第41話 ビデオ通話

 7


「ただいま~」

「遅いよお」

 時刻を見ると夜中の一時を過ぎていた。

 力強く抱きしめてきた香帆。


「淋しかったよ」

「はいはい。甘えん坊さんですねえ」

「こらー。イチャイチャしないぞ」

 蛍が香帆と志桜里の頭をポンと叩いてくる。「いてっ」


「いてっ、じゃないわよ」

 足元を猫が通り過ぎていく。その猫は喉を鳴らした。


「さ、二人とももう遅いんだから寝なさい。明日も学校でしょ」

「そうだねえ。さあ、志桜里ちゃん。私にあなたの花弁を触らせて。ベッドに行こうか」

「その厭らしい文言で行くわけないでしょ。香帆ちゃんってそんなにキモかったっけ?」

「むぐう。酷い」

「唐突にギャルゲーのヒロインの真似しないの。もう、私は寝るからね」


 あくびを噛み殺して、自室へと向かった。


 ピコンと着信が鳴った。LINEの通知だ。

 誰だろうと思うと、ビデオ電話の許可申請だ。相手は麗美。

 ビデオ通話を許可すると、麗美の顔が映し出される。麗美は可愛いモフモフのパジャマを着ている。ギャップ萌えで愛おしさがくすぐられた。


「ごめんね。ずっと猫の名前を考えていて」

「そうなんですね」

「それでね。花、って名前はどうかな、って」

「花、ですか?」


 麗美が緊張を帯びた表情になった。


「どうかな」

「いいと思います」

 そう言いながら志桜里は百合の簪を触っていた。

「それ、寝るとき外さないの」

「ああ。外しますよ。でも今は別に眠っていたわけじゃないので」

「へえ。早く寝なさいよ」


 志桜里は苦笑した。

「おいおい、誰の連絡で……ってごめんなさい」

「ああ、こちらこそごめん。あいつらと仲がまだよかったころは、深夜四時ごろまで駄弁っていたから」

「それ、もう朝ですよ。朝四時ですよ!」

「そ、そう?」

「寝不足じゃなかったですか?」


「確かに、少し肌荒れはしていたかも……」

「ちゃんと夜は寝ましょう。じゃあおやすみ。愛しています」

「ええい、その別れの挨拶の言葉を残されたら逆に怖くって眠れないわ」


 志桜里は大笑いした。


「はいはい。おやすみなさい」

「うん。おやすみ」


 簪を外して。志桜里は眠りについた。

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