第13話 夢を見てもいいの?
だが、すぐに目が覚めた。
ナチュルが結界みたいなのを張ってくれていたからだ。
そのおかげで、私の身体に傷一つ付いていなかった。
「この力は……」
「妖精の守護陣です。これを発動した範囲内では体力や傷が回復するだけでなく、外からの衝撃にも耐えられます」
なんてファンタジーな護りなのだろう。
けど、そのおかげで、元気になった。
「あっ! でも、あまめちゃんは?!」
私は彼女が気になって煙の中を探した。
すると、煙の中からあまめが出てきた。
片腕にデビーマの羊の角が見えた。
どうやら抱きかかえているらしい。
「あまめちゃん!」
私が呼びかけると、あまめは片腕を上げた。
守護陣の中に入っていくと、あまめの身体に付いていた傷が癒えていった。
それと同時にデビーマが目を覚めた。
「うーん……ぬあっ?!」
デビーマはハッと顔を上げると、自分が捕らわれている事に気づいたのか、「離せ! 離せ!」と暴れた。
しかし、あまめの腕力が強いのか、全く抜け出す事ができなかった。
「諦めなさい」
あまめが睨むと、デビーマは「はぁ」と溜め息をついた。
「分かったよ。今日の所はこのくらいにしてやイダダダダ!!!」
デビーマが全く反省している様子が見えないからか、あまめが力を強めたのだろう、デビーマは苦しそうだった。
「もう二度とやらないと約束して」
「しない! しないから、早く離して!」
デビーマは解放するように訴えるが、あまめは疑うように睨んでいた。
きっと相当素行が悪いのだろう、暫くは離さなかった。
やがて、デビーマは半泣きになりながら「ごめんなさい。もうしない。本当にしないから離して」と訴えていた。
「いいわ」
あまめはボトッと彼女を落とすと、デビーマは颯爽と守護陣から出た。
「ハハハハハッ! じゃあな!」
デビーマは高らかに笑うと、ヒューンと空に消えていった。
「反省してないね」
「うん。絶対にしていないですね」
あまめとナチュルは空を見上げたままポツリと呟いた。
※
さて、ひと悶着が終わり、私達は寮に帰った。
食堂で晩御飯を済ませた後、消灯までの時間の間、部屋でゆっくり過ごすことにした。
「あの……色々とごめんなさい」
二人の前で正座して頭を下げた。
「私のせいでご迷惑をかけて……」
「全然気にしてないよ! だって、悪いのはアイツだもん!」
「そうですよ。モブ子さんは全然気にしないでください」
二人にそう宥められるが、私の心はまだ晴れていなかった。
「私……二人の踊りを見て嫉妬……いや、劣等感を抱いたの。私なんかアイドルになれないと思ったの。みんな踊りや歌がうまいのに、私みたいなどこにでもいる子がアイドルになるなんて無謀だって思ったの」
「そんなことない」
あまめが真剣な眼差しで私を見ていた。
「大事なのはやり続ける事だよ。私も踊りがうまいのは小さい頃からずっとやってきたから……」
「あまめちゃん、私と初めて会ったときはヘンテコなダンスでしたね」
ナチュルが思い出したように噴き出した。
「もう! 恥ずかしい事を思い出さないで!」
あまめが顔を赤くしていた。
「確かこんな感じだったよね〜!」
ナチュルが当時のあまめの踊りを真似ているのを見て、私はつい笑ってしまった。
「良かった。元気になって」
あまめが嬉しそうに笑っていた。
それが伝染したのか、ナチュルも楽しそうに笑った。
「ありがとう。あまめちゃん。ナチュルさん」
私は二人の顔を見て、「これからよろしくお願いします!」と頭を下げた。
私の中で何かが変わったような……気がした。
明日へつづく
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