第6話 学園長室までの道のりは遠い

 急いでランチを終えた私達は全速力で学園長室へ向かった。


 私の脚の遅さに耐えかねたのかどうかは知らないけど、途中お姫様抱っこしてもらった。

 

 周囲の視線が突き刺さる中、私はあまめが道を迷わないように口頭で学園長まで案内する事にした。


 とはいっても、食堂を真っ直ぐ突っ切った先にあるエレベーターに乗れば確実なんだけど。


 エレベーターには門番がいて、そこで合言葉を言わないといけない。


「合言葉は?」

「学園長、最高ー!」


 私はあまめに抱きかかえられたまま裏ルートから仕入れた合言葉を門番に言うと、彼は「どうぞ」と通してくれた。


 中に入ると、壁一面にボタンがあった。


「えっと……どこなの?」


 あまめが首を傾げた。


 私も入ったのは初めてなので、どれが正解か分からなかった。


 とりあえず適当に押してみた。


 チンッとドアが閉まり、上昇した。グングン上がっていくので、このまま辿り着けるかな――と思った。


 ガクンと急に横揺れしたかと思えば、グルグル回りだした。


「うええええええ?!」

「なになになに?!」


 早いメリーゴーランドみたいに回転しながら上昇していると、急に止まった。


 二人とも目が回ると、ドアが開いた。


 しかし、そこに広がっていたのは氷の大地だった。


 冷気が襲い掛かってきて、全身氷漬けになりそうだった。


「あ、あぶぶぶぶ……ば、ばやく他のところへ」


 私はボタンを押そうとしたが、身体が硬直してしまってうまく動けなかった。


 けど、あまめは涼しい顔をして違うボタンを押した。


 ドアが閉まり、再び上昇した。


「大丈夫? モブ子ちゃん」

「う、うん……あと一歩でマンモスみたいになるところだった」


 あまめに擦られながらどうにか身体を暖めてもらうと、またドアが開いた。


 今度は灼熱のマグマが流れていた。マグマがこっちに迫ってきていた。


「ヤバイよ! 早く早く!」

「う、うんっ!」


 私達はまたボタンを押して難を逃れた。


 それから私達は海、山、雲の上――と何故か大自然溢れる所に飛ばされてしまった。


「学園長室なんてないんじゃないの?」


 私はほぼ諦めモードでボタンをボゥと眺めていた。


「ん〜? 分かんないよ。もしかしたら次は当たるかも……ほっ!」


 あまめは壁の中央にあるボタンを押すと、今度は大暴れせずに静かに動いた。

 

 しばらくして、チンッと音がするとゆっくりとドアが開いた。


 学校の廊下だった。


「やったね、あまめちゃん!」

「イェイ☆」


 あまめは嬉しそうにピースサインした。


 テクテクと長い廊下を進んでいくと、学園長室と書かれた札がドアにぶら下がっていた。


 ドアをノックすると、返事よりも先にドアが開いた。


 ソフトクリーム頭の眼鏡の女性が物凄い形相ぎょうそうで睨んでいた。


 学園長の園園園ぞぞぞ那海音那海音だ。


「あなた達、遅いわよ」


 学園長はあっという間に私達を室内に入れると、予め用意された座布団の上に正座させられた。


 重々しい空気が流れる中、園園園ぞぞぞ学園長は席払いした。


 一体どんな説教を食らわされるのだろう。


「松阪副会長を助けてくれたんですって〜? ほーーんとありがとーーねーー!!」


 さっきまでの威厳ある雰囲気はどこへやら、ニコニコで副会長の救出を褒めまくっていた。



明日へつづく

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