅然とした態度に

チョコマロは苛立ちを隠せず

周囲には緊張感が漂った。




しかし

マグナス王をはじめとする王国の人々は

レオを支持する意志を固めていた。



マグナス王は


「チョコマロ殿よ


レオ殿は偉大な英雄です


人々を魔の手から救ってくださった

お方を処刑するなど

あまりにも理不尽ではありませんか」





見かねたアレクシアは

チョコマロに対して一歩前に出て

毅然とした態度で言った。





「チョコマロ殿

レオ殿は私を救い

国をも救った偉大な存在です。



彼を傷つけることは

このヴァレンティア王国全てへの侮辱に他なりません



どうか

即刻お引き取りください」



アレクシアの言葉には力強い決意が込められており

チョコマロは一瞬言葉を失った。




彼女の気高さと決意に圧倒され

チョコマロは無言でその場を去るしかなかったが

その心中は激しい怒りで満ちていた。





「アレクシア様

勇者パーティの一員であったあなたが

奴隷の味方をするなどとは……

まったく落魄れたものだ!」



チョコマロはそう言い捨て

怒りを隠さずに城を出ていった。




周囲の人々は安堵の表情を浮かべ

レオはアレクシアに感謝の気持ちを込めて微笑みを向けた。




「ありがとう、アレクシア様

それに皆様……


おかげで助かりました」



アレクシアは微笑みながら首を振った。




「当然のことです

レオ殿


あなたのためなら

何だってします」



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