第9話 休日デート1日目

 その後は特に何事もなく平穏な高校生活を終えて迎えた土曜日の朝。


 大和がゆっくりと目を開けると。


「あっ、おはようございます、大和くん」


 笑顔を浮かべて優衣がそう挨拶をして来たので。


「……おはよう、優衣」


 そう挨拶をしてから、大和は一瞬黙った後。


「なあ、優衣」


「何ですか? 大和くん」


「今日も相変わらず可愛いな」


 優衣の照れた姿をもう一度見てみたいと思った大和は、優衣に向けてそう言ったのだが。


「ふふ、ありがとうございます、大和くん」


 優衣は何事も無いようにそう言ったので、流石に同じ手が2度も通じるほど甘くないなと大和がそう思っていると。


「あの、大和くん」


「ん? 何だ」


 優衣に名前を呼ばれたので大和がそう答えると、彼女は頬を少し赤く染めてから。


「その、寝ている大和くんの顔は昔の無邪気だった頃の大和くんみたいで、何と言いますかその、凄く可愛かったですよ」


「っつ!?」


 好きな人から唐突にそんな事を言われて、大和が内心かなり動揺していると。


「ふふ、仕返し成功です!!」


 嬉しそうに微笑みながら優衣がそんな事を言ったので。


「優衣、お前なあ」


 少し呆れた表情を浮かべながら大和がそう言うと。


「ふふっ、すみません大和くん、でも、寝ている大和くんの顔が凄く可愛かったのは本当ですよ」


 優衣は再びそう言ったので。


「悪かったって優衣、俺の負けで良いからこれ以上からかうのは止めてくれ」


 優衣から顔を逸らしながら大和がそう言うと。


「そうですか、分かりました、今の大和くんの反応はとても可愛いのでもう少しだけ可愛いって言って上げたかったのですが、あまりやり過ぎて大和くんに嫌われるのは嫌なので今日はこれくらいにしておきます」


「ああ、そうしてくれ」


 大和がそう答えると。


「分かりました、それでは大和くん、今から朝ご飯の準備をするので着替えたら降りて来て下さい」


 優衣がそう言ったので。


「ああっ、分かったよ」


 大和がそう答えると、優衣は大和に背を向けて部屋を出ようとしたのだが。


「あっ、そういえば大和くん」


「どうした?」


 大和がそう聞くと、優衣は大和の方に振り返り。


「お父さんの許可が貰えたので、今日はこの家に一晩泊まらせて貰いますね」


「……え?」


 そう言うと、優衣は大和の部屋を出て行ったのだが、その姿を見送った大和は、


「軽い冗談のつもりだったのにマジか……俺の理性持つかな」


 かなり弱気な口調でそう呟いたのだった。

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