第12話 アニメ鑑賞

 その後、大和の部屋に来た2人はパソコンを起動してから先週途中まで観ていたアニメの続きを視聴し始めたのだが。


 最初の方は先週と同じように、優衣が大和に自分の腕を引っ付けて、大和の肩に顔を乗せてアニメを観ていたので、また理性との戦いになるのかと大和は少しだけ覚悟していたのだが。


「えっ、あれ、何で裏切っているのですか?」


「……」


 最初から怒涛の展開で優衣は少し困惑しつつも、直ぐに物語の中に引き込まれて大和から体を話してアニメに夢中になっていて。


「……あっ、私の好きなキャラがやられちゃいました」


「まあ、そういう事もあるよ」


「えっ、この人の正体ってもしかして……」


 時々休憩を挟みつつも、このアニメを初見の優衣は終始夢中になってアニメを観続けていて。


 何度か見返した大和もアニメを楽しんで観ていた。そして……




「さて、これで終わりだな」


 最終回を見終わって、大和がそう言うと。


「……そうですね」


 優衣もそう言ったので。


「それで優衣、全話観ての感想はどうだった?」


 大和がそう聞くと。


「そうですね、言葉が難しくて正直1回観ただけだと理解できない部分も多かったのですが、話はとても面白くてどのキャラも凄く魅力的で、今まで大和くんが私に見せてくれたアニメの中でもトップクラスに面白かったです!!」


 満足そうな笑みを浮かべて優衣はそう言ったので。


「そう思って貰えたのならよかったよ、因みに優衣はどのキャラが一番好きになったんだ?」


 大和がそう質問をすると。


「えっと、そうですね……女の子のキャラクターなら、赤髪の子が好きですね、主人公のピンチにはいつも手を貸してくれましたし、それになりより主人公に対して程よいツンデレでとても可愛かったです」


 優衣がそう答えたので。


「ああ、あの子か、確かに可愛いよな、それに今の時代だとああいう純粋なツンデレキャラも大分見なくなって来たから、そういう意味でも貴重だしな」


 大和がそう言うと。


「大和くんの好きなキャラもあの子なんですか?」


 優衣がそんな事を聞いて来たので。


「いや、俺の好きなキャラは主人公の後輩キャラだな」


 大和がそう答えると。


「後輩ですか? えっと、そんな人居ましたっけ?」


 優衣がそう聞いて来たので。


「ほら、あれだよ、最初の頃主人公の家によく料理を作りに来てくれていた」


 大和がそう答えると。


「……ああ、あの子ですか、すみません、今日観ていた範囲だと出番が殆ど無かったので、記憶から抜けていました」


 優衣はそう言ったので。


「まあ、仕方ないな、このアニメは割と登場キャラは多いし、一度観ただけで全てのキャラを把握するのは大変だからな」


 大和がそう言うと。


「そうですね、でも、大和くんはどうして後輩ちゃんが好きなんですか? 失礼かもしれませんが、このアニメを観ただけだと後輩ちゃんの出番は少なくて、正直私には魅力がよく分からなかったのですが」


 優衣が少し言い辛そうにそう答えたので。


「確かにアニメ内だと出番は少なかったな、でも、これとは別ルートの話しの劇場版だとその後輩キャラがメインヒロインで、本当はどんな人なのかよく知れるんだ」


 大和がそう答えると。


「えっ、劇場版もあるんですか、それなら是非、大和くんと一緒に観たいです!!」


 優衣は体を前に乗り出してそう言ったので。


「凄い食いつきだな、そんなにハマったのか?」


 大和がそう聞くと。


「ええ、正直、思っていたよりもずっとこのアニメにハマってしまいましたし、劇場版があるのなら直ぐにでも観たいくらいです!!」


 少優衣はそう言ったので。


「そうか、そんなにハマってくれたんなら勧めた甲斐があるな、ただ、今日は13話分一気にアニメを観たから眼が疲れているだろうし、明日は1日買い物に出かけるから、観るとしてもまた今度な」


 大和がそう答えると。


「それもそうですね、それなら劇場版はまた今度の楽しみにしておきます」


 そう言って、優衣は一度言葉を切ってから。


「ところで大和くん、この後は何をして過ごしますか?」


 優衣はそう聞いて来たので、大和はパソコンで時間を確認すると16時になる少し前だったので。


「夕食の準備を始めるには少し早いし、暫くはこの部屋でのんびり過ごすか」


 大和がそう言うと。


「それもそうですね、それなら私ものんびりさせて貰います」


 優衣はそう言うと、彼女は大和の膝元に頭から倒れて来て、そのまま大和に膝枕をされたので。


「何だ? また耳かきをして欲しいのか?」


 大和がそう聞くと。


「もう、違いますよ、私にとってはこの体勢が一番のんびりできて凄く癒されるんです、でも、大和くんが嫌なら辞めますよ」


 優衣はそう言ったので。


「いや、お前がそう思うんなら別に良いぞ」


 大和はそう言って、優衣の頭を優しく撫でると。


「ふふっ、ありがとうございます、大和くん」


 優衣はそう言って、暫くの間大人しく大和に頭を撫でられていたのだが。


「……ふあっ」


 優衣が可愛らしく欠伸をしたので。


「寝むたいのなら寝て良いぞ、夕食の準備をする時間になったら起こしてやるから」


 大和がそう言うと。


「……そうですか、分かりました、ありがとうございます、大和くん」


 そう言うと優衣はゆっくりと目を瞑り、大和に頭を撫でられ続けていたが。


「……すう、すう」


 その後、直ぐに優衣は穏やかな表情を浮かべて静かに寝息をたて始めて、彼女が寝たのを確認した大和は、


「本当に優衣は昔から可愛いな……これで優衣が恋人になってくれたら今以上に幸せなんだろうけど、それはさすがに高望みし過ぎだよな」


 初恋の人の寝顔を眺めながら大和は静かにそう呟いた。

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