第13話 固有魔法の閲覧①
「たのっしみなー♪ 固有魔法ー♪」
固有魔法を閲覧するための固有魔法リスト保管室に向かう道中、あたしが美声を披露していると、
「ミシェル! 確かに今は周囲に人はいないが、家の外でのルールを忘れてないか!?」
やっべ! そうだった! 忘れてた! ただ、だだっ広い廊下って歌いたくなるものだよね?
「まぁ」(困った顔)
「申し訳ございません」(真剣な顔)
慌てて
「ここが固有魔法リスト保管室か……」
(え、
(ないに決まってる! 特別な許可がないと本当に入れない場所だぞ!)
(
視線を向けると、
中に一歩立ち入り、よくよく見てみると、一冊一冊に鍵がかかっていて、本棚から取り出せそうにない。
(なにここ……どんな魔法を使っているのか想像もつかないじゃん)
(ここは失われた古代魔法の遺跡を使っているとされている。現代の我々には、想像もできない技術だ)
(確かに、感じる魔力が知らないものな気がする! どちらかというと、自然界にありそうな感じ……?)
(お、お前は古代魔法の魔力まで感じることができるのか!? そうか……強大な魔力を持っているからか。我々には想像のできない世界だな)
しみじみと頷く
(え、これって解明して世界に発表したら、あたし大金持ちになれるんじゃね?)
(……ミシェル。王家に取り込まれたくないのなら、他言無用だ。古代魔法の解明は現代に生きる我々の悲願ではあるが、実現したらその影響は計り知れない。ミシェルは確実に王家に取り込まれるし、むしろ他国から刺客が放たれかねないぞ)
(うわ。めんどい。やめておく。……もしも解明して王サマに教えろって王命だされたら?)
(隠せ! 王命には逆らえない。だが、解明したことがバレなければ、問題がない。我が家の方針は、長いものに巻かれ、不要な権力は避け、平穏に生き抜くことだ。ミシェルがそんな面倒ごとに巻き込まれたら、お父様もお母様もさすがにかばえぬからな!)
(おっけー! じゃあ、古代魔法は基本解明しない方針で、解明したとしても公表しないってことで! 早速容疑者たちの固有魔法をのぞき見していこうぜ!)
(……まったく、ミシェルは。そうだな、今は我が家の存続のためにも固有魔法の確認が優先だ)
そういって、
一枚の紙しか綴られていないため、とても薄いそれは、分厚い表紙に魔法がかかっているようだった。
(……記録、魔法?)
(さすがミシェルだな。正確には、真実を記録する魔法だ。この国の貴族・王族として登録されたときにこの本に一滴の血を垂らす)
(……そんなことした記憶ないけど)
(基本的には産まれてすぐに行うものだからな。それこそ、側妃様のように他国から我が国に入った人は大人になってからだが)
しみじみとその本を見つめると、表紙の真ん中にある鏡のような丸い模様が揺れているようだった。
(あ、もしかして、ここに血を垂らすの?)
(そうだ。そうすることで、この国の貴族として登録されるし、固有魔法の確認がとれる。登録したこの本は、その人がなくなってもここに保存されている。ほら、本棚の上のほうわ見てみろ)
(……これも魔法? まるで大木のようだね)
(そうだ。大木というのは、言い得て妙だな。人が生まれて登録されるにつれ、高く伸びていく)
そう答えながら、
「側妃様の固有魔法は……入れ替わりの魔法か。いきなり珍しい魔法が出てきたな。これを知って、我々が無事でいられるか不安になるな……」
入れ替わりの魔法……魔法執行者と被対象者の位置が入れ替わる。その説明は簡潔で、それ以上書かれていなかった。
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