第3話 巨大化の悪夢

「やめてっ!パルマに手を出さないで!」


「エイ、ナ……」


 ピュークとかいうドスケベ淫乱女魔族がパルマを拘束している。パルマも私もボロボロで、服が破れて至る所から肌が露出していた。私は3人を高い位置から見下ろしている。


「魔法も使えない役立たずはそこでルックしていなさい、ノーラザー、ウォッチかしら?今からこの子で実験してあげる」


 変態痴女はポーチから瓶を取り出した、何をするつもりだ。


「い、や……」


「パルマに何をするつもり!」


「このドラッグは、あなた達も一度見たことがあるシュドゥビィ。振りかけたものをビックサイズにするの。これをこの子のアヌスにペインティング!」


「いやぁぁぁぁ!!それだけは!それだけはやめて!代わりに私を!私に使ってくれていいから!」


「エイナル、逃げて……」


 なんて酷いことを考えるんだ!鬼畜め!斬り殺してやる!


 しかし私の体は動かない。宙に浮いたままだ。それに腰に差しているはずの剣も無くなっている。


 手も足も出ない状況で、ガバガバ道連れ変態鬼畜痴女は続けて話す。


「さあ、フィッティングルームは無いけれどテイクオフしましょうね、あら、随分キュートで小さな狭いホールね、さぞかしお通じも悪いでしょう。オールライト、心配しないで、今日からユーもブレイクスルー、今までの辛い日々からのリフトオフ!エブリデイがワンダフル!さあ、ほじほじするわよ」


 そう言って手袋をはめて薬を塗りたくる。中指を一本立て、ゆっくりとパルマのお尻に近づける。


「やめてえええ!お願い!なんでもする!なんでもするから!!ああああああああああああああああっっっっっ!!!!」


 いやあああああああああああああっっっ!!!!


「ぁあ、はぁ、はぁ……夢、だったの?」


 私はベッドの上にいた。大量の汗をかいて寒気がする。隣に寝ていたパルマが起き出した。


「エイナル、どうしたの?大丈夫?」


 パルマが心配そうな声色で話しかけてきた。髪を撫でられる。パルマに変わった様子はない。服も綺麗だし怪我もしていない。良かった、夢だった。酷い悪夢だ。あの女の手でパルマがガバガバにされるなんて、これ以上の地獄があるだろうか。


「だい、じょうぶよ。少し悪い夢を見ただけ、ごめんね、起こしちゃって、大丈夫、大丈夫だから……」


 しかし私はその夜、まともに寝付くことが出来なかった。あまりにも絶望的な夢を見てしまって、いつまで経っても心臓の動悸がおさまらなかった。明け方近くになってようやく眠気がやってきたけれど、今日も馬車は朝早くに出発するため、眠気に耐えながら身支度をする羽目になった。


 馬車に揺られながら、私はどうにも眠くなってしまって、隣に座っているパルマに寄りかかった。良い匂いがする。


「……ごめん、どうしても眠くて……」


「いいよ、ゆっくり眠って。おやすみ、エイナル」


 私はそのまま眠りに落ちた。




 ⬛︎




「エイナル、着いたよ、起きて」


『起きなよ。もうみんな馬車から降りたよ』


「……おはようパルマ、サナ」


 随分と長い間眠ってしまっていたようだ。時計を確認すると、なんと5時間も経っていた。街と街の間を移動する間、ずっと眠ってしまっていたようだ。


「ごめんねパルマ。ずっと寄りかかっちゃった。迷惑だったでしょ?」


 パルマがかぶりを振って否定する。


「エイナル可愛かった。赤ちゃんみたいにすやすやしてた」


 恥ずかしい。寝顔を観察されていたようだ。涎垂らしてなければ良いんだけど大丈夫かな。思わず袖で口を拭う。


『よっぽど疲れていたんだね、昨夜は眠れなかったみたいだし』


 サナが余計なことを言ってくれた。


「眠れなかったの?なんで?」


 パルマが首を傾ける。心配させたくなかったのに、不安にさせてしまったようだ。


「夢見が悪くてね。でもパルマのおかげでよく眠れたわ。今夜はゆっくり休むから大丈夫よ」


 パルマの可愛らしい顔を見ながら眠れば、きっと良い夢が見られるはずだ。


 私たちは馬車を降りて今日の宿を探しに向かった。




 ⬛︎




 剣を振り上げ、斬りかかる。ガバガバ尻穴女がナイフで軽々と防ぐ。まるで子供をあしらうように。


 変わった形状のナイフだ。みねの所が細長く肉抜きされ穴が空いている。


 左下から右上に剣を切り上げる。腰を反ってギリギリで避けられた。避ける気をすればもっと楽に避けられるだろうに。わざとギリギリで避けて私をおちょくっている。


 解体用のナイフを投げる。女がナイフで投げたナイフを弾く。その隙をついて私は斬りかかった。


 ザクッ。


 わたしのおなかにナイフが刺さった。なぜ、一体、どうやって。


 ドクドクと血が流れる。痛い、熱い。がむしゃらに剣を振る。


 振った剣が女のナイフに絡め取られる。あの細長い穴を使って。パキンと音が鳴り、細剣が折られた。私は痛むおなかを押さえて膝をつく。


『エ、イナ、ごめん、まほ……』


 ナイフはおなかに刺さったままだ。


 サナの声が聞こえなくなった。代わりにあの女が喋り出した。


「ノーマジックな上に剣もまともに使えないなんて、どうしてユーがブレイブメン?」


 うる、さい。パルマを、サナを返せ……。


「あの子も可哀想に。こんな弱い勇者のためにあんな目にあうなんて、あれを見なさい」


 女が指を差した方に、パルマがいた。十字の杭に磔にされ、服を剥かれ、下着だけの姿にされている。意識は無いようだ、目を閉じている。周りには魔族らしい女が2人、それぞれ注射器のような物を持っている。


「パルマ……」


「ユー達はスモールブレストをビッグサイズにしたいんでしょう?だから願いを叶えてあげるわ、バット、ワンポイントオンリーよ」


 何をふざけた……クソッ、血が……。


「ニップルオンリービッグサイズにしてあげる。良かったわね、貴方の嫁は貴方が望んだ姿になるのよ。ああ安心して、乳輪はそのままにしてあげる。私はオーガと違って優しいのよ」


「や、やめ……」


「ドントストップ!全てはユーがストロングじゃないのが悪いのよ。恨むならユアセルフ!」


「だ、れか助け……」


「ノー!ドゥイットユアセルフ!人に頼ってはいけないわ。さあやりなさい!」


 女がパチンと指を鳴らした。注射器がパルマの胸に当てがわれる。


 やめろおおおおおおおおおぁぁあああああああああっっっっ!!!


 ……私が、私が弱いから。サナが、パルマが。


 また、守れなかった……。




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