第4話
佐藤の話によると、裏世界には決まり事が幾つかあるらしい。裏世界の事を認知すると現世には戻すことができない(例外あり)。血縁関係者は誘い込めないが現世にいた時の記憶が無くなりさえすれば誘い込むことが可能。他にもあるが、今回はこの二つの決まりに反してしまう可能性がある為、高橋の裏世界行きは真琴次第だったというわけだ。
「それで今回、奴が記憶を取り戻す可能性を全て潰して高橋を迎えに来たはずなんだが…なぜか
それを聞いた高橋は盛大にお茶を吹き出しむせた。佐藤は大丈夫か?と心配しながら高橋の方に掌を向けると、青い光の玉がゆっくりと汚れた場所に近づき付着、少し光が強くなり光の玉が無くなったのと一緒に汚れも綺麗に消えていた。
(すみません…ありがとうございます、魔法使えるんですね…)
「魔法の一種なのかな…俺らは術として師から学んだからわからないけど現世でいうなら魔法に近いのかもな」
現世の人には見えていないんだけど、仲の良い物怪が手伝ってくれてるんだよと伝えると、高橋の目が輝き、(裏世界に移り住めばその物怪さんにご対面できますか?)と佐藤に近づいた。
「
目を輝かせ続ける高橋に「話終わらんから戻すぞ〜」と言われ、本題の続きが始まった。
「この病の特徴は花が咲き、他の人に花を焼き捨ててもらわないと苦痛からは解放されないという点なんだが、高橋は前科ないから本来っこの病にかからなければいけない奴に譲渡することはできる」
(そんなことができるんですね…そしたら僕は犯罪を犯さない限りこの病気とは無縁になるんですね?)
「そうなんだけど、譲渡に応じなかった場合の方が確率が高いんだが、この病の特徴はもう一つあって、善良な者にかかってしまった場合は痛みは無くその花は綺麗に輝き、死後の旅立ちを良い方向へと導いてくれる」
まあ、高橋の場合はほぼ裏世界行き決まってるからその後の生活が安定するのと今後次第でいい出会いもあるかもなとお茶を飲みながら言った。しかし、花が咲く時に痛みは無いが意識が残っているという事。想像しただけでも首元が痒くなってきた。
(仮に現世で死んだとしても裏世界に行くってことですか?)
裏世界行きがほぼ確定しているということは、高橋が老衰で現世の人生を全うしても裏世界で第2の人生を歩むのだろうか…。
「いや、裏世界には生きたまま移住するんだよ、だから色々と手段はあるんだけど死んでしまったら別管轄」
管轄なんてあるんだ…なんてこと高橋が考えていると出入口の扉が開き田中が入ってきた。
「話進んでる?」
「多分全部話したと思うんだけど、今裏世界にはどうやって行くんかって話してた」
仕事が終わったのか先ほど着ていた白衣は脱ぎ、腕に掛けていた。
「了解、裏世界には本人が同意しないと移住ができないんだよね、裏世界に移住するには条件があるんだよ」
「まあ、その話はまた今度にしよ」
少し暗い表情を見せる田中を高橋に見せないように違う話をふる。
「それで、高橋は裏世界に移住出来るんだけど来る?結構楽しいしなんならこっちよりも楽しいと思うぞ?」
(もし仮に裏世界に行くことになって、この病はどうなるんですか?)
恐らく、行かない選択をしたところで一ヶ月後には死んでしまうし、痛みは無くても意識はあるし自分の死に様を体験するなんて嫌だ。もし裏世界に行く時にこの病を引き継いで行くのならどっちに転んでも良いことなんてない。
「高橋さんの実体を連れて行くと首月華が残ったままになるから一回裏世界に来てもらって、体のコピーをとって首月華がない状態の体を制作、本格的に移住する時に魂だけコピーに移すんだよ」
コピーとってから体の制作に時間が掛かっちゃうから今すぐにでも来て欲しいんだけど…と田中が言った。
(首月華を引き継がないのなら是非連れて行ってください)
正直まだ死にたくないし痛いのもごめんだ。それなら長生きしたい。
「じゃあ決まりだね、すぐにでも行こうか」
パンッと手を叩き良い笑顔で高橋に伝える田中。佐藤が立ち上がるのと同時にテーブルや高橋が座っている座椅子意外が音もなく消えたが、何事もなく高橋に手を差し出す。
「高橋、時間が惜しいから早く行こう」
(はい、行きましょう)
高橋は佐藤の手を取り立ち上がったが、手は離してくれなかった。
(なぜ手を繋いだままなんでしょうか…)
「これから行くところ、ちょっと逸れやすいから佐藤とそのまま手を繋いでいてくれますか?私が繋いでも良いんですが、高確率で佐藤と逸れてしまうので…」
あはは…と苦笑いする田中。高橋は初めての体験過ぎて脳内処理が追いついておらずされるがままついていこうと思った。
(…先生は繋がなくても良いんですね)
「ああ、田中は繋いでいても逸れるからもう知らん」
田中は佐藤の方を勢いよく向き何か言いたげだったが本当のことなのだろう、何も言い返さなかった。
「まあ、行きましょうか!裏世界からの迎えも丁度来ましたし早く行きましょう」
田中がそういうと出入口の扉が開き、白衣を着た二人の女性が顔を覗かせた。
「田中さん、佐藤さん!ゆっくり説明しすぎですよ!」
「後1日分の時間が過ぎてたら間に合わないよ〜、早く
そういうと直ぐに引っ込み姿が見えなくなった。
(あの方達は…?)
「これから行く研究施設の子達、本当に余裕ないから舌噛まないように口、開かないようにね」
田中がそういうと、走って扉の中に入って行った。光が眩し過ぎて思わず目を瞑った。
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