第4話 食堂を占拠する怪人
副会長を保健室で寝かせると、私とあまめは教室に戻ることにした。
さっきとは違って、少し重たい空気が流れていた。
「さっきの人、知り合い?」
「う、うん……知り合いではないけど、ドキ
「なんで、あんなことしたんだろうね」
「うーん……何か思い詰めていたのかな」
「ねぇ」
私が顎を指で挟んで考えていると、あまめが声をかけた。
「なに?」
「さっき屋上に人影が見えなかった?」
「人影? 副会長じゃなくて?」
「いや、彼女が飛び降りた後に人らしき姿が見えたような……」
あまめが真剣な顔をしていたので、私はあの時の事を振り返った。
でも、思い出しても人らしきものはなかったし、それ以前に副会長に夢中でそれどころじゃなかった。
「いなかったような気がするけど……」
首を振ると、あまめは「そっか」と呟いた。
すると、チャイムが鳴った。
「ヤバッ! 早くしないと授業に遅れちゃう!」
「だね! 行こう!」
私はあまめと一緒に廊下を走った。
※
授業も難なく乗り越え、どうにか昼休みになった。
あまめはあらゆる女子からランチのお誘いが来ていたが、またしても私を選んできた。
「他の子は友達じゃないの?」
私は思わずそう聞いてしまったが、あまめはあっけらかんとした顔をして、「みんな友達だよ。今日はモブ子ちゃんと一緒にいたいの!」と真っ直ぐ見つめられてきた。
まぁ、いっか。
私はテクテクと食堂に向かうと、またしても人が集まっていた。
はぁ、今日は騒がしいな。
「なになに?」
私は爪先立ちで中を確認しようとしたが、全く見えなかった。
「ダハハハハハハ!!! こいつの命が惜しかったらさっさと寄越せ!!」
明らかにこの学園の人間ではない
まさか――強盗?
いや、食堂の強盗って何なんだ。
「ちょっと通して!」
すると、あまめが無理やり人混みの中を掻き分けていった。
私は付いていくか迷ったが、彼女といると何か不思議な事が起きそうなので、後を追うことにした。
掻き分けると、空っぽの食堂が広がっていた。
何百人以上も食事ができて、かつお昼どきなのに閑散としていた。
その原因は宙に浮かんでいる怪物だろう。
首が痛くなるほど高い天井の真ん中部分にゴツゴツした皮膚を持つ怪物が生徒を鷲掴んでいた。
人間を片手で掴めたりする事から、恐らく五メートルぐらいはあるだろう。
「ダハハハハハハ!!! こいつの命が欲しかったら、キッチンにあるカレーを全部もってこい!!!」
「か、カレー?」
てっきり莫大な金とかを要求するかと思ったけど……。
「その手を離しなさい! ボリバー怪人!」
あまめはその怪物を知っているらしく、ビシッと指差すと、ボリバーと呼ばれた怪人は地上にいる彼女を見た。
「な、なっ?! お前は……」
怪物は目を丸くした瞬間、胴体に風穴が空いた。
「あ、あびゃぁぁぁぁ……」
怪物が徐々に消えていき、生徒が落ちてきた。
そして、副会長同じくお姫様だっこで受け止めると、その生徒は顔を真っ赤にして走って行ってしまった。
「もう大丈夫だよーーー!!!」
あまめがそう叫ぶと、生徒や先生達がゾロゾロと中に入っていった。
(本当に何者なんだ。この人)
私はあまめの正体が気になった。
視線に気づいたのだろう、あまめは何を勘違いしたのか、ピースサインしていた。
明日へつづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます