第三話/魔剣
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ある程度の周期で決まったルートを通っていく
そのほとんどは微塵も食指が動くことがないが、時折現れる個体はその尻尾側に己が最も好んでる
それを見れば唾液が滴り始め、欲さずにはいられない。
そんな本能で、
だが、そんな列車に限って、否、だからこそか。輸送の
無論、そのだいたいが普通の兵士であり雑兵同然であるが、そういった抵抗によって気が付けば列車を取り逃してしまう、なんて経験を
理由?
そんなものは単純だ。
奪い取って手に入れた獲物を味わう、その時得る事が出来るのは腹を満たす充足感、それに加えて腹とは別のモノが満ち満ちていくから。
そんな、
もう一度ソレを味わいたいから、シンプルな理由がそこにはあった。
だから、今回もそうだ。
求めて求めるが故に、
そうして出てきたのは一人。しかも今まで見たような鉄の鱗で覆ったような人間ではない。異様な雰囲気を察知はしたが、たった一人なら容易いと少しばかりの期待外れに嘆きながらも襲った。
だが、そんな自分を裏切って、自分に傷をつけた。
今まで見た事のないソレを打ち負かして得られる獲物はいったいどれほど甘露なのだろうか。
そう、思っていたはずだった。
「《
列車の音、風が吹く音、
どれも喧しいモノばかりだった。
だが、そのどれよりもこの一言だけが静かに響いていた。
瞬間、訪れたのは少女の甲高い悲鳴、否、断末魔。
ユーリではない、
哭き叫んでいるのは、カレトヴルッフ。
溢れ零れていた翡翠の粒子が、黒く染まり紫の雷となって弾けていく。それはカレトヴルッフが励起してから起きていたそれらとは比べるべくもないほどに広く、大きく、強くなっていた。
そんな黒い紫電で築かれた檻の中でユーリは自分目掛けて一直線に突っ込んでくる
もはや隠す気すらない罠、普通に考えれば避ける、それはクリーチャーであっても変わらない。溜め込む
本能が喧しくかき鳴らす警鐘に従って、クリーチャーであろうともわざわざ突っ込むわけもない。
───キェィアアアアアッ!!!
避けない。
避ける必要はない。
罠ごと打ち砕いて勝利する。
全ては勝利の甘露に酔う為に。
本能をそれ以上の執着で飛び越えて
そう、ユーリの立つ車両の両端、屋根に取り付けられた開閉部より弩弓を構えている兵士の姿が両の眼で捉えていたとしてもこの速度であれば当たる筈もないのを知っているから。
「撃てッ!」
フィオナの指示が飛ぶ。
残り距離にして五メートル。
それが尾羽の先に触れるかも分からない時にはユーリの身体を
───ギィェアッ!?
絶叫。
それはユーリの口からではなく、
青銅の羽毛で覆われた胴体を二方向から串刺す二つの矢尻。ワイヤーが取り付けられたそれは差し詰め拘束用のモノだろう。
一撃目の時にカレトヴルッフで胴を切り裂かれたのと比べれば大した痛みでもないが、それでも当たる筈がないと信じていたソレは
動こうとした。
どういう事だろうか、先ほどまで常人では捉える事すらできない俊敏に動くはずの身体は文字通りこの場に釘付けにされたかのように鈍重となって動かない。
───ギィイイイッ!?
いままで起きた事のない事態に
自分であれば鉄の蛇の身体はともかく、この
この棘が原因なのか?
違う。そもそも、どうしてこの棘が刺さったのか!
そんな疑問ばかりが出てくる。
「正直に言えば、一回目で充分だった」
そんな困惑する
「お前の体内に、カレトヴルッフの
黒い紫電が弾ける。
それはいつの間にか、ユーリとカレトヴルッフだけでなく、
「お前は青銅だからな。正直、カレトヴルッフと相性が悪かった。だから、仕込みをさせてもらった。斥力と引力が……って、言っても分からないか」
そう自嘲する様に笑うユーリは、いつの間にかカレトヴルッフから片手を離しており自由になった方の掌を
動けなくなっていた
自分の身体が自分のモノでなくなった様なその状況に
だが、動かない。
「今、お前の体内に潜り込んだカレトヴルッフの
そんなユーリの言葉を引き金にでもするかのように、
まるで肉体の内側で黒い紫電が暴れまわっているかの様に傷口以外の部分から弾け出てはついでと言わんばかりに
「撃退、と言ったが……お前みたいな手合いは変に執着してくるからな」
ここで仕留めておく。
何でもないかの様に言いながら、その掌が
血が滲み出ている羽毛の下の地肌に触れながらまるで触診でもする様に掌で胴体を探っていく。
「『晶器』を無くしてもクリーチャーはすぐに死にはしない。勿論、
探るのは一際強く反応している部位。
「お前の中の
見つけた。
掌越し、青銅の羽毛が禿げた肉越しに、ユーリは目的の内臓を捉えた。
晶器に溜め込まれている
苦悶の絶叫が響く。
だが、どれだけ焼き焦がしても
焼き殺すには火力が足りない。どれだけ、目に見えて派手であっても、カレトヴルッフの起こす特異現象は、この黒い紫電ではないから。
故に、最後の一撃はそれ以外にない。
「焼け切った。なら、さようなら」
動けなくなっている
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