一八話
月明かりが道を照らす頃。
イヴを先頭に天牙とイルドは通学路を走っていた。
天牙は怪訝そうな表情を浮かべならイヴに問う。
「マジで学校に《亜種》がいんのか?」
「うちだって信じられなかったが、あの背筋が凍るような感覚は間違いない《亜種》だ」
「私達が学校から帰った後、《亜種》が移動してきたんだと思う。もしくは誰かの性欲が異常に発生して《亜種》になったとか……理由は分からないけど、《亜種》がいるのは変わらないし、さっさと倒して天牙くんのアレを元に戻そう!」
魔法少女の姿になっているイルドは、励ますように天牙に言う。
天牙は笑みを浮かべ、そしてため息を吐く。
「それにしても、タイミング悪いときに来やがって……」
「まあまあ。イヴだって悪気があったわけじゃないし、魔法杖についてたい金輪もとってくれたじゃん」
「うちの忠告を無視した罰だ。それにあの魔法杖には意味がある」
「意味?」
「魔法杖で怪人を吸収すると、力だけじゃなくて性癖や性欲も取り込んでしまう」
「……え? 俺って赤ちゃんになって、ばぶばぶぅとか言ったりすんの?」
驚愕する天牙に、イヴが説明を続ける。
「ほとんどはイルドちゃんによって抑え込まれているが、少なからず影響はある。溜まりに溜まった性欲やらは管理できないと駄目だ」
天牙はイルドに手を出しそうになったことも思い出し、ふむふむと納得する。
イヴが俺のことを考えてくれるとは、最初と比べて仲良くなったな。
飛翔を緩めることなく、イヴはくるりと振り返り、
「まあ、そんなことしなくても管理は時間と共に自然とできるようになるし、金輪はただの憂さ晴らしにしか過ぎないがなっ!」
スッキリとした表情で親指をグッと立てる。
天牙は額に青筋を浮かべながら、満面の笑みで親指を下に向ける。
「よし、あとで金輪の魔法杖を頭につけてやるからな」
前言撤回だ。こいつとは絶対に仲良くなれそうにない。
天牙とイヴの間に激しい火花が散る。
「二人とも、もうそろそろ着くんだから喧嘩はあとにして」
「は~い、もちろんよイルドちゃん♡」
イヴは天牙に向かってあっかんべーをすると、再び前を向いた。
天牙は深呼吸して心を落ち着かせ、ふと、天牙は疑問に思っていたことを口に出す。
「一瞬で移動できる魔法杖があっただろ? どうして使わなかったんだ?」
「移動した瞬間に《亜種》に襲われるかも知れないし、魔法少女の力を温存しといたほうが良いってイヴが……」
「用心に越したことはないってことか」
そこまでして倒さなければいけねぇとは……どんだけ《亜種》は強いんだよ。
だが、俺のアレを取り戻すためにも絶対倒さないとな。
走ること十分。天牙たちは学校についた。
校門を潜り抜けると、イヴが手で静止を促してくる。そして校庭の方を指す。
校庭にはポツリと一つの人影が立っていた。
やがて、月を隠していた雲が移動し、人影の姿が露わとなる。
「お……ち…ん…、たべ……たいなぁ」
白装束をまとった黒髪ロングの女性は、そう呟いた。
女性は天牙達の方をギロリと睨み、
「お……ち…ん…、たべ……たいなぁ‼」
発狂。
鼓膜を突き破ってくる高くて嫌な音。冷や汗が流れ、背筋が凍るような金切り音。
そんな女性の激しい威圧に、天牙たちは身構えた。
ゆらりゆらりと左右に激しく揺れながら近づいてくる女性。
緊張が漂う空気感。
天牙は唾を飲み込み、ニヤリと笑みを浮かべた。
「よし、例の作戦だ。イヴが怪人が襲われてる間に、俺とイルドで怪人を倒す」
「その作戦は、うちとクソガキの役割が逆になってんぞ」
「そういう喧嘩は終わってからしなさい」
三人の緊張が少しばかり緩和した。肩に入っていた余分な力が抜ける。
迫りくる女性――いや、白装束の怪人はすぐそこまで来ている。
イルドはふぅと息を吐き、真剣な顔つきになる。
「それじゃ、先手必勝っと」
イルドが如意棒型の魔法杖を構えると、空中に幾つもの魔法杖が出てくる。コスプレグッズや壺の形をした魔法杖が増えており、怪人退治の成長が目に見えて分かる。
もう近くまで迫ってきていた白装束の怪人は、狂乱した様子で、
「御命、三人、喰ベタイナァ‼」
襲い掛かってきた。
イルドは怯むことなく、持っていた如意棒型の魔法杖の長さを伸ばし、突き飛ばす。
二、三歩よろける白装束の怪人。
その隙を狙って、イルドは長さを元に戻した魔法杖を振る。
幾つもの魔法杖が、白装束の怪人に襲い掛かる。
「ぐ……はぁ」
怪人の両足に縄が巻き付く。怪人はバランスを崩して転倒。
「ぎぃ……やぁ」
続いて、手錠が怪人の両手に装着される。
「ぐぎゃぁ……いやあん……もう……らめェ……」
以降、大人の玩具による全年齢指定の蹂躙が始まる――と、思いきや、白装束の怪人は咆哮を上げて、周囲の魔法杖を全て吹き飛ばす。
イルドは僅かに仰け反り、額から流れた汗を拭う。
「さすがに一筋縄ではいかないかっ」
苦笑を浮かべるイルド。そんな彼女に再び白装束の怪人が襲い掛かる。
「イルドちゃん、危ない‼」
と、イヴが飛び蹴りを繰り出し――、
「えっ」
――天牙がイルドの前に飛び出す。
イヴに後頭部を蹴られた天牙。彼の頭が怪人の頭にタイミングよく突き刺さった。
「「ぐひゃッ⁉」」
天牙は頭から地面に倒れ、怪人は二、三歩後退し膝をつく。
ふんすかと鼻息を荒くするイヴ。
「これでも咥えてろってんだ‼」
イヴは空中にあるおしゃぶりの形をした魔法杖を掴むと、怪人の所まで飛び、おしゃぶりを咥えさせる。すると、白装束の怪人に涎掛けとオムツが装備された。
怪人は苦しそうに声を絞り出す。
「ハ、ハズカシイ……」
怪人にも羞恥心があったのかよ。
天牙の心のツッコミを補足するように、
「異なる性癖同士をぶつければ、おのずと相殺されるってこと‼」
イヴがドヤ顔で言う。
イルドは持っていた魔法杖を懐に仕舞い、空中にある魔法杖の中から、壺型の魔法杖を動かし、手に取る。
壺からぬるりと出てくる触手。溢れるように伸びていく触手は、怪人の体を包んでいく。
あっという間に触手は蜷局巻きになり、姿が見えなくなった。
天牙はむくりと起き上がり、体についた砂煙を払う。
「……よし、作戦通りだな。あとはイヴをタコ殴りにすれば完璧だ」
「趣旨から逸れてるよ、天牙くん。この怪人を魔法杖にしないと……って、どうすればいいの、イヴ?」
「怪人を倒したあとになる光の粒子を、グッとしてギュッとやったあとグチャアとやれば完成だ!」
何も分からない擬音だらけの説明に、天牙とイルドは首を傾げる。
「「「あれ……?」」」
そこで異変に気づく。
怪人が光の粒子になっていない――すなわち、まだ怪人が倒されていないことに。
「コンナノデ、トメラレルトオモウノカ?」
白装束の怪人は触手を噛み千切り、拘束を破る。おしゃぶりを吐き出し、オムツや涎掛けを投げ捨てる。
かなりボロボロになっているが、白装束の怪人は気にしたようすも無く、思い切り息を吸いこみ、
「キャアッー‼」
女性の甲高い悲鳴のような叫び。
白装束の怪人を中心に渦が巻き起こる。
どこからともなく光の粒子が集まってくる。光の粒子は渦となっていき、段々と怪人の姿は見えなくなっていく。
イヴは目を見開き、絶句する。
「これは性欲なのか……?」
光輝く渦は霧散していき、
「ランコウパーティーノハジマリダ‼」
同時に校庭を埋め尽くすほどの怪人達が現れる。
怪人達は鞭を地面に叩きつけていたり、電車に手足が生えていたり、多種多様で気味が悪く、天牙たちを囲むように立っている。
共通しているのは、瞳がハートになっているのと、白装束の怪人をうっとりと見ていることだ。
白装束の怪人は、近くにいた電車に手足が生えた怪人の肩を掴む。
「イタダキマ~ス」
グチャ、ボリボリ。ムシャムシャ。ゴックン。
ボロボロだった体が、瞬く間に回復していく。
白装束の怪人は口を拭う。頬に血の跡がつく。
イヴは奥歯をカタカタと揺らしながら、
「こ、これはマズいっ」
「せめて、もう一人くらい魔法少女がいれば……」
「そんなにヤベェのか? 他の怪人と大差ないように見えんだけど――」
天牙は手足が生えた電車に轢かれ、後方に吹き飛んでいく。
白装束の怪人が性欲から生成した電車をぶん投げたのだ。
電車の先頭でビタッと張り付いてしまう天牙。
周りを囲む怪人たちを吹き飛ばしていき、校舎にぶつかって電車が止まる。青と赤の液体が飛散する。校舎の壁にヒビが入り、破片や瓦礫が落ちる。
「イルドくん‼」「クソガキ‼」
イルドとイヴの悲痛な声が重なる。
壁と電車に挟まれた天牙。さすがに彼の肉体は跡形もなく潰れて――、
「お~い、俺はまだ生きてるよー……」
――いなかった。
怪人退治による肉体の超人的な成長。そして他の怪人がクッションの役割を果たしたことから致命傷は避けていた。
クソ痛ぇ! 骨も数本折れてるし、電車と壁に挟まれてすぐには動けそうにねぇ……カッコ悪いな、俺。
天牙の消え入りそうな声が聞こえ、イルドは安堵の息を漏らす。
そしてイルドは眉を吊り上げ、鬼のような形相で白装束の怪人を睨んだ。
「貴様だけは、絶対に許さない‼」
イルドは空中から鞭の形をした魔法杖を移動させ、手に掴む。
鞭を高く振り上げ、長さを伸ばし、白装束の怪人に振り下ろす。
それを見た白装束の怪人。
「ソレ、モラウ」
近くにいたギャルメイクのおっさんの怪人の首を掴み、肉壁にして、イルドの鞭を防ぐ。
白装束の怪人は辺りをキョロキョロと見渡し、鞭を持っている怪人を見つけると、 そこまで一瞬で移動する。
グチャ、ボリボリ。ムシャムシャ。ゴックン。
捕食が完了した白装束の怪人は、口から胃液や唾液と共に鞭を吐き出す。
鞭を手に取り、振る。周囲にいた二、三体の怪人の頭が消し飛ぶ。
イヴは思い出したかのように言葉を紡ぐ。
「白装束を着てるからネクロフェリア系の怪人だと思っていたが、まさか乱交系の怪人だとは……」
イルドは困惑した様子で、
「あの怪人、私を真似たんだけど……」
イルドが再び鞭を振り上げると、白装束の怪人も同様に振り上げる。
イルドと白装束の怪人による鞭の戦い。音速を超え、残像しか見えない勝負。
バチンッと何度も激しい音が重なる。両者一歩も譲らぬ攻防。
だが、イルドは一歩、また一歩と後退し始める。
「クソッ! 他の怪人が邪魔すぎる‼」
白装束の怪人は他の怪人を捕食し回復し続けるのに対し、イルドはひたすらに耐える一方だった。やがて少しずつ差が出ていき、
「きゃッ⁉」
イルドの鞭の魔法杖が手元から弾かれる。飛んでいたイヴが慌ててキャッチする。
イルドは別の魔法杖を使い応戦。
だが、白装束の怪人は別の怪人を捕食し、イルドの魔法杖に対抗。
そういった攻防が何度も繰り返され、校舎にいる怪人は三分の一以下になったときには、イルドは肩で息をしていた。なお、白装束の怪人はピンピンしている。
「い、いい加減、倒されてくれなかなぁ……‼」
イルドの全身から汗が噴き出ている。顔色も血の気を失って悪くなっている。
そんなイルドを不安そうに見つめるイヴ。
イルドは歯を食いしばり、力が抜けそうな膝を気合で立たせる。
「まだ約束を果たしてない。約束は守るもの。だから、まだ負けない」
イルドは懐から魔法杖を取り出すが、手に力が入らず地面に落ちる。
イヴが慌てて拾い上げるものの、握る力はほとんどない。
性欲を消費しすぎたせいで、一時的に極度の賢者タイムになっている。
脱力。倦怠感。寒気。などなど。降り注ぐデバフは計り知れない。
「まだ、まだっ!」
見るからにボロボロなのに、その瞳はまだ諦めていない。
そんなイルドを見たイヴは、イルドの前に立ち、庇うようにして両手を広げる。
イルドは困惑じみたようすで、
「イ、イヴ……?」
イヴに語り掛ける。イヴは何も言わず、ただ白装束の怪人を見続ける。
そんな二人に迫る、白装束の怪人。
絶体絶命のピンチ、と思いきや――、
「……さま……」
――空から声が聞こえてきた。
「イルドさまー‼」
聞き覚えのある声と共。ズドンッと声の持ち主が降ってくる。
落ちてきた衝撃で砂煙が舞い、イルドとイヴが咳き込む。
砂煙が収まり、
「イルドさま、お怪我はございませんかッ‼」
ナホが現れる。
突然のナホの登場に、イルドは驚く。
「ど、どうして……⁉」
メイド服姿のナホは心配したような表情で、目尻に涙を浮かべていた。
「そんなボロボロになってしまって……イヴししょうもイルドさまの影響でかなり疲弊していますね。このままだと《亜種》を倒せません……」
他の怪人が潰れた液体から、ぬるりと身を捻じって抜け出していた天牙。
彼は地面に膝と手をつきながら、イヴを見据える。
ラピュタじゃねぇんだから、空から降ってくるとか、ありえねぇ……ん? どうしてイヴは空から降ってきたんだ?
天牙の疑問を確かめるかの如く、ナホは懐からペンを取り出し、
「ですから、ここからはわたくしも戦います」
魔法少女へと変身する。
どこからともなく集まってきた光の粒子は、ナホの服を新たに生成する。
白の縦縞が入ったワイシャツに、太ももがほぼ見える丈のスリットパンツ。黒の長いブーツを履いており、肩に金色のリボンが装飾されているマント。つばが長い黒の帽子。
いわゆる看守服というやつである。手には警棒のような物が握られており、
「これがわたくしの魔法杖です」
ナホは警棒の形をした魔法杖を構えた。ナホはイルドに向かって警棒を振りかざし、
「失礼します、イルドさま‼」
「はうっ⁉」
思い切り尻を叩く。
痛みによって飛び上がったイルド。彼女は涙目でナホに訴えかける。
「にゃんでっ⁉」
赤面しているイルドに対し、ナホは淡々で告げる。
「イルドさまの性欲を補充しました。イルドさまはわたくしの全てを受け入れてくれので」
そこでイルドは、先程までの疲労が全て無くなっていることに、気づいた。
ナホは「やはり……」と一拍置き、
「イルドさまを叩くというのは、色々と背徳感がありますね!」
だらしなく口角を緩め、でゅへへっとおっさんのように笑う。
イルドはナホの頭を叩く。
ナホの頬が赤く染まり、コホンっと咳払いする。
「こ、これは失礼いたしました……」
二人の魔法少女と対峙することになった白装束の怪人は、切羽詰まったようすで
「オマエラ、コイ‼」
叫ぶ。校庭にいた怪人達が一目散に近寄ってくる。
白装束の怪人は近寄ってきた怪人達を片っ端から捕食。あっという間に平らげ、残っているのは白装束の怪人のみ。
白装束の怪人は頭を抑えて、
「グァァァァアアアッッッ!」
と、獰猛に叫ぶ。背中から幾つもの手を生やし、イルドたちに向かって拳を振り下ろす。
イルドは如意棒型の魔法杖を構えて、
「さて、この一撃で終わらせましょうか‼」
ナホも同じく警棒型の魔法杖を構える。
「もちろんです、イルドさま‼」
イルドとナホ。
二人が振るった魔法杖は、白装束の怪人を跡形もなく吹き飛ばす。
衝撃。
校舎が揺れるほどの突風が吹く。天牙もくるりと一回転し、校舎の壁に当たって止まる。
少し遅れて、白装束の怪人がいたところから光の粒子がシャボン玉のように出てくる。
……あの二人、マジですげぇな。
夜の月明かりに照らされた魔法少女のイルドとナホ。光の粒子に囲まれて、幻想的な魅力を醸し出す二人に、天牙は感慨深くなる。
イヴはイルドとナホの周りをぐるぐると飛ぶ。
「ありがとう、イルドちゃんたち‼ これで魔法杖を生成できるわ‼」
イヴは新たな魔法杖の生成に取り掛かろうとし――ハエを叩き潰すかのように、ナホが持っている魔法杖でイヴを地面に叩きつけられ――勢いよく地面に衝突した。
ナホは警棒型の魔法杖を空に向ける。ナホの魔法杖にシャボン玉のように浮いていた光の粒子が吸収されていく。
「その必要はないよ、イヴししょう」
ナホが一言。
「だってイルドさまは、魔法少女じゃなくなるんだから」
即座に反応したのはイヴと天牙だった。
なんかヤベェこと言ったよな⁉
イルドたちの元へ駆ける天牙。イヴは鼻血を出しながらナホに飛びかかるが、ナホはするりと避け、イルドの背後に立つ。
状況が把握できていないイルド。そんな彼女を後ろから抱きしめたナホは、イルドが持っている魔法杖を掴む。
ナホはイルドの耳元で囁く。その瞳にはイルドしか映っていない。
「わたくしを助けてくれたときのこと、覚えていますか?」
「な、なにをしてるのナホ――」
「質問を質問で返さないでください‼。覚えているのか聞いてるんです‼」
「……ナホが一度、己の性欲のみで怪人を生み出しちゃって、私がそれを倒したんだよね」
そこまで話したところで、イルドが疑問に気づく。
「ナホ、貴方どうやって魔法少女になったの?」
「……それはですね」
イルドたちに追いついた天牙。彼はナホをイルドから引っぺがそうと手を伸ばす。
「天牙ちゃん――いえ、男子トイレでシコっていたコイツに貴方が洗脳されているのを知ったからですよ‼」
ナホはイルドから強引に魔法杖を奪い取り、
「それでは戻してあげましょう、この忌々しい物を‼」
天牙の方に振り向いて、天牙の股に突き刺す。
「ぐぁっ‼」
天牙は後ろに下がり、前屈みになる。
天牙が股に視線を向ければ、ズボンがテント張りになっている。
股の部分から血液が流れていくのを感じ、天牙はアレが元に戻ったのだと理解する。
ふと、天牙の脳裏にショッピングモールの映像が流れた。
妙に感じた視線、そしてトイレの前で見失った気配。
「……尾行していたな?」
「男の癖に察しがいいですね」
ナホはイルドの腰を抱き寄せる。イルドは抵抗しようとするが、魔法杖もとい天牙のアレが股の間に戻ったことで、イルドの魔法少女の変身が解除されていく。服が光の粒子となって消えていくなか、
「……私が天牙くんのことを隠すようにいったんだから、何かするなら私だけにして」
「イルドさまはわたくしに嘘をつきません。この外道が洗脳したに決まってます‼」
イルドはナホを睨むと、ナホは渋々といった様子で、
「これ以上余計な時間を割きたくないですし、イルドさま、二人きりになれるところに行きましょう……ね」
ナホはイルドの乳房を揉みながら、イルドの首筋をいやらしく舐める。
イルドの体がビクっと揺れる。
「あとは、私が何とかっ、するっ――ん!」
ナホは魔法杖を構えると、光の粒子が天牙とイヴに集まっていく。
「では、さようなら」
「天牙く――」
天牙の視界が切り替わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます