第11話 事件の黒幕

「……ナチュルさん?」


 私が声をかけたが、集中しているのか無反応だった。


(一体何をしているんだろう)


 首を傾げていると、どこからともなく小さな光の球が現れた。


 それはナチュルの顔付近をブンブン飛んでいた。


 蛍ではないのは間違いない。


「……そう。ありがとう」


 ナチュルはゆっくりと目を開けると、光の球達はたんぽぽの綿毛みたいにフワフワと飛んでいった。


「今のは?」

「妖精よ。彼らにあまめちゃんの居場所を聞いていたの」


 よ、妖精?!


 そんなメルヘンなものが現実に――いや、ナチュルだったらそういうのを生み出すのはあり得るかもしれない。


「さぁ、行きましょう! あまめちゃんはこっちです!」


 ナチュルは私の腕を引いて走った。



 まるで飛んでいるかのように移動し、辿りついた。


 体育館の裏だった。


 そこにはあまめと見知らぬ子がいた。


 女の子だったが、頭に羊みたいな角とサキュバスみたいな尻尾を生やしていた。


「あまめちゃん!」


 私達は彼女の元へ駆け寄った。


 あまめは気づくと「来ちゃだめ!」と睨むように制してきた。


「あ、あなたは……デビーマ!」


 ナチュルは彼女の事を知っているようで、険しい顔をしていた。


「おやおや、誰かと思えばナチュルじゃないか。随分成長したね……特に胸が」


 デビーマと名乗る子はセンシティブな発言をしていた。


 デリケートな部分に触れたナチュルは気にしているのか、上半身を腕で隠していた。


「あ……あなたの仕業なんですか? モブ子ちゃんを突き落とそうとしたのは」

「あぁ、そうだよ」


 デビーマは口が裂けると思うくらい笑みを浮かべた。


「それだけじゃない。松阪副会長を飛び降ろさせたのもあなたなんでしょ?」

「え?」


 私は思わず声に出してしまった。


 デビーマは「うん。そうだよ」と軽い口調で言った。


「デビーマさん、なぜそんな酷いことを……昔のあなたは人を殺めるようなことはしない……」

「……お前らさぁ、一体いくつの話をしているわけ?」


 デビーマは飽きれたような溜め息をついた。


「お前らが幼稚園の時だぞ。私もそうだったけど……それから十年以上も経っているんだから色々と変わるでしょ。まぁ、お前らは見た感じ、性格は全く変わっていないみたいだけどな。

 悪はグレードアップするんだよ。大昔はガキのイタズラみたいな事をしたが、今はちゃんとした悪になれたような……さらに上位の悪になったんだ!」


 デビーマは声高らかに笑っていた。


 ナチュルは「そんな……あの時、もう悪さはしないと約束したのは嘘だったんですね」と半泣きの顔をしていた。


「はぁ? お前、あんな子供の口約束なんて一週間ぐらいで有効期限切れるだろ。まぁ、私は三日後に悪事を働いていたけどな」


 デビーマはシシシとニヤついた。



明日へつづく

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