二話
天牙は唖然としていたが、イルドとイヴに急かされたので、急いでエロいことを想像した。
初めて会ったときのイルドが悶えている姿。
天牙の体から光の粒子が泡のように出てくる。光の粒子はシャボン玉のようにふわふわと浮上していき、跡形もなく霧散した。
「これは
「性欲? なんだそれ?」
「セックスやオナニー、妄想でも構わないが、えっちなことをしたときに生み出される特別なエネルギーだ。普通の人間には見えないが、チ○ポが魔法杖になったんだ。見えていてもおかしくない。……マジで不愉快だがな」
イヴは話を続ける。
「性欲は霧散しても、そのエネルギーは消えることはない。空間に存在し続ける。また、一人あたりの性欲は微々たるもので、生み出される過程によって種類や性質も異なる」
イヴの指の先端に小さな渦が巻き起こり、光の粒子が集まっていく。見覚えのある、赤ちゃんの恰好をしたおっさんの人形が生まれる。
「だが、少しずつでも同じような性欲が溜まっていけば、怪人となってしまう」
イヴは人形を引き裂いた。人形は光の粒子となって消えていく。
「怪人は元になった性欲を本能とし、人間に危害を加える。人類からスケベな煩悩が消えない限り、怪人が絶えることはない。つまり、元凶を絶つのは不可能ということ。まあ、魔法少女よりも害虫退治の方がイメージとしては近いな」
イヴは一仕事終えたようにふぅと息を吐くと、イルドの谷間に戻っていった。まだ聞きたいことがある天牙。彼が魔法少女や自身のアレについて問うと、
「質問には答えないと言っただろ、ハゲダルマ」
イヴが中指を立てながら、イルドの谷間に沈んでいった。イルドの胸がぶるんぶるんと揺れた。イルドは谷間の中に手を入れると腕に力を込めた。イヴが「ぷぎゃアッ⁉」と悲鳴を上げた。
イルドは咳ばらいをすると、
「ここからは私に任せて! イヴから色々と聞いてるからさっ!」
朗らかに笑った。
「まず前提として、魔法少女は元から魔法を使える特別な人じゃない。魔法少女になれる可能性がある、ただの一般人なの」
「何となく知ってる。『僕と契約して魔法少女になってよ』……ってやつだろ?」
「それは別作品だね。……これ以上の言及はやめとこう。色々と怖いから」
イルドは懐から如意棒型の魔法杖(天牙のアレ)を取り出す。魔法杖は小さくなったままであり、天牙は妙にそわそわした。
「魔法杖は一定以上の性欲が溜まったモノじゃないとダメ。天牙くんのアレは性欲が充分に溜まっていた。だから、魔法杖にすることができたの」
イルドは口端を上げる。
「ちなみに、私が怪人と戦ってるときに生成した魔法杖は、性欲を集めて疑似的に作ってるだけで、ある程度の時間が経てば、消えてしまう」
天牙はふむふむと納得しつつ、問う。
「あのさ、俺と俺のアレの感覚が繋がってるみたいなんだが……?」
「変身すれば魔法杖として機能するから感覚は無くなる。だけど、変身しないとただの天牙くんのアレだから、天牙くんと感覚が繋がってるの。さすがに天牙くんのアレをそのまま持ってるのは色々とマズいし、姿形は変えてるけどね」
「魔法少女とは性欲が異常にある者の総称で、魔法杖はその性欲を引き出して魔法にする物。例えるなら、性欲の宝箱を魔法杖の鍵で開けて、魔法という宝を取り出す感じね」
「……それで返せない理由はなんだ?」
「魔法杖を失うと魔法少女としての力が使えない。すると怪人も対処できなくなる。倒した怪人の性欲を吸収するときの快楽……じゃなくて、魔法少女として怪人を倒さず、無実の人が犠牲になるのは、天牙くんも嫌でしょ?」
イルドが申し訳なさそうに告げてくる。天牙は言葉の端々から可能性を探していた。
魔法杖が無いと魔法少女は怪人を退治できない。
逆に魔法杖さえあれば、怪人を倒すことが出来る。
「つまり、他の魔法杖があればいいってことだな?」
先程から一転。イルドは満足そうな笑みを浮かべた。「その通りだっ!」
「新しく魔法杖を手に入れるには、三つの方法がある。
一つは、新しく魔法杖を作り出す。これは確実だけど、もの凄く時間がかかる。少なく見積もっても一〇年くらい。魔法杖が弱かったらダメだし、慎重にするべき。
もう一つは、他の魔法少女から魔法杖を奪う。イヴの話だと他にも魔法少女はいるみたいだけど、会ったことは無い。少なくとも近くにはいないと思う」
イルドは力強く告げる。
「最後の一つは、怪人を魔法杖にする」
「あのおっさん、いや、怪人を⁉」
イルドは頷く。
「怪人の正体は性欲の塊にしか過ぎない。まあまあの頻度で怪人は出てくるし、そこら辺にいる怪人なら負けることは無い。この魔法杖は私と相性が良いしね」
「あ、ありがとうございます?」
天牙はなんとなく感謝を告げ、疑問を尋ねた。
「あの赤ちゃんおっさんの怪人を魔法杖にしなかったのか? 元々の魔法杖を吸収してパワーアップしてたし、性欲は充分に溜まっていたはずだろ?」
天牙の脳裏に、赤ちゃんの恰好をしたおっさんの怪人が過る。
「魔法杖にするには性欲以外にも条件があって、似たような性質じゃないといけない。あの怪人は私の性欲と合わなかった。魔法杖にするには別の性欲と混じってはダメだし、そこらにいる怪人では魔法杖に出来ない」
「……手詰まりじゃね?」
イルドは人差し指を立て、チッチッと左右に振る。
「問題はない。《亜種》と分類される怪人がいて、そいつは魔法杖になれるほどの性欲を持ってるらしいの」
「その《亜種》ってのを倒せば、俺のアレは戻ってくるのか⁉」
イルドは無言で肯定する。
「……だけど、《亜種》の出現率は極めて低くて、私も一回しか会ったことが無い。しかも、他の怪人と比べてものすごく強いから、新しい魔法杖だと勝てない思う。だから、他の怪人を倒していってパワーアップしたいんだけど……」
「どうした? 頑張って怪人と戦いまくればいいじゃん」
「もちろん、天牙くんも手伝ってくれるよね?」
「え、嫌だけど」
イルドの頼みを、天牙は即座に断った。
魔法少女に必要なのは俺のアレであって、俺ではない。
恐らく、手伝うことになったら、パシリや囮として使われるだろう。力関係はイルドが上だ。逆らうことは不可能である。
「天牙くんのアレ、一生勃たなくなるけどいいの?」
「誠心誠意、お手伝いさせていただきます」
天牙は土下座した。
「私だって理由もなしに天牙くんに怪人退治を手伝ってほしいとは思ってないよ?」
イルドは魔法杖をペン回しのように扱いながら、話をする。
「天牙くんから一定以上離れると、魔法杖が使えなくなったんだよね」
「……それってヤバくね?」
「イヴいわく、その状態が続くと天牙くんのアレが不能になるんだって。『一生誰かのために使うことはない』ってイヴは言ってたけど、天牙くんもソロプレイが出来なくなるのは困るでしょ?」
ソロプレイは余計だが、それ以上にイヴへの殺意がマシマシになった。
「だからさ、手伝ってくれないかな?」
天牙は呼吸を整える。イルドと視線が合う。
素面で異性と見つめ合うのは緊張するが、これから行動と共にする相手だと思えば、自然と緊張は緩和した。
「……分かった。手伝ってやる。だから、新しく魔法杖を手に入れたら、俺のアレを戻すのを約束してくれ」
「もちろん、約束するよ」
天牙が了承すると、イルドは満足そうに笑い、魔法杖を懐に仕舞った。
「良かった~……これでもダメだったら、面倒なことをする必要があったよ」
「面倒なこと?」「えっ、聞いちゃう?」
イルドのわくわくした表情を見て、天牙は全力で首を横に振った。
イルドはクスっと笑い、手を差し伸べてくる。「それではもう一度」
「これからよろしくね、天牙くん」
「こちらこそよろしく、イルド」
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