第33話 1対1対1→7対1
スケルトン4対とシャドー3体が近寄ってくる。
「2人とも起きて!敵襲!」
魔物を確認して、瞬時に切り替えて声を上げる。この遺跡で一度に7体もの魔物に遭遇するのは初めてだ。スケルトンだけならまだしも、私の攻撃が効かないシャドーが3体もいる。最大戦力で当たらなければいけない。
腰に差した剣を抜いて構える。まずはパルマに魔法でシャドーを蹴散らして貰って……。パルマ?
横のパルマを見ると、涎を垂らして眠りこけている。とても気持ちよさそうだ。涎を垂らしていてもやっぱり美人だなぁ。この子が私の奥さんになるなんて私は幸せだなあ。ってそうじゃないわよっ!!
「パルマっ!起きて!魔物が来てるのっ!」
「……」
ぴくりともしない。くそ、さっきまでびくんびくんしてたくせに!これはまずい。くそっ!なんでこんな時に限って寝ているんだ!一体どうしたっていうのよ!
って私のせいじゃん!!
まずい、まずいぞこれは。いや、まずは冷静になれ。一旦パルマを起こすのは諦めよう。魔法はサナも使えるし、今ならパルマが気を失っているからある意味好都合だ。スケルトンもシャドーもアンデッドだし、ホーリーウィンドで一掃出来るはずだ。
「サナ!起きろ!魔物よ!」
『煮物は、美味しいよね……』
詰んだかもしれない。
いや、諦めるな!こんな時のために事前にトイレで採取しておいたあれがある!
腰のポーチから瓶を取り出して、中の液体を剣に振りかける。そしてそのまま、1番近くにいるシャドーに飛びかかって斬りつけた。今この一瞬だけ、私の剣は影をも斬り裂く!
「アァァァ!」
シャドーが袈裟懸けに二分され、悲鳴を上げながら薄くなって消えた。よし、想定通り。トイレで喘いだ甲斐があったというものだ。ホーリーウォーターを纏った剣ならシャドーに有効打を与えられる!
飛び込んでいった私を挟み込むように、剣を持ったスケルトンが2体、私に向かって腕を振り上げる。1つは避け、1つは受け流す。そのまましゃがみ込んで水平に剣で半円を描く。全部で4本、スケルトンの脚を壊した。これで時間は稼げた。
まずい、パルマにシャドーが1体向かっている。戻って横から薙ぐ。シャドーが消え失せた。シャドーは思っていたよりも耐久力がない。ホーリーウォーターの効果が凄いのか、元々シャドーが弱いのか。いずれにせよ攻撃さえ通じれば簡単に倒せる。これでまともに動ける敵はシャドー1のスケルトン2。大丈夫だ、落ち着けば勝てる。
息を落ち着けて敵の位置を確認する。5メートル程離れたところに無傷の杖持ちスケルトンが2体、シャドーが1体。3メートルの所でスケルトンが2体這いずっている。優先順位は…… 乱戦で絡まれると厄介だ。まずは近くの2体を仕留める!
2歩で距離を詰めて、倒れているスケルトンにトドメを刺す。2体を倒したところで、残りの魔物が3体同時に突っ込んできた。
「アァァァ!」
シャドーが金切声を上げ、私の体を寒気が襲う。喜びの感情が、一瞬で絶望に上書きされたかのような気分になり、何もする気が起きなくなった。その隙をついて2体のスケルトンが杖を手に殴りかかってくる。身動きの取れない私は、ただぼんやりとそれを眺めていた。
杖ならば当たっても怪我をするだけで済むかもしれない。剣じゃなくて良かった。剣なら死んでいた。杖ならば……杖でも当たりどころが悪ければ死ぬし、気を失うかもしれない。そうなったら?倒れた私は殴り殺され、サナも死ぬ。その次はパルマだろう。私によって気を失ってるパルマに抵抗する術は無い。私と同じように殴られて死ぬだろう。
死ぬ?サナが?パルマが?
「っっっらぁ!!!」
全力で首を振り回避する。杖が髪の毛をかすめる。優先順位は……シャドーだ!
一歩踏み込み一閃。ちっ、消えない。ホーリーウォーターの効果が薄れてきてる。もう一閃。シャドーが霧散した。背後にいるだろうスケルトンに、振り返りながら一閃。肋骨を何本か折ったが致命傷では無い。よろめいたところを骨の隙間目掛けて差し込む。よし。最後の一体。突きを放つ。魔石が砕けた。
今度こそ、私の、勝利だ!!
「勝ったぞぉぉぉぉ!!!」
よし!決めた!もう2度とダンジョンでイチャつかない!絶対!反省した!もうしない!怖かった!超怖かった!2度としない!
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