第3話 婚約打診お断り作戦!その2

 会場に入ると、バラバラに入場するあたしと王子サマの姿に不思議そうな顔を浮かべる人たちがいた。ははーん! さっき、あたしがこっぴどく王子サマを振ったのを見てなかったんだな?


(残念ー! そこの鼻血男はこっぴどく振りましたー⭐︎)


(黙れ、アホ娘)


(ミシェルちゃん?)


(ごめんなさい! お母様ママ! お仕置きだけはご勘弁を!)


「どうした? なぜミシェル嬢をエスコートしていないのだ」


「「あ、」」


(国王陛下が傷口に塩を塗り込みまくった!)


「……父上。ミシェル嬢には、その、あの、」





「うっ!」


 王子サマがあたしにこっぴどく振られたと言いよどんでいると、突然、王妃サマが胸を押さえて苦しみ出した。王妃サマが手に持っていたワイングラスは床に落ち、無惨に割れる。


(え、なにこれ。死ぬの?)


(だから、愚娘!)


お父様パパ、あたし見てくる!)


 苦しむ王妃サマにあたしは駆け寄る。そんなあたしの横をピンクい頭のメイドが反対方向に走って行った。今、王妃サマに駆け寄るべきタイミングなのに、逃げるように去っていくなんて……気になるけど、それどころじゃない。


(毒……? それにしてはの中に、症状が該当する毒物がない……まさか)


「申し訳ございません」(真剣な顔)


 王妃サマの胸元を押さえる手をどけると、そこにはガラス片が突き刺さっていた。



「うわぁぁぁ! 王妃陛下が刺されたぞ!」


 顔を真っ青にして、こちらを指差しながら大臣が騒ぐ。それを聞いた人々はパニックに陥った。


お父様パパ、ピンク頭のメイド、捕まえといて! あと、宮廷治療師を連れてきて!)


「誰か、宮廷治療師を早く連れてこい!」


 そう叫んだお父様パパは、近衛騎士に声をかけ、ピンク頭のメイドを探しに行くように指示を出した。




「な、なんでしょうか……って王妃陛下!!!」


 連れてこられた宮廷治療師は、あたしの膝枕で倒れている王妃サマの姿を見て、慌てて駆け寄る。


「まず、ガラス片を抜いて、治癒魔法をかけます!」


 そう叫んで、そーっと治癒魔法をかける。治癒の速度よりも王妃サマから溢れ出る血の速度の方が早く見える。


「くっ! これでは……!」


 あたしは治癒魔法をじっくりと観察する。



「申し訳ございません」(真剣な顔)


 そう言って、宮廷治療師をそっと押してスペースを開けさせる。


(おい! 馬鹿娘! 治療師の邪魔をするな!)


(うっさい! お父様パパ! これならあたしにもできる!)


 そう言って、あたしが王妃サマの胸元に手をかざすと、宮廷治療師の代わりに治癒魔法を使った。



「そんな……まさか。この私を超える治癒力を持っているお方がこの世にいるなんて……」


「なんて素晴らしい……」

「治癒魔法の使い手でもいらっしゃるなんて……」


 呆然とする宮廷治療師と会場の皆サマを横目に、王妃サマを治療する。ついでに、ガラス片がどこかに残っていないかスキャン魔法をかける。あ、これ? 今、開発した!


(おい! ミシェル! 見たことのない魔法を使っているように見えるぞ!)


お父様パパ。だって、今作った魔法だもん)


 ちらっとお父様パパお母様ママの姿を見ると、いつも通りお母様ママは立ったまま気を失っていた。相変わらず器用〜。


(ところで、お父様パパ、ピンク頭捕まえた?)


(ああ。手が血に染まっていたそうで、今事情聴取を受けていると聞いたぞ)


(あくまで駒だと思うから、黒幕をしっかりと探しておいてよ?)



「うっ!」


 王妃サマが目を覚ました。あたしは王妃サマに微笑みを向ける。


「まぁ、天使様が微笑んでいらっしゃるわ……ここはきっと天国ね」


「王妃! 無事でよかった!」

「母上!」


 集まってきた王族たちを横目に、あたしはお父様パパお母様ママの元へ戻る。


(……ドレスが汚れちゃった)


「よくやった、よくやった、ミシェル!」


(……浄化魔法)


(おい、さりげなく浄化魔法で服を綺麗にするな!)


(あ、だって嫌じゃない? 他人の血がついたままの服なんて)


(それは……確かに……)

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