第13話 夕食からの一悶着

 その後、大和は2時間程、自分の膝の上で優衣の頭を撫でながら昼寝をさせてあげた後。


 優衣を起こして大和は夕食の準備を始めようとしたのだが、泊めて貰うお礼に今日は私が夜ご飯を作って上げると優衣が言ったので、夕食作りは彼女に任せて。


 優衣が作ってくれた手料理を2人で仲良く食べた後、2人はリビングにあるソファーに座り、肩をピタリと引っ付けてのんびりとテレビのバラエティー番組を観ていたのだが。


「お風呂が沸きました」


 聞きなれた機械の声が流れたので大和は、


「風呂が沸いたみたいだ、優衣、先に風呂に入って良いぞ」


 隣に座っている優衣に向かってそう話しかけたのだが。


「いえ、大和くんから入って下さい、大和くんにはいつも私のわがままを聞いて貰っているのに、私ばかり良い思いをするのは申し訳ないですから」


 優衣は遠慮がちにそう言ったのだが。


「いや、そんな事は気にしなくていいぞ、その代わりに優衣はよく俺に手料理を作ってくれていて、それだけで十分俺は満足していたからな、それに家に来てくれている以上優衣はお客様で、お客様より先に俺が風呂に入る訳にはいかないよ」


 大和はそう答えて、再度優衣に風呂に入る様促したのだが。


「……いえ、やっぱり大和くんから入って下さい、正直私にとってこの家は第二の実家だと思える位には居心地が良くてお客様っていう感覚は私には全く無いですし、今日は私のわがままで泊まらせて貰っているのに、これ以上大和くんに迷惑はかけられません」


 優衣も譲らずにそう言い返して来たので。


「いや、そんな事は気にしなくて良いからお客様として優衣から先に入ってくれ」


 大和もそう言うと。


「いえ、大和くんから先に入って下さい」


 優衣にしては珍しく、再びそう言い返して来たので。


「いや、優衣から入ってくれ」


「いえ、大和くんから入って下さい」


 その後も2人の譲り合いは終わらずに、このまま行くと数年ぶりの口喧嘩に発展するかもしれないと、大和が少し不安を感じ始めていると。


「……大和くん一旦落ち着きましょう、このままだと喧嘩になってします」


 優衣が一息ついてそう言ったので。


「ああ、そうだな、正直、優衣との雰囲気が悪くなるのは嫌だからな」


 大和がそう答えると。


「私もそれはイヤですよ、でも、このままだと決着が付かなそうなので、私から1つ提案があるのですが」


 優衣がそう言ったので。


「何だ? ジャンケンでもして負けた方から入るか?」


 大和がそう聞くと。


「いえ、それよりももっといい方法です」


 そう言うと、何を思った優衣は大和の耳元へ自分の顔を近づけて来た。そして、


「……大和くん、今日は私と一緒にお風呂に入りませんか?」


 大和の耳元でそんな魅惑的な提案を優衣は囁いて来た。

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