三の下 奸臣どもの策謀
趙高と
「今、
もし
そんなことになったら、どうして身の安全を守ることができるでしょう?
ですから、ひそかに
この考え、我が君は、いかが
「兄を廃嫡して弟を立てるのは、人倫を乱す行為だ。
父の
他人の位を奪って害を与えるのは不仁だ。
この三つのことは、道理に逆らい、法律に違反している。
おそらく天下は僕に服従しないだろう。僕はお前の意見には従えない」
趙高が言う。
「いえいえいえいえ! そんなことはございません。
小さな節度を守って大きな仕事に失敗し、ほんのちょっとの正義を気にして遠大な計画を滞らせる。こういうのを『
絶好の機会を逃してはなりません。王権を他人に貸し与えてはいけません。
我が君、早く御心をお決めなさい。後で
「
流されるまま、そう命じてしまった。
趙高は大いに喜んだ。
すぐさま
『
という内容を公表した。
そして
まだ始皇帝が生きているものと思い込んだまま、車の前に拝伏して
*
上郡では――
『始皇帝の三十七年、七月十三日。
始皇帝、
父は
これに違反するのは、
我が長子
わざわざ文書を上奏して大いに誹謗中傷し、狂った反逆行為をほしいままにした。
父子の情のうえでは憐れむべきことのようではあるが、先祖から続く法においては許しがたい。
毒薬酒と短刀を
また、
ゆえにこれも
しかし、万里の長城を築く工事がまだ完成していないから、しばらく保留にして工事を監督させる。
以上、ここに
「私は常にまっすぐ
「お待ちください。始皇帝陛下は、長い間この私に大軍30万を授けてこの土地を守らせ、殿下を軍の監督になさいました。これは天下の重大任務であります。
それなのに今、理由もなく死を
おそらくは
陛下と直接ご対面になって、事実か嘘かをよくお聞きになり、その後でお死にになっても遅くはありません」
「父の
もし
そして毒酒を一気に飲んで、死んでしまった。
そして彼の配下にあった三軍もまた、ことごとく涙を流したのだった。
*
そして始皇帝の車を守護して、
ここで初めて
その九月。
始皇帝を
二世皇帝を
天下の法律を厳しくし、百姓に残忍な暴力を振るい、大臣や公子に対してすらもみだりに
四海(世界)は彼らを怨み、反逆の軍勢が競うようにあちこちで立ち上がりはじめた……
*
あるとき、二世皇帝は群臣に向かって言った。
「
彼の兄弟一族が都の内にあるが、それと呼応して内外から乱を起こすかもしれない。ことごとく殺そう」
「お待ちください!」
一人の若者が声をあげた。
彼の名は
趙高たちの
「
今、理由なくこれを捨てて新しい人を用いれば、群臣は心服しなくなり、士卒の心も離れてそむくでしょう」
しかし、二世皇帝はこれを聞き入れなかった。
「
九族、とは……
本人を中心として、上に四族(父、祖父、曾祖父、高祖父)……
下に四族(子、孫、曾孫、玄孫)……
さらに、その同世代の親族まで含めたものを言う。
つまり二世皇帝は、徹底的な一族皆殺しを命じたのである。
これを
他に比べるもののない、極めて残虐、苛烈な刑である。
*
上郡にいた
「私は功を
それなのに義を守って軽々しい行いをしないのは、先人の教えを辱めないためだ! 先王の恩を忘れていないからだ!」
そう絶叫するや、
*
これを聞いて、さすがの二世皇帝も、九族皆殺しだけは思いとどまった。
しかし、
そこで、はるか西の辺境、
(つづく)
■次回予告■
暴政。圧制。不正の犠牲。日に日につのる民の怨みへ、ついに火が付く時がきた。燃えたつ反乱、蜂起する賊。混沌の
学もなければ金もない。ちゃらんぽらんの飲んだくれ。そんな男がなりゆきで反乱軍の
次回「龍虎戦記」第四回
『劉邦おじさん、なんか、立つ』
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