第11話 お父様とお母様との話し合い②

「側妃様のことはさておき、事件当時の皆様の居場所がわかったのなら……あとは、固有魔法を教えてもらえると助かりますね」


「側妃様に大臣に公爵様か……さすがに国の大御所すぎて、話題には聞かぬな。陛下に頼んで調べておこう」


「はいはいはいはーい! あと、あの王子サマと王妃サマの固有魔法も知りたい!」


「馬鹿娘! 王族の固有魔法が、必要もないのにほいほいと公開されるはずないだろう!」


 お父様パパに頭を叩かれ、あたしはべーって舌を出した。


 お母様ママは優雅に紅茶を飲み、ニコリと微笑んだ。


「ところで、ピンクメイドに関して、確認したいことが三点あるのですが、一点目に実行犯とされるピンクメイドが話していた黒い瞳、という黒幕……皆様の瞳の色は黒だったと記憶しておりますが、合っていますか? 次に、黒真珠のアクセサリーはどなたがつけていらっしゃいましたか? 最後に、ピンクメイドは手に怪我をしていましたか?」


「はいはいはい! あたしが答える!! ピンク頭は、事件当時、手は血だらけだったけど、怪我はしてないよ! あたしの明晰な頭脳がちゃんと記憶してる! まじ卍」


 ふふん。牢獄でピンク頭と話した時、健康状態を確認しておいたんだよねー。

 お母様ママは感心した目であたしを見てるし、お父様パパは驚いた顔であたしを見てる。ん? 驚いた顔? 失礼な!


「黒真珠のアクセサリーは全員がつけていて、ピンクメイドはネックレス、側妃様は腕輪、大臣は指輪、最後に公爵様はアンクレットだったぞ。皆様、大切な方にもらったようなことをおっしゃっていた」


 あたしの活躍に嫉妬したのか、お父様パパが意気揚々と語った。自慢の髪がふさんふさんと跳ねている。キモ。


「ミシェル! お父様にあんまりキモいキモいって言うな! お父様、悲しい」


(きも)


「ミシェルがお父様をいじめるー!」


 お父様パパの泣いた真似を軽くいなして、お母様ママが進めた。


「ピンクメイドが首、側妃様が腕、大臣が指、公爵様が足……。では、皆様の瞳について確認してきていただきますか?」




「あ、黒真珠といえば、そういえば王冠のど真ん中にもくそでかい黒真珠がついているよね! あれ、まじで趣味悪い」


 お母様ママが話を終えようとしていたが、思いついたことが思わず口から飛び出しちゃった。


「そんなの、今は関係ないだろ」


 お父様パパにそう言い放たれ、お母様ママが付け加えた。やっぱみんな、あれ悪趣味だと思うよねー。わかるー。




「そうでした。皆様の中で、手を怪我していたお方はいらっしゃいましたか?」


「いなかったと思うぞ」


 お父様パパの言葉にあたしも納得する。


「特に怪我している人とかいなかった。まぁ側妃サマが手をさすってたかなぁくらい!」


「わかりました。例えば、側妃サマが治癒魔法を使っていたら、宮廷治癒師たちが記録していますね。他の方たちについても、治癒師を呼んでいれば、どこかに証拠は残っているでしょう。あと、容疑者の皆様と被害者の人間関係について、しっかりと確認し直しましょう」


「はーい!」




 あたしのご機嫌なお返事で、お話し合いは散会となった。



「さ、飯めし〜」


「ミシェル様。後ほどお部屋におつまみセレクションをお待ちいたします」


 ムハルトが有能すぎてまじこわい。


「ありがとう! さすができる男! ジュースも頼んだぞ!」


 ん? 酒? あたしまだ未成年だから、お父様パパお母様ママが許してくんねーんだよね。


「かしこまりました。ぶどうジュースでよろしいでしょうか?」


「ぶほっ!」


 屁で了承の意を伝えると、ムハルトは鼻をヒクヒクさせながら頭を下げた。……え、あたしの屁、吸ってた? あたしの屁を吸いたいくらいあたしに惚れてんの? え? 大丈夫? まじウケる。

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