第6話 幼馴染の思い

ルシファリアを倒した後

レオとアレクシアはダンジョンの洞窟を

引き返すことにした。





ダンジョンの帰り道、二人は並んで歩いていた。


レオはふとアレクシアに目を向け

その美しさに思わず息を呑んだ。



アレクシアを間近で見ると

肌は透き通るように白く

唇は柔らかそうで

本当に美人だと改めて感じた。




普段は勇者として

冷徹に振る舞うアレクシアだが



こうして

レオと2人だけの時は



安心しきっている姿を見せ

どこか愛おしく

レオの胸に特別な感情を抱かせた。




ダンジョンを抜けるには2日ほどかかると分かっていたが

共に歩く道のりは

何となく以前よりも短く感じられた。




特にアレクシアにとって

片思いだったレオと一緒に過ごす時間は久しぶりであり

とても特別なものだった。



普段のアレクシアは女勇者として

異性に対しても揺るぎない貞節を守り

その心は任務と使命に捧げられている。



しかし

レオと接する時だけは

うっとりとした表情を浮かべ

時には甘えるような仕草を見せるのだった。




「レオ殿……あなたは私のヒーローなんです


それに昔のように

私のことは呼び捨てで構いませんよ


丁寧語なんていらないです」



アレクシアが優しい微笑みを浮かべながら言った。




その言葉には真心がこもっており

レオは一瞬言葉を失った。






「俺は……奴隷の身分で

あなたは王族ですから

そうもいかないんです」


レオは苦笑いしながら答えた。




その言葉に

アレクシアは少し寂しそうな表情を浮かべたが

すぐにまた微笑みを浮かべて言った。






「誰がレオ殿を奴隷にしてしまったのですか?」


アレクシアが真剣な表情で問いかけた。




レオは苦笑いを浮かべながら

静かに答えた。






「俺の父が

子供の頃のアレン王子に

国民を不当に逮捕して牢屋に

入れてはいけないって注意したんだ



それで

アレン王子が『平民のくせに生意気だ』って

怒りを買ってしまって……


父だけじゃなくて

うちの家族全員が平民から奴隷にされてしまったんだ


それで

生まれてきた俺も

当然のように奴隷って……」




アレクシアはその話に驚愕し

次第に顔に怒りが浮かんできた。




「アレン王子のそんな蛮行……許せない……」



アレクシアの言葉には明確な怒りが込められており

レオはその怒りに触れて一瞬驚いたが

すぐに微笑みを浮かべた。





「ありがとう

アレクシア様


でも

俺はもう大丈夫です


今こうしてあなたと一緒にいることができる

それだけで十分です」



アレクシアは納得できない表情を浮かべながらも


「うーん

まあ、細かな問題は後で考えるとして

今は2人だけの時間を楽しみましょう


本当に……今はレオ殿がそばにいてくれるだけで

私はとても安心できます」




レオはその言葉に胸が温かくなり

アレクシアへの思いがますます強くなっていくのを感じた。






「レオ殿……あの

もし良ければ

子供の時みたいに……

手を繋いで歩いてもいいですか?」




レオは一瞬驚いた表情を見せたが

少し照れくさそうにしながらも

すぐに優しい笑顔を浮かべた。






「もちろんです、アレクシア様」



その言葉に

アレクシアの顔は少し赤くなったが

心の底から嬉しそうな表情を浮かべた。




そして

アレクシアはそっと手を差し出し

レオの手と重ねた。




その瞬間

二人の間にはかつての幼馴染の絆が

再び強く結ばれたかのような温かな感覚が広がった。






レオは

昔のように手を繋ぐと言っても

成長したアレクシアと手を繋ぐというのは

さすがに緊張が半端なかった。




子供の頃の無邪気さとは違い

アレクシアの手の温もりや

柔らかな感触が直接伝わってくるたびに

どうしても意識してしまう。




顔に熱がこもり

心臓が鼓動を速めていくのを感じていた。






「レオ殿

少し緊張していませんか?」


アレクシアがふと問いかけた。




その無邪気な問いに

レオは思わず言葉に詰まった。




「え、いや……そんなことは……」



レオがなんとか誤魔化そうとするが

その表情は赤く染まっている。




アレクシアはそれを見て微笑み

少し悪戯っぽく首を傾げた。




「ふふっ

やっぱりレオ殿も緊張しているんですね



でも……私

こうしていると安心できるんです」




その言葉に

レオは胸の中が温かくなるのを感じ

アレクシアの手を握る力を少し強くした。






「俺もです

アレクシア様


あなたを守るためなら

どんな困難も乗り越えてみせます」



その言葉を聞いた

アレクシアはますます

レオに惹かれていく。



手を繋ぐだけだったが

次第にアレクシアは

レオの手を両腕で掴んで

さらにベッタリとくっつくように

幸せそうに歩いていた。




レオはその様子に少し驚きながらも

アレクシアの温もりを感じて思わず顔が赤くなっていった。






レオは

自分の手がアレクシアの柔らかい胸に押し込まれたり

綺麗な脚の肌に自分の足が触れたりして

次第に少し情欲のようなものを感じざるを得なかった。






レオはアレクシアに


「俺が『奴隷』という身分なのに

王族であるあなたが


子供の頃から一緒にいてくれて

本当にありがとうございます」



と照れながら言った。




アレクシアは首を振り

笑顔で言った。




「何を言っているのですか

レオ殿


身分なんて関係ないです


あなたは私にとって特別な存在です」



その後も二人は

昔の思い出話に花を咲かせたり

勇者パーティでの近況を話し合ったりしながら

楽しそうに歩き続けた。




アレクシアは笑顔で

子供の頃の冒険ごっこや

二人で隠れ家を作った日のことを懐かしむように話し

レオもまた

その無邪気な日々を思い出して心が温かくなった。



「本当に懐かしいですね

アレクシア様


あの頃は何も怖いものなんてなかった気がしますよ」



「ええ

そうですね


でも今だって

レオ殿がいてくれるから

怖いものなんてありませんよ」



アレクシアのその言葉に

レオは顔を赤くしながらも微笑み返した。




二人の間には穏やかで幸福な空気が流れ

手を繋いだまま

お互いの存在を確かめるように歩き続けた。






こうして

ダンジョンからの道のりは長くとも

二人の心は満たされ

ラブラブな雰囲気のまま無事に帰還することができた。




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