第12話 国王陛下へのヒアリング

「今日は、国王陛下に謁見しに伺うぞ!」


「あ、固有魔法について聞きにいくんだっけ? 王サマ、王妃サマと王子サマの固有魔法教えてくれるかな?」


 ぱしりとあたしの頭を叩きながら、お父様パパは言った。



「どうしてそんなに、王子殿下と王妃殿下の固有魔法を知りたがる?! わが家を破滅させる機会を狙っているのか!?」


「え、単なる興味関心? 王子サマはあくどいの持ってそう」



 ついにお母様ママに、手に持っていた扇子でぱしんとされた。お母様ママには、叩かれたことなかったのに……!




 お父様パパが怖い顔で後ろに腕を組みながら、いつものように大声で言った。






「いいか。お父様との約束だ。復唱!」






「決められたセリフ以外、話さない!」


「決められたセリフ以外、話さない!」


「振る舞いはお淑やかに!」


「振る舞いはお淑やかに!」


「微笑みを絶やさない!」


「微笑みを絶やさない!」


「王子殿下と王妃殿下の固有魔法は?」


「悪どいやつ!」


「ミシェルちゃん……?」


「ひっ!?」 


 お母様ママの手元で扇子がゆらりと揺れた。あれ結構痛かったから、大人しくしとこっと。







決められた台詞


「わたくし、スターナー伯爵家が長女、ミシェルと申しますわ」

「よろしくお願いいたします」

「また、両親に相談してお返事いたします」

「ありがとうございます」

「まぁ」(困った顔)

「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)

「申し訳ございません」(真剣な顔)

「幼い頃から心に決めた方がおりますの」(愛しい人を思い浮かべる顔)

「光栄でございます」

「謹んでお受けいたします」

「お父様。お願いしますわ」














「よく参ったな。ミシェル嬢にスターナー伯爵」


「スターナー伯爵家当主としてご挨拶申し上げます。本日はお忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございます」


「ありがとうございます」


 あたしの決められた台詞じゃ、まともな挨拶できないからここで乗っかっておく。


「いやいや、こちらこそ依頼している件があるからな。その件できたのだろう?」


(相変わらず偉そうなジジイだな)


(阿呆娘!? 相変わらず不敬な美少女だな)


(へいへい。お褒めに預かり光栄でーすっ)


 お父様パパとの高度な心理戦を交わしつつ、王サマの話を聞く。あたしまじ優秀。そう思いながら、神妙な面持ちでお父様パパを見る。



「いくつか、お教えいただきたいことがございまして……」


「なんだ? わかる範囲で教えてやろう」



(相変わらず上からすぎない? あたし、これだから王族って苦手)


(だから! もういい。ツッコミは疲れた。もう突っ込まないからな!)


(え、なにそれ。まじつまらんやつ。お父様パパの存在意義皆無じゃん。うける)


(ウケない!!! お父様の存在意義ってツッコミだけなのか!???)


 若干涙目になったお父様パパお母様ママが励ましている。まじで器用。





「ありがとうございます」


 礼だけは言っておくか。

 つられてお母様ママが感謝を示す。


「ご高配に感謝いたしますわ」


「陛下のご配慮、ありがとうございます。早速なのですが、お話を聞かせてもらった皆様が、国に登録している固有魔法を教えていただけると、調査している件が進む可能性がございまして……閲覧許可をいただけますでしょうか?」


「そうだな。本来の閲覧許可は宰相が出すものだが、この件について、宰相には今別件で動いてもらっている。代わりに国王である私が許可を出そう」


「ありがとうございます」


 お父様パパがお礼を言うのに合わせて、カーテシーをしておく。



(よっしゃ。王サマのおっさんにはもう用はない!! 閲覧室で個人情報漁りまくるぞ!)


「ミシェルちゃん?」


 さっさととんずらしようとしたら、お母様ママに肩を押さえられた。


(お淑やかに、ゆったりと、お母様と一緒に退出しましょうね?)


(ひ、ひぇぇぇぇ)

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