第35話 ピューク大芝 魔族 B92W60H85

 翼と角の生えたエロい巨乳の女がパンツ丸見えで空を飛んでいる。エロい女は偉そうに私たちを見下しながら言う。


「勇者候補っていう割には全然ストロングじゃなさそうね、期待して損しちゃったわ」


 見た目は人間に似ているけれど、翼や角の存在がそうではないことを示している。よく見たら尻尾みたいなのがお尻の辺りから伸びている。人語を喋る魔物か?


「何あいつ?」


「エイナル、あれは魔族。人類の敵で魔王の配下」


「魔王?魔王って今はもういないでしょ?」


「いないけど、魔族は魔王の命に従って、500年経った今でも人類に敵対している。注意して。勇者候補を狙って襲撃してきたのかも」


『そういうことなら、私はしばらく手の内を隠しておくね。意識のある生き物ならASMRが有効だろうしネタを考えておくよ』


 サナの存在は知られていない方がいざという時に役にたつ。私はおなかをさすって了承を伝えた。


 まずは相手の出方を見よう。こちらに対して敵対の意思があるのかどうか、そして目的だ。


「あんた何様よ、なんのつもりでここにきたのよ、キャラ被ってんのよ降りてきなさいよ」


「キャラ被り?なんのことかしら、人間は私たちにはアンダースタンディングできないワードを使うから困っちゃうわ。」


『ぶっ!異世界でルー語を聞くことになるとは夢にも思わなかったよ、まさにエキサイティングだね!エイナ、まずいよ、あっちの方がキャラがストロングだよ!』


 なんかよく分からないけど負けた気がする。気に食わない。なぜだかサナにまで馬鹿にされているような気がする。ストロングって何よ?


「いいから答えなさいよ、なんのつもりでここに来たの!?」


 イライラしながらも、エロ女にもう一度問い返す。


『インテリジェンスじゃないモンキーにこのピューク様が教えてあげるわ。ただ通りがかったオンリーで暇プレス、つまりキリングタイムね』


 だめだ、理解できない。これは私がモンキーでインテリジェンスじゃないからか。それともあいつがノットモンキーでノットインテリジェンスだからか。あれ、ノットってどっから出てきた?もうよく分からない。頭がどうにかしてしまいそうだ。


『くくく、おなか痛い。勘弁して』


「……惑わされてはいけない。あれはサナと同じ手合い」


『ちょっとパルマ!一緒にしないでよ!』


 確かにパルマの言う通りだ。現にサナはさっきから笑ってばかりいるし、パルマと軽い口論になっている。私もサナに先ほどイラついた。既に先制攻撃を受けてしまったようだ。これはまずい。


 しかしこちらから明確な攻撃をするのはまだ早い気がする。相手の目的も戦力も見えていない状態ではなす術がないし、何よりあいつは空を飛んでいる。パルマはともかく私はこのままでは戦力になれない。


 私が戦況を見定めていると、今度はあちらの方から話を振ってきた。


「今から勇者候補のユーたちに私がテストをプレゼントフォーユーしてあげるわ。これが何かアンダースタンディング出来るかしら?」


 そう言うとピュークと名乗ったエロい巨乳女は瓶を取り出した。なんだアレは?


「これはね、振り掛けた物を大きくするドラッグよ。これをユーズすればどんなものもビッグサイズ、大きくなるのよ、今からこれを……」


「それを渡す。エイナルの胸を大きくする。早く。プレゼントして」


 パルマが意味の分からないことを言っている。え、胸を大きくする?


「パルマ……何言ってるの?」


「エイナルは黙ってて。あれを使えばエイナルの胸大きくなる。必要」


「な、何言ってんのよ!私よりパルマの方が小さいじゃない!必要なのはパルマの方でしょ!ちょっと!!ピュークとか言ったわねあんた、それを使えばあんたくらい胸がでかくなるの!?」


「何を言っているの?これはそんなことのためにユーズする物じゃないわよ、これはかのビッグネームな錬金術師が……」


「「いいから教えて!」」


「……出来るわよ、レギュレーションをセーヴィングすれば。でも……」


「ならパルマに使うべきよ。そもそも私は竿役、ヒロインはパルマ!パルマは私の子を産むんでしょ!」


「男とか女とかは関係ない。私はエイナルの胸を大きくしてそれに包まれたい」


「じゃあ私だってそうよ、大きな胸のパルマで胸枕したいわ!」


「エイナルは今の私じゃ不満?そう、そうなんだ……悲しい」


「その返しはずるいわよ、パルマだって今の私に不満があるからそう言うことを言ってるんでしょうが!生まれてくるサナだって父親の胸より母親の胸が大きい方が良いに決まっているわ!」


『くく、もう、もうやめて、おなか痛い』


「いい加減にしてっ!これはユーたちにテストをプレゼントフォーユーする物であってプレゼントはしないの!プレゼントするのはテストよ!テスト!今から披露してあげるわ、カミングスケルトン!!」


 巨乳スケベ女が指を鳴らした瞬間、足元に1体のスケルトンが現れた。女は宙に浮いたまま、現れたスケルトンに瓶に入った液体を振り掛けた。


「「ああ!薬が!」」


 せっかくの薬が!巨乳のパルマの胸に挟まれながら眠るドリームタイムが!


 薬を振りかけられたスケルトンから白い煙がモクモクと立ち昇る。室内が煙で満ちていく。当然スケルトンの真上は煙だらけで全く見えない。


「ゲホ、ゲホッ!今日はこの辺でけほっ、お暇するわ。ユーたちのラックがストロングならまたミートしましょう。じゃあね」


 煙が晴れた時、そこにあの女は既にいなかった。代わりに5メートルほどに巨大化したスケルトンが1体、歯をカシャカシャと鳴らして私たちを見下ろしていた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る