第10話 森の異変
俺がオスカーに勝ってから数日、あれからオスカーに冒険者の道を推され続けてその度に断り続けているが、最近少し考え方が変わってきた。
言われた当時はダラダラするスローライフの邪魔になると思っていたが…スローライフを送るにしても金が要る。
なぜならこの村でも一部年寄り連中の中では物々交換の形は残っているものの、一般的にはディロード王国通貨が使われているからだ。
そして今の俺には貯蓄や収入がなく、オスカーに養ってもらっている状態。これは一般的にみれば親が子を養っているので普通なのかもしれないが、もう俺も15。そろそろ独り立ちをしなければならない歳だ。
それに外見こそ違うものの、中身は元勇者のシドウ・ユウジ…最低限自分で生きる金くらいは自分で稼がないといけないのではと思い始めている。
「勇者時代は最初期の頃から城での生活だったし…金は使っても使いきれないくらい有り余ってたから、生きるために戦う!っていうあの頃と違って…今は生きるために稼ぐ!に変わったんだよな。収入源は確かに確保したい…か」
ここ数週間田舎生活を過ごしたが、平和すぎてなんか今以上にダメ人間になってしまいそうで怖いと思ったのが正直なところだ。
ダメ人間の自覚があるのかって?うるせぇ!!!
しかしわざわざまた戦いの日々に身を投じるのはどうかと思うものの、冒険者は勇者時代の雁字搦めの生活と違ってランクが上に行き過ぎなければ自由さがある。
ただ冒険者の仕事内容も戦闘だけではない。低ランクであれば薬草採集やペットの猫探しなんてこともやったりする、いわば何でも屋に近い。
「ある程度の冒険者ランクを確保しつつ、この村みたいな田舎で隠居するのは…もう少し先でもいいかもなぁ。とりあえず今は…いろんな国とか旅してみてぇかもしれん」
勇者時代はこの王国から出ることもなく、出たとしても任務でだけ。観光なんてものは全くなく、ただただ魔族やモンスターを倒して野宿…自由時間なんてなかった。
しかし今はどうだろう?今の俺は勇者の責任なんてものはなく、俺のやりたいように冒険者らしく世界を旅する………良いかもしれんな。
「それになーんかこの辺には普段いないモンスターがいるような気がするんだが…気になるな」
今日は一人、森の中で雑魚モンスターでも狩って小遣い稼ぎでもしようと思っていたんだが…この辺りじゃ見ないE級上位のモンスターを何体も倒している。
今更だがモンスターには冒険者ギルドが定めた危険度の指標が存在する。冒険者ギルドが定めている指標のうち一番弱いランクがFランクで、一番強いランクがSランクだ。
しかし世界にはSランクを逸脱したバケモノが存在しているのだが、そいつらは現存個体で10体いるかどうかというレベルだ。
わかりやすくいえば俺が倒した最終形態の魔王なんかはSランクを逸脱した強さを持っていたが、ああいうのは例外に過ぎないため実質的なトップはSランクモンスターと言って良いだろう。
まぁ色々と語ると長くなるから今回は端折るが、一般的に人が街や村を作るためには周囲に確認されるモンスターがF級中位以下が推奨されている。
中には危険地帯に街を作ることで自然要塞を作っている国や、危険は伴うものの迷宮の周囲に国を興すことで経済を回している国なんかもあるが…そんなのは例外に過ぎない。
この村の周囲ではスライムやブラックスパイダー、ゴブリンなどのF級下位のモンスターは見かけるものの、キラーベアのような一般的な村人にとって強力なモンスターは普通見かけない。そんなモンスターがうろつくような環境では人間の方が追い出されてしまうからだ。
「ポイズンスパイダーにビッグスライム…アーマーゴブリン?コイツらの生息地はこんな人里に近い森にはないはず…。俺が殺したキラーベアもそうだ、D級上位といえば地域の生態系のトップに君臨できるレベル、あえて山奥から出てきてこの村を襲いにくる理由がない」
俺の足下に転がっているモンスターの死体はもう少し山奥にいるモンスター、こんなところにいるモンスターではない。
「俺が死んでから世界の生態系バランスが変わったって可能性もあるが…一番考えられるとしたら、上位の存在に住処を追い出された可能性もあるのか………めんどくせぇな!畜生!!!俺がのんびりできねぇじゃねぇか!!!」
ちょっと小遣い稼ぎに森に散歩しにきたら、異変を感じ取ることになるなら来なきゃよかったわクソが!知った以上放置できねぇよなぁ…俺の冒険者になるまでの安定した生活のためにも!!!
「とりあえずモンスターの死体は…何故かもう一回使えるようになったアイテムボックスに入れて置いてっと…。はぁ…めんどくさいけど仕方ねぇ、元勇者なんでね…感じ取った以上は見にいきますか。ホント頼むから何もないようにお願いします、めんどくさい奴がいないように祈ってますホントマジで」
キラーベアを倒してからしばらくして気がついたが、転生してからは使えなかったアイテムボックスのスキルが使えるようになっていた。
容量は俺が使っていた頃に比べて少ないものの、おそらくキラーベアを倒したことでレベルが上がったんだろうな。
そんな便利なアイテムボックスに死体入れて、俺は森の奥へと歩き出した。
______________________________________
ちょっとモンスターの階級変えました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます