第6話 優衣のお願い
そして、優衣の言葉を聞いた大和は、
「……仕方ないな、いいぞ」
優衣から顔を逸らしてそう答えると。
’「ふふっ、ありがとうございます」
優衣はそう言うと、そのままゆっくりと大和の膝元へ頭から倒れて来て、そのまま大和に膝枕をされた。そして、
「それではよろしくお願いします、大和くん」
いつの間にか優衣は手に持っていた耳かきを大和に手渡して来たので。
「準備が良いな」
大和がそう言うと。
「今日は大和くんに耳かきをして貰うって決めていましたから」
嬉しそうに微笑みながら優衣はそう言ったので。
「そうか、それなら優衣にはちゃんと気持ちよくなって今日は帰ってもらうから、覚悟してもらうぞ」
大和がそう答えると。
「ええ、是非そうして下さい」
優衣はそう言ったので、大和はゆっくりと耳かきを優衣の耳に近づけて、そのまま丁寧に耳かきを始めて、優衣は気持ちよさそうに大和に耳かきをされていたのだが。
「……ん!!」
「……」
「……ひゃっ」
「……」
大和の耳かきが余程気持ちいいのか、優衣が時々変な声を出して、その度に大和の心が乱されていたのだが。
大切な優衣の体を傷つける訳にはいかないので、大和は平常心を維持して優衣の耳掃除を続けた。そして、
「ふう、終わったぞ」
優衣の両耳の耳かきを終えて、大和がそう言うと。
「とても気持ち良かったです、ありがとうございます、大和くん」
優衣はそう言ったのだが、大和に膝枕をされた状態から動こうとしなかったので。
「どうした? 動かないのか?」
大和がそう聞くと。
「実はもう迎えの車を呼んでいるのですが、来るまで少し時間がかかりそうなのです、だからその、大和くんさえ良かったら迎えが来るまでの間、このままの格好で居させてもらえませんか?」
優衣は大和の目をしっかりと観ながらそんな事を言ったので。
「……仕方ないな」
優衣から目を逸らしてそう言って、大和は優衣の頭を優しく撫で始めて、優衣は満足そうに眼を細めた。
その後、大和は暫くの間、黙って優衣の頭を撫でていたのだが。
「優衣、今日は1日ありがとう、久しぶりにお前とゆったりした時間が過ごせて、何というかその……凄く癒されたよ」
優衣から顔を逸らしたまま、大和がそう言うと。
「私も大和くんと2人きりで過ごせて今日は凄く癒されましたよ……あの、大和くん」
「何だ?」
優衣の頭を撫でながら大和がそう聞き返すと。
「私は大和くんの事が好きです」
優衣が唐突にそんな事を言ったので。
「……おう、そうか」
一瞬間を開けて大和がそう返すと。
「ええ、そうです、それで大和くんは私の事が好きですか?」
優衣はそんな事を聞いて来たので、その言葉を聞いた大和は一瞬言葉を詰まらせたが。
「……そりゃあ好きに決まっているだろ、もう10年以上お前と一緒に過ごして来たんだから」
そんな風に言葉を返した。すると、
「ええ、そうですよね……あの、大和くん」
「ん、何だ?」
大和がそう言葉を返した後、優衣は何かを言おうとしていたが。
「ピロリン!!」
そんな音が鳴ると、優衣は自分のポケットからスマホを取り出すと、少し操作をしてから。
「迎えの車が来たみたいです、名残り惜しいですが今日はここまでにいしておきます」
「そうか、分かったよ」
優衣がそう言ったので、大和は優衣の頭から手を退かすと、彼女はゆっくりと大和の膝から起き上がった。そして、
「それでは大和くん、また明日学校でお会いしましょう」
優衣はそう言ったので。
「ああ、また明日、一応玄関まで送ろうか?」
大和はそう言ったが。
「いえ、大丈夫です、それではまた……あっ、それと何度も言いますが、コンビニ弁当ばかりで無く偶には自炊をして下さいね」
「……善処はするよ」
最後にそんな言葉を交わして優衣はリビングを後にした。
これが優衣と大和の今の関係、2人は10年代の幼馴染でお互いに相手の事が幼馴染としても、そして異性としても大好きないわゆる両思いなのだが。
幼馴染として共に過ごして来た時間が長すぎて、相手が自分に向けてくれている好意が幼馴染としての好意か、それとも異性としての好意なのか分からなくなっていて。
お互いに相手と付き合いたいと思っていても、もし振られて今の関係が壊れるかもしれないと思うと、それが怖くて。
2人とも最後の一歩が踏み出せないでいた。
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