第4話 王家からのお呼び出し
「ミシェル! 王家からお礼の手紙と登城命令が下った!」
「ミシェルちゃんの功績を考えれば、今回のことは仕方ないわね」
「え、お礼言うのに呼び出してくんの? まじ上からじゃんね?」
「阿呆娘! 相手は王族だぞ! ありがたく城に登れ!!!」
「痛い、痛いって!
「ミシェルちゃん?」
心を読んだかというタイミングで、淑女のほほえみを浮かべた
「いいか。お父様との約束だ。復唱!」
「決められたセリフ以外、話さない!」
「決められたセリフ以外、話さない!」
「振る舞いはお淑やかに!」
「振る舞いはお淑やかに!」
「微笑みを絶やさない!」
「微笑みを絶やさない!」
「最後にお願いだから、王族に無礼をはたらかないこと!」
「国王サマにお礼をおねだりする!」
決められた台詞
「わたくし、スターナー伯爵家が長女、ミシェルと申しますわ」
「よろしくお願いいたします」
「また、両親に相談してお返事いたします」
「ありがとうございます」
「まぁ」(困った顔)
「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)
「申し訳ございません」(真剣な顔)
「幼い頃から心に決めた方がおりますの」(愛しい人を思い浮かべる顔)
new! 「光栄でございます」
new! 「謹んでお受けいたします」
「スターナー伯爵家一同、ご命令に従い登城いたしました」
「先日は、王妃を救ってくれてありがとう。ミシェル嬢」
まだ回復しきっていないようで王妃サマは席を外している。国王サマが満面の笑みで言葉をつづけた。
「息子の将来の嫁がこんなにも素晴らしい女性で感動したぞ」
「まぁ」(困った顔)
あたしはその顔のまま、王子サマを見る。王子サマは焦ったように目をそらした。
(え、きもい。あの王子サマ、あたしに振られたことをまだ報告していないの? 有耶無耶にして婚約に持ち込もうとしてるんじゃね? まじ無理)
(不敬! お前の表情が不敬だ! 馬鹿娘!)
(ミシェルちゃん? 少し静かにしていなさい?)
(ひぇ! イエス、マム!)
「その、父上……。ミシェル嬢には領地に想い人がいるようでして」
「申し訳ございませんが、わたくし……」(悲痛な顔)
「幼い頃から心に決めた方がおりますの」(愛しい人を思い浮かべる顔)
家畜の芸のように、決められたセリフをハイスピードで披露したあたしの様子に、若干国王サマが引いた様子を見せる。
「しかし、我が国の王宮治療師を超える治癒魔法の使い手となると……王家に取り込まぬわけにはいかないからなぁ……もしかして、ミシェル嬢は聖女かなにかじゃないだろうか?」
「我が娘が聖女? ははっ、ありえません。国王陛下。これは単なる頭がいい人間……人間か? いや、人間のはずです。はい、優秀な人材なだけであって、聖女のような高尚なお方なはずはありえません」
「ええ。国王陛下。母であるわたくしも宣言いたしますわ。神がこの子を聖女とするなど天地がひっくり返ってもあり得ませんわ」
壊れたように、ありえないありえないと繰り返す
「父上。聖女判定の儀は後日にして、今回はあの件をお話しするべきでしょう」
「そうであった。中立派のスターナー伯爵家のミシェル嬢ならば、どの派閥にも取り込まれていないからな。王妃を殺害しようとした犯人を捜してほしいのだ。魔法的な力も強いようだし、あの場で冷静に周囲を観察し実行犯をとらえた優秀なミシェル嬢ならば容易であろう」
「申し訳ございませんが、わたくし」(悲痛な顔)
「勝手に断るな! というか、断れると思うな!」
(え、なんで。王家に関わるなって言ったし、上から集団と関わりたくないんだけど)
「王命と同義なのに、貴族の端切れのお前が断ろうとするな!」
あたしの頭を
「……スターナー伯爵のキャラが、ちょっと思っていた人物像と違うんだけど、早まったかな?」
「きっと父上の判断に間違いはないと信じております」
「陛下。我が愚娘が大変失礼いたしました」
「光栄でございます」
「謹んでお受けいたします」
(まじ遺憾だけどね)
(阿呆娘! 表情を整えろ!)
「ミシェル嬢、お礼のほうだが」
「光栄でございます」
「謹んでお受けいたします」
「せめて内容を聞いてから、もっと遠慮がちに返事をしろ! 馬鹿娘!」
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