第45話 ウィンナーを大量に買い込んで
ホットドッグ店を文化祭の模擬店でやる当クラスは、どうしてかウィンナーの発注が文化祭を過ぎてからになってしまう、ということに対して、それを担当していた女子グループに「どうして前もって準備をしていなかったんだ」と男子グループが叱責したら、「私たちに言わないでよ。運送会社の都合なんだから」と弁解する。
それを傍観していた志桜里は、名案を思い付き、それを実行するに至った。
その案とは、麗美と自分が都内の業務スーパーを梯子し、業務用ウィンナーを大量に買いまくるといったものだ。
「ねえ、私に良い案がある」
「は?」私をいじめていた女子グループからそんな声があがる。いやいや、前に親友とか言ってたやんけ。まあいいけど。
「私とそこにいる麗美ちゃんで業務スーパーに行ってくる。そこで大量に買いだめしてくるから」
「そんなことしてくれるの?」
「ええ。やってあげる」
じゃあお願いねえ。クラスの激化した口論は熱を冷ました。
✳✳✳
担任の許可をもらい、外出をしていた。麗美と一緒に。
だがしかし、麗美はどこか険を帯びていた。
「あんた、わざとでしょ」
「何がですか」
麗美は前を往く志桜里の腕を引っ張る。「待ちなさいよ」
「どうしたんですか」
「あんた、なに考えているの」
じっと見つめ合う時間が増える。そしたら彼女はふう、と息を吐き、告白を始めた。
「今ここで麗美ちゃんが動くことに意味がある。麗美ちゃんが今回の件でクラスメイトに恩を売れば、きっと居心地やクラスメイトの麗美ちゃんを見る目がきっと変わるはずですよ」
「そこまで考えて……」
麗美は泣きそうになった。やはりこの子は優しすぎる。他人のためにここまで出来る子はなかなかいない。それがどれほど凄く、尊いことなのか。
「分かった、一言あんたに告げてあげる」
「何です?」
「ありがとう」
そう言って泣き笑いの表情を浮かべた麗美。それに目を見開いて反応する志桜里。
「どう、いたし、まして」
風が吹いた。秋に彩られたそんな風は、だがしかし色無き風ともいう。
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