第15話 お風呂上がりのひと時

 その後、風呂から上がった大和が再びリビングへ向かうと。


「あっ、お帰りなさい、大和くん」


 ソファーに座っていた優衣がそんな風に大和に話しかけて来たので。


「ああ、ただいま優衣」


 大和はそう言って優衣の隣に座ると。


 優衣は机の上に置いてあったグラスに水を注いで。


「大和くん、どうぞ」


 そう言って、優衣は水の入ったグラスを大和に手渡して来たので。


「ああ、ありがとう、優衣」


 大和はそう言って、優衣からグラスを受け取って水を飲んだ。すると、


「大和くん、これからは夏場になって気温もどんどん高くなっていくので、お風呂から上がったらきちんと水分補給をして下さいね、この家には大和くんしか居ないので、もし脱水症状になって倒れてしまっても誰も大和くんの事を助けてはくれませんから」


 優衣はそんな事を言ったので。


「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、もう俺はこの暮らしを始めて1年くらい経ったけど、特に大きな問題もなく毎日過ごせているからな」


 優衣を安心させる様に大和はそう言ったのだが。


「それはそうですが、それでもやっぱり心配です、大和くんは家だとけっこうずぼらな人ですから」


 優衣は続けてそう言ったので、大和は何と返すべきか一瞬考えてから。


「それなら優衣には通い妻みたいに毎日家に来てもらおうかな、お前の前だと俺はそんなにだらけないと思うからな」


 大和は冗談のつもりでそう言ったのだが、幾ら仲のいい幼馴染とはいえ、いきなりそんな事を言うのはさすがにキモかったなと、内心直ぐに後悔していると。


「えっ、あっ、その……」


 先程までとは違い、優衣は中々言葉を返してこないので。


「……優衣?」


 そう言って、大和は隣に座っている優衣の方を観て観ると、優衣は顔を真っ赤に染めて少し俯いていたので。


「えっと、優衣、もしかして熱でもあるのか?」


 少し心配になって、大和が優衣の額に自分の右手を当てると。


「ひゃっつ!?」


 そんな可愛らしい悲鳴を上げて、優衣は少しだけ大和から距離を取ったので。


「……あっ、悪い優衣、いきなり触られたら嫌だったよな」


 そんな反応をされた事に大和は内心ショックを受けつつも、大和はそう言って謝ると。


「あっ、いえ別にそういう訳では……それより大和くん、さっきの言葉ですが……」


 優衣がそう言うと。


「さっきの言葉? ああ、毎日来てくれってやつか、悪い、ただの冗談だ、優衣にだって自分の家でしたい事もあるだろうにそんな事を言われても困るよな」


 大和はそう言ったのだが。


「あっ、いえ、私が聞きたいのはその事ではなく……」


 そう言って、優衣は他に何かを言いたそうにしていたが、数秒経つと諦めたように一息ついてから。


「……やっぱり良いです、鈍感な大和くんに言っても仕方ないと思いますから」


 優衣はそう言ったので。


「そうか、まあ、優衣がそれで良いんなら良いけど」


 いきなり鈍感と言われた事に少し釈然としないながらも大和がそう言葉を返すと。


「……ポスン」


「うわっ!?」


 いきなり優衣が仰向けの姿勢で大和の膝の上に頭から倒れて来たので、咄嗟の事に驚いて大和がそう声を上げると。


「大和くん、私は今少しだけ機嫌が悪いです、なので、いつも以上に丁寧に私の頭を撫でて私の機嫌を直して下さい」


 優衣にしては珍しくそんな事を言ったので。


「仕方ないな、わがままなお嬢様の機嫌を直すのも幼馴染の務めだからな」


 大和はそう言うと、右手でいつもよりも優しく丁寧に優衣の頭を撫で始め。


 優衣も目を瞑ると大人しく大和に頭を撫でられ続けていた。

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