第5話 あなたって何者?

 まぁ、気を取り直してご飯を食べよう。


 私とあまめは向かい合う形で座った。あまめはラーメン、私は中華そばを食べた。


 チュルチュルと啜りながらふと思った。


(怪人ってなんだ)


 予想外の事が多すぎて流してしまったけど、怪人が出たよね。学校の食堂に。


 いや、それ以前に怪人なんてものがこの世に存在するんだ。


 あれって特撮とかアニメだけの世界だと……夢かな。


 でも、中華そばを食べる時に舌を火傷したから現実だ。


 私の人生で怪人なんてものに出会った事がないし、あまめが転校してきてからだよな。


「ねぇ、あまめちゃん」

「なに、モブ子ちゃん」

「あの怪人?……知ってるの?」

「知ってるというか、前に倒したことあるやつだから」


 前にって……以前は何をしていたんだ。


「あまめちゃんって、転校する前は何をしていたの?」

「あー……」


 あまめはメンマを持ったまま何かを考えるように静止した後、「中学校に通ってたよ」と当たり前の事を言った。


「いやいや、それは分かっているんだけどさ……何か変わった事していなかった? たとえば……怪物退治とか」

「うーん、そんなことしたようなしてないような……」


 はぐらかす彼女に私はある交渉を持ちかける事にした。


 声を潜めて「ねぇ」と声をかけた。


「もしあまめちゃんの秘密を教えてくれたら、友達の証あげるよ」

「本当?!」


 あまめは瞳を宝石みたいに輝かせていた。即興で思いついた事だから、『友達の証』なんてないけど、彼女の事を知りたいから嘘をついてしまった。


 あとで、適当なものを用意しておくか。


「うん、とびっきり大切なやつ……だから、教えて」

「分かった! けど、ここだと人が多いからあとでコッソリ話すね」


 あまめはそう言ってメンマをバクバク食べた。


 すると、校内放送が流れた。


『1-ニンジン組の山田モブ子さん、夢美あまめさん、学園長がお呼びです。至急学園長に来てください』


 嘘でしょ。まさか学園長に呼び出されるなんて。


「行こう。あまめちゃん」


 私はすぐに向かおうとしたが、割烹着を来た少女に腕を掴まれてしまった。


「……え?」

「全部食べて」


 少女は仏頂面ぶっちょうづらで中華そばの方を指差した後、壁の方にも向けた。


『食べ残し。厳禁』と書かれていた。


「でも、学園長に呼び出され……」

「アレルギー、体調不良などの事がない限り、食べ残しは禁止です」


 えぇ、そうだったの。そっか、普段は完食しているからあまり気にしてなかった。


「食べよう。モブ子ちゃん。せっかくの美味しいのが冷めちゃうよ」


 あまめは学園長に呼び出されるという重大さを実感していないのか、半熟の卵を美味しそうに食べていた。


「……じゃあ、急いで食べよう」


 私は再び席に座ると、急いで麺をすすった。


「召し上がれ!」


 割烹着の少女は笑顔でキッチンの方に戻っていった。



明日へつづく

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