第7話 甘党

「んー時間も遅くなってきたし、今日はこの辺で終わるか。チャンネル登録、コメント、高評価よろしく。……今日はカッコつけて終わってみるか。そんじゃ、See you」


 うぅ、今日は用事があって配信ほとんど見れなかった。推し事してるとあるあるだよね、推しの配信になかなか行けないの。


 疲れてる上にルカくん不足だから、過去のアーカイブ配信でも見るかな……。


「──ぁ。疲れた」


 お、おぉ! 今日はラッキーだ! ギャップ萌え配信があるなんて!


 本当にルカくんの声が聞きたかったから、めちゃくちゃありがたい。


「んー腹へった。なんかあったっけ」


 ルカくんの気の抜けた声が聞こえると、足音が遠ざかっていった。


──待って久しぶりだギャップ萌え配信


──ここ最近はちゃんと配信切れてたのにw


──ポヤポヤした声可愛い♡


 久しぶりのギャップ萌え配信に、リスナーも歓喜の声をあげる。


「あったあった。疲れたし今日はこれ食べるか」


 お、ルカくんが戻ってきた。何を食べるんだろう。


「パフェに山盛りチョコとか犯罪だろ普通に」


 パフェ? 山盛りチョコ?


「しかもマカロンにチョコフレークに、中には生クリームも入ってるな。めっちゃ美味そう」


──パフェ!?


──めっちゃ甘そうなものばっかだな


──それ最近発売されたやつじゃない? 


──見たことあるかも


「んじゃ、マカロンからいただくか」


 ルカくんの咀嚼音が聞こえる。今日はASMR配信か。


「んま! マカロンってこんなに美味かったっけ」


──ルカは「マカロンはうまい」を覚えた!


──嬉しそうなルカくん可愛い


──あー甘いもの食べたくなってきた


「次はどうしよう……上のクリーム食べるか」


 どうしよう、どデカい飯テロを喰らっている。涎が止まんない。私の口が甘いものを欲している。


「んー! チョコソースかかってて美味い。買っといて良かったわ」


 ……配信終わったらコンビニにスイーツ買いに行こうかな。


「やっぱ甘いもんしか勝たんなあ。全然飽きない。スイーツ万歳」


 スイーツでテンション上がってるルカくん可愛いな。万歳。


──ちょっと今からお菓子買ってくるわ


──ダメだ俺もお腹空いた


──スイーツしか勝たん! ルカくんしか勝たん!


「──うわ、あっという間に無くなったな」


 残念そうな声が聞こえる。きっとしょんぼりした表情をしているのだろう。私には見える。


「でもまだなんか甘いの食べたいしな……あ、あれがあるわ!」


 まだ食べるのか。ルカくんはかなりの甘党なんだな。


「よしよし、セールに目が眩んで買っちゃったチョコケーキ食べるか」


 またチョコ! 凄いな飽きないのかな。


「んーま! やっぱチョコしか勝たん」


──チョコばっかで飽きないの?w


──そろそろ胸焼けしてきそう


──甘いもの大好きなんだねぇ可愛いねぇ


 ホントに可愛い。クールな人が甘党ってギャップ良くないですか。私だけか?


「最近配信も伸びてきてる気がするし、頑張って稼いでもっと美味いスイーツ食いたいな」


 ポツリと、そんな声が聞こえた。


──うおおおおおお貢いでやるよおおお


──ルカくんこれで美味しいもの食べて……!


──今こそリスナーの本気を見せる時


 ルカくんの一言を機に、リスナーからの投げ銭が飛び交った。もちろん私も便乗して貢ぐ。次々と投げ銭の効果音が響き渡った。


「ん? なんか音がする……え!?」


 さすがのルカくんも、投げ銭の音に気づいたようだ。足音が近づいてくる。


「な、なんだこれ!? 投げ銭が……って、また配信つけっぱなしだったのか!」


──ルカくーん!


──たくさん食べろー!!!


──我慢しないでね、貢ぐから♡


「わわわ、ヤバいさっきの聞かれてたのか! ちょっと一旦ストップストップ!」


 慌てた口調でルカくんが止めると、投げ銭もピタリと止んだ。


「え、えーと、こんなにたくさんありがとう……でも、マジで無理のない範囲で頼むな? みんなが金欠になるのは望んでないから」


──了解


──ごめんねぇルカくん


──安心しろちゃんと稼いでるから


「ま、気持ちはすげー嬉しい。大事に使わせてもらうよ。ありがとな」


 そんな優しい声で言われるとますます惚れるぞ……。


「んじゃ、今度こそ終わるからな。みんな、おやすみ。ありがとな」


 最後は囁きながら、今日のギャップ萌え配信が終了した。


 はぁ……推しからの供給が尊すぎる。今日頑張って良かった。




 数日後。ルカくんのSNSにて、シュークリームの写真が投稿された。投稿には「美味かった」と一言だけ添えられていた。しかし私は覚えているぞ、甘いものに目がないルカくんを。スイーツを食べてテンション爆上がりだったルカくんを。


 めちゃくちゃ甘党な推しが可愛くて尊いから、これからも貢ぐしかない。

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